コミュニケーションサービス「Discord」を運営するDiscord社は現地時間5月3日、ユーザー名の仕様変更について発表した。現在のユーザー名に付随される識別タグ(4ケタの数字)が今後削除されるなど、さまざまな変更が予定されている。
今回の仕様変更後、Discordユーザーの名前は「表示名(display name)」と「ユーザー名(username)」に細分化される。「表示名」は他人から見た自分の名前となる。使用できる文字の制限が少なく、特殊文字や絵文字、記号なども使用できるとのこと。変更制限はなく、1分ごとに違う表示名に変更することもできるそうだ。
「ユーザー名」については識別タグが削除され、使用可能な文字は小文字・英数字、記号はアンダースコアとピリオドのみとなる。ユーザー名は最低2文字、最大32文字まで使用可能で、ピリオドを連続して使用することは出来ない。こちらは変更制限があり、1時間ごとに最大2回まで変更できるとのこと。
識別タグの削除に伴い、他人が使用中のユーザー名とまったく同じ名前は使用できなくなる。そのため、Discordアカウントの登録期間が長いほど優先して新たなユーザー名を設定できるように案内がおこなわれるそうだ。なお新仕様の実装後、ユーザー名の変更はしばらく任意選択式になる。新仕様への移行は数ヶ月にかけておこなわれる予定で、最終的にすべてのユーザーに新仕様が適用されることになるそうだ。また、新仕様でのユーザー名は先述のとおり“早い者勝ち”なので、公式発表では可能になった時点でユーザー名を変更するよう推奨されている。
この仕様変更については公式発表のほか、DiscordのCTO(Chief Technical Officer)兼共同創業者Stanislav Vishnevskiy氏が解説している。同氏によれば、Discordの開発において最優先したのは従来のユーザー名の仕様だったそうだ。同氏は「この名前はすでに使われています」の画面をDiscordユーザーに遭遇してほしくなかったから、識別タグが実装されたと述べている。識別タグにより、同じ名前のユーザーが最大9999人まで存在できる従来のシステムはユーザー名登録の自由度が高いため、基本的には好きなユーザー名を設定できたわけだ。それでも今回の仕様変更に踏み切った理由について、同氏は同記事内で詳しく説明している。
Vishnevskiy氏の解説によれば、元々Discordにフレンドシステムはなく、ユーザー名を入力する必要がないため、大文字や小文字の区別も問題ではなかった。しかし、Discordのユーザー数が増加し、ユーザー名仕様のさまざまな問題点が浮かび上がった。この仕様変更をおこなった主な理由として、「Discord外でユーザー名を共有しようとする際、識別タグが分からない」「既に9999人が同じユーザー名を使用していたら、同じ名前が使えなくなる」「特殊記号や文字の大小の違いでフレンド登録しづらい」などの問題点が挙げられている。また同氏は、Discordでのフレンドリクエストの約半数は失敗しており、その原因の多くは識別タグの欠落や大文字・小文字の誤りによるものだと説明している。
しかし今回のDiscordの仕様変更の発表に対して、ユーザーからは消極的な意見も見られる。まず、Discordの従来の識別タグによるシステムは好きな名前を設定できるうえ、実用上でも役に立っているという意見だ。フレンドを追加するためには、識別タグまで含めたユーザー名が正しくなければならない。これは見方を変えればメリットでもある。ほかのSNSとは違い、比較的プライベートなスペースが確保できるからだ。特定ユーザーの検索がしづらいからこそ、見ず知らずの他人に絡まれる心配も少ないという意見も少なくない。
また今までDiscordではあまり問題とならなかった、詐欺やストーキング行為などの問題が増えるのではないかとの懸念も見られる。インフルエンサーのニセモノや、有名人の名前を先取り(キャンピング)する悪質ユーザーの蔓延を危惧する声もあがっている。
ユーザー名をシンプルなものにする今回のDiscordの変更は先述のVishnevskiy氏の説明のとおり、「検索しやすさ」「分かりやすさ」「管理しやすさ」などのメリットがあるだろう。一方で、ユーザーからはプライベート性の高い従来システムを支持する声が見られる。そうした指摘を受けて、新システムでの課題点が改善されていく可能性もありそうだ。いずれにせよユーザー名仕様の変更について、Discord社の今後の動向に注目したい。