UE5やChatGPTなどを用いて「現実世界を再現したオープンワールド」を飛び回れる作品が制作される。3Dマップタイルを活用しわずか1週間で完成

テクニカルアーティストのNils Bakker氏は5月19日、Unreal Engine 5やChatGPTなどを用い、現実世界が精巧に再現されたオープンワールドを旅することができる作品を制作したとし、その映像を公開した。

広告制作会社に勤め、フリーランスとしても活動する3D・テクニカルアーティストのNils Bakker氏は5月19日、Unreal Engine 5(以下、UE5)やChatGPTなどを用い、現実世界が精巧に再現されたオープンワールドを旅することができる作品を制作したとし、その映像を公開した。海外メディア80 levelが報じている。

公開された映像では、プレイヤーは紙飛行機となって空を飛びながら、世界中のさまざまな土地を訪れている。ニューヨークのような大都市から、グランドキャニオンなど大自然が広がる地域まで、さまざまな土地が登場。そして、ひとつひとつの建物や木々、地形などはすべて3Dにて表現されている。一部テクスチャが粗かったり、読み込みが追いついていないシーンもあるが、現実世界をそのまま再現しているであろうことがうかがえ、延々と広がる世界を自由に飛びまわれるようだ。

また、画面上に表示されたポストカードに目的地を入力すると、その場所へとワープする。具体的な地名を入力する以外にも、「オランダの首都」と入力すればアムステルダムに、「欧州最高のサッカークラブ」ならバルセロナに、「フランスでもっとも美しい街」ではトゥールーズへと案内されている。ワープした先では、その土地の概要が紹介。たとえばドイツのノイシュヴァンシュタイン城を訪れると、ディズニーランドのシンデレラ城のモデルになったという解説を読むことができる。

 


この作品の中核となった技術のひとつは、3D地図プラットフォーム企業CesiumがGoogle Maps Platformと提携して公開している「Photorealistic 3D Tiles」である。現在、全世界49か国にある2500以上の都市のデータが試験的に提供されており、ユーザーは3Dのマップタイルとしてデータを取得し、Unreal EngineやUnityなどのツールと連携して利用できる。

本作の開発にはUE5のブループリント機能が使用され、対話型AIであるChatGPTのAPIを統合。ChatGPTを通じては、ユーザーが入力したプロンプトをもとに導き出した目的地について「座標・都市名・国名・その土地の概要」の4つに分けた回答を取得。そして、座標をもとにGoogle Maps APIを通じて位置情報を取得し、同時にGoogle Map Tiles APIを通じて3Dマップタイルも取得して、目的の土地がロードされる仕組みとのこと。また都市名などは、テキストを3Dオブジェクトに変換しマップ上空に配置される。

ワープした直後には、目的地の真上ではなく、あえて少し離れた場所にプレイヤーをスポーンさせ、目的地を広く眺められるようにしたのはこだわりポイントだそうだ。またSF風のワープシーンの導入は、別の土地への移行プロセスをプレイヤーから隠す意図もあり、UE5のNiagara VFXシステムで作成したとのことである。

実は、先述した「Photorealistic 3D Tiles」は今年5月11日に提供開始されたばかり。本作を制作したNils Bakker氏は、それからわずか1週間という締め切りを自らに課し、この作品を作り上げたという。当初は、別のAPIも導入して目的地の時間や天候のデータをリアルタイムに取得し反映させることも計画していたが、その実装は間に合わなかったそうだ。

Bakker氏は今回手がけた作品について、UE5がもつ計り知れないパワーを引き出すことができ、また3Dマップタイルを取得できるGoogle Map Tiles APIやChatGPTといったツールを統合することで生まれる、無限の可能性を実証できたと振り返っている。今後のプロジェクトでも、これらのツールを活用していきたいとのこと。なお、この作品の配布などはおこなわれていない。技術的な解説は同氏のブログを参照してほしい。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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