スクエニのAI実験版『ポートピア連続殺人事件』を約5分で“解決”するRTA走者現る。雑すぎる命令と察しの良すぎるヤス

Image Credit : スクウェア・エニックス

スクウェア・エニックスよりPC(Steam)向けに無料配信されている“AIポートピア”こと『SQUARE ENIX AI Tech Preview: THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』のRTAに挑戦したユーザーが現れた。動画内ではゲーム中での相棒となるヤスに対して「聞け」や「帰れ」といったような、ほんのり高圧的な指示をおこないながらも鮮やかに事件を解決へと導く姿が確認できる。

https://twitter.com/yamabukiginu/status/1650520777073078273

『SQUARE ENIX AI Tech Preview: THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』は、『ポートピア連続殺人事件』をもとにした自然言語処理を学習・体験するソフトウェアだ。本作には入力されたテキストの処理に自然言語処理(Natural Language Processing)が用いられている。大量のテキストデータを使ったディープラーニング技術により、複雑な文字列の理解や文章の生成が可能となっているとのこと。

一方、本作には自然言語生成(Natural Language Generation)を用いた雑談会話機能は今のところ搭載されておらず、“AIの非倫理的な発言の可能性を考慮して”雑談会話機能を削除した状態でリリースされているという。今後の研究により、プレイヤーが安心して楽しめる環境が整った際の提供を予定しているとのことだ。しかしその影響からか、今のところは相棒のヤスが受け答えできる範囲はあまり広くないようで、ストーリー進行のフラグとなる会話や、核心をついた回答を引き出すために入力しなければいけない文字列はある程度決まっている。

Image Credit : 山吹ぎぬ / スクウェア・エニックス


そんな本作のRTAに挑戦した動画が注目を集めている。命令をうまいこと聞いてくれないAIヤスを華麗に操り事件を解決に導くRTA動画を制作したのは、動画投稿者の山吹ぎぬ氏。動画にて山吹ぎぬ氏はハイスピードな事件解決を目指し、スタート直後から「聞け」とぶっきらぼうに指示。さらに「山川い」なる暗号じみたワードを入力。なぜかヤスは「山川の屋敷に行け」と理解できた様子だ。AIヤスが反応するギリギリの範囲を知り尽くしているかのような文字列を高速で打ち込むプレイを見せている。ちなみにレギュレーションとして、本作はコマンド入力式のゲームということもあり、Ctrl+C、Ctrl+Vを使ったコピー&ペーストは禁止とのこと。

続いて、「山川い」コマンドにて向かった先の山川の屋敷では「写真取れ」「灰皿調べろ」「マッチ取れ」というような文字列を次々と打ち込んでいく。ヤスは部下とはいえとんでもなく高圧的な態度に見えるが、速度を競うRTAゆえ仕方ない。高圧的で雑な命令と、暗号じみた言葉足らずな指示をきちんと理解して実行するヤスが察しの良すぎる有能キャラクターにも見えてくる。

その後も雑すぎる命令と従順なヤスとのやり取りは、スピード感たっぷりに続く。そして捜査本部にて山川の甥について調査し、神戸港の近くに住んでいるとの情報を入手する場面でも印象的な展開が。なぜかその情報を聞いたあと、ヤスに「なぐれ」と命令すると神戸港にワープできるようだ。「港行け」よりも文字数を短縮できてRTA的にはお得とのこと。ヤスのパンチによって大人ふたりがワープするなんてデタラメがあっていいのだろうか。

Image Credit : 山吹ぎぬ / スクウェア・エニックス


そして動画は言わずと知れた「犯人はヤス」のシーンへ。証拠としてヤスの肩にある蝶の形をしたアザを確認すれば事件解決なのだが、ここでも速さを追い求めた主人公はヤスに対して「脱げ」を連呼。これではどちらが犯人か分かったものではない。ぶっきらぼうな命令や暗号めいた指令を完璧にこなした上に、時には港まで拳でワープさせてくれる気の利いた相棒、ヤス。そんな彼が捜査本部の部屋の中で主人公に何度も「脱げ」と詰め寄られる姿を想像すると、あまりにも不憫な気がするのは筆者だけだろうか。

「脱げ」コマンドを何度も打ち込むことで主人公はヤスの服を脱がすことに成功。何はともあれ事件が解決し、「完」の文字が出たところでタイマーストップ。記録は4分40秒93だった。リザルトにて表示されるゲーム内での捜査日数は4日とのことだが、ゲーム内日数で考えたとしても超スピードのヤス逮捕である。AIヤスを知り尽くしたかのような完璧な指示と、目にも止まらぬコマンド入力のなせる業だろう。RTA動画ではお決まりの“完走した感想”では「本作のRTAは推理ゲームというよりタイピングゲームですね」と語られていた。鮮やかなスピード逮捕に加えて、暗号のような発言でもきちんと察してくれるAIヤスとのやり取りのすべてが気になる人は、ぜひ動画を確認してみてほしい。

なお、前述したように、本作には今のところAIによる雑談会話機能は実装されていない。そのため、今後のアップデート次第では、今以上にデタラメなヤスとのやり取りを見ることができる可能性もありそうだ。今後のアップデートにも、アップデート後のRTAにも大いに期待したいところだ。



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