『FF16』吉田P、『ファイナルファンタジー』シリーズの“ナンバリング”は「撤廃した方が良いかもしれない」とスクエニ上層部と議論したことを明かす

『ファイナルファンタジーXVI』のプロデューサーを務める吉田直樹氏が海外メディアのインタビュー記事にて、“『ファイナルファンタジー』シリーズからナンバリングを撤廃する可能性”について回答。ファンからの注目を集めている。

海外メディアGQは5月22日、『ファイナルファンタジーXVI』のプロデューサーを務める吉田直樹氏とのインタビュー記事を公開。このなかで吉田氏は、“『ファイナルファンタジー』シリーズからナンバリングを撤廃する可能性”について回答し、ファンからの注目を集めている。

『ファイナルファンタジー』シリーズは、1987年にファミコン向けに発売された『ファイナルファンタジー』から続く長寿シリーズだ。ゲームジャンルを異にするスピンオフ作品を含め多数のタイトルがリリースされるなか、メインシリーズのナンバリングとしては今年発売される『ファイナルファンタジーXVI』にて「16」に至る。

今回のインタビューにて吉田氏は、『ファイナルファンタジー』シリーズは各作品それぞれが個性的なキャラクターの物語と設定を有しているため、これまで35年間もシリーズを継続することができたのだろうとコメント。仮に35年続くひとつの物語を描いていたら、アイデアが尽きてしまっていたかもしれないとも述べている。

そのうえで、同シリーズからナンバリングを完全に撤廃する可能性はあるのか問われた吉田氏は、まさにそのトピックについて、スクウェア・エニックスの上層部と議論したことがあると明かした。同氏は、そろそろタイトルからナンバリングを外した方が良いかもしれないと考えたのだという。その理由として吉田氏は、例として『ファイナルファンタジーXIV』(以下、FF14)の存在を挙げた。同作をプレイしようとしたシリーズ新規プレイヤーが、「待てよ、“16”が発売されているのに、なぜ“14”をプレイしなきゃならないんだろう」と混乱する可能性があるというのだ。

吉田氏いわく、タイトルにナンバリングが付いていると、漫画などのように「最初から体験しないと最新作の状況を理解できないのではないか」と考える人がいるそうだ。ただ先に触れたように、『ファイナルファンタジー』シリーズでは基本的に各作品の物語は独立している。特に『FF14』はMMORPGとして展開されており、どのタイミングでプレイし始めても問題ない。吉田氏は、『FF14』は『ファイナルファンタジー オンライン』というタイトルにすれば、より分かりやすいだろうと提案している。

ナンバリングの存在によって、無用な混乱をプレイヤーに与えてしまっている、というのが吉田氏の考えのようだ。また同氏は、新作のマーケティングをおこなう際にも、「ほかのシリーズ作品をプレイしなくても大丈夫ですよ」と周知させなくてはならず大変であるとコメントしている。

『ファイナルファンタジーXIV』


今回の吉田氏の発言は海外ゲーマーのあいだで注目を集め、海外フォーラムResetEraでは『ファイナルファンタジー』シリーズのナンバリングについてアンケートが実施。現時点で約1100票が投じられ、その内の13.5%がナンバリング撤廃に賛成、46.9%が反対、そして39.6%が『FF14』のようなMMO作品の「オンライン」ブランドへの変更だけを支持した。合わせて9割弱の投票者が、同シリーズのナンバリング維持を希望した格好だ。

ちなみに他社のシリーズ作品では、タイトル付けにさまざまな工夫がなされるケースがみられる。ナンバリングが撤廃された作品としては、たとえばアクションアドベンチャーゲーム『トゥームレイダー』シリーズは、5作目を最後にナンバリングを廃止し、以降はサブタイトルにて作品を区別するようになった。今回のインタビューでは、『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズも同様の例として紹介されている。

一方、サブタイトルにて展開されてきた剣戟対戦格闘ゲーム『サムライスピリッツ』シリーズは、最新作では『SAMURAI SPIRITS』へとシンプル化。プロデューサーの小田泰之氏によると、「サブタイトルを付けてシリーズ作感を出すと、新規プレイヤーが入りにくいことを懸念した」のだという(ファミ通)。ナンバリングでなくても、それはそれで混乱が生じることがあるようだ。また最近では、『Battlefield 1』や『Mortal Kombat 1』のように、テーマや物語の原点を描くことを示すために、ナンバリングが「1」へと逆戻りする作品もみられる。

*The Washington Post紙のゲーム担当記者Gene Park氏は、AAAタイトルではナンバリングを付けない傾向にあるなか、『ファイナルファンタジー』シリーズはNFLの優勝決定戦スーパーボウルの如く続けていると指摘し反響を呼んだ。今年開催された第57回大会は「Super Bowl LVII」である。

なお『ファイナルファンタジー』シリーズのナンバリング撤廃について、現時点ではスクウェア・エニックス社内にて議論されたことがあるというのみで、撤廃が決定されたというわけではない。インタビューにて吉田氏は、今後も『ファイナルファンタジー17』や『ファイナルファンタジー18』といったように数字を付けるのかどうかは、それらの作品の開発スタッフやブランディング担当者に突きつけられた問題であるとし、自身が考えるべき問題ではないとコメントした。

『ファイナルファンタジーXVI』は、PS5向けに6月22日発売予定だ。

【UPDATE 2023/6/2 11:19】

吉田直樹氏は5月31日、メディアアーティスト落合陽一氏のWeb番組に出演。先日の海外メディアとのインタビューにて、『ファイナルファンタジー』シリーズのナンバリング撤廃に言及したことについて真意を語った(上の動画12分18秒辺りから)。

吉田氏はまず、インタビューでは「ナンバリングを外すような議論をしたことがありますか?」と聞かれたため、「したことはありますよ」と返答したところ、「なんか、吉田が外そうと言ってる」といったかたちで拡散されてしまったとコメント。「そういう話じゃないんだよなあ」とし、自身の意図とは異なるかたちで話が世間に伝わってしまったとの感想を述べた。

同氏によるとスクウェア・エニックスでは、他社シリーズ作の動向も踏まえながら、ナンバリングについて議論をしたとのこと。そして最終的に、「(『ファイナルファンタジー』シリーズは派生タイトルが多いため)ナンバーを取ったら取ったで派生タイトルに見えちゃうから、それはそれで難しいよね」「ファンの方はナンバーにすごくプライドをもってくださっている方が多いので、そんなに簡単に外せるもんじゃないよね」という結論に至ったという。インタビュー収録時にもこうしたことを伝えたものの割愛されて公開されたことから、吉田氏がナンバリング撤廃に前向きかのように誤解されてしまったそうだ。

そして吉田氏は、「新たな人たちに手に取ってもらう努力をやめてしまうと、もう収縮・収斂するだけになってしまう」「どうやって新しい人たちに来てもらって、今までのファンの皆さんと一緒に盛り上がってもらえるかというのは、めちゃくちゃ大事」であるとコメント。『ファイナルファンタジー』シリーズのメインタイトルのナンバリングは維持しながら、新規ユーザーの取り込みに力を注いでいることを語った。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

記事本文: 6874