実際に確定申告できる美少女デートゲーム『Tax Heaven 3000』Steamから削除される。“プレイヤーの個人情報を聞き出そうとする”カノジョを問題視か


Steamにて配信予定だったビジュアルノベルゲーム『Tax Heaven 3000』のストアページが、本日3月23日に突如Steamから削除された。同作ではゲームをプレイしながら、米国での確定申告を実際におこなえると謳われており注目を集めていた。海外メディアThe Vergeなどが報じている。

『Tax Heaven 3000』は、アメリカ・ニューヨークに拠点を置くアート制作集団MSCHFが手がけるビジュアルノベルゲーム。本作にてプレイヤーは、少し世間知らずだが何故か所得税については詳しい女の子Irisとデートをする。彼女は、特別な人と出会い、その人の確定申告をすることが夢だという。そしてプレイヤーは、彼女との会話を重ねていくことで、2022年の米国連邦税の確定申告書を実際に作成できるとのこと。

開発元MSCHFは、削除前のSteamストアページにて、従来の税務申告手続きは意図的に複雑にされていると主張。また公式サイトでは、既存の申告書作成ソフト「TurboTax」を例に、捕食的で寄生的なボトルネックになっていると指摘し、そのメーカーを政府を影から操る悪徳企業であるとまで述べている。

そして、ビデオゲームもソフトウェアの一種であり、『Tax Heaven 3000』はビジュアルノベルとして内国歳入庁に順応する装置であるとした。つまり本作は、本来複雑な確定申告手続きを、ゲームを楽しみながら手軽におこなえるソフトウェアであるということなのだろう。ちなみに、ビジュアルノベルゲームとしてはマルチエンディングにも対応しているとのこと。


ただ、本作は配信日を前にSteamから削除された。削除の直前のストアページでは、「Steamが本作を排除しようとしている」との主張が概要欄に記載されていた。このことから、開発元が自ら取り下げたわけではなく、Valveが削除したものと思われる。また開発元は、代わりに公式サイトから本作を入手するよう呼びかけていた。

Valveが本作のSteamでの配信を拒否した理由は不明。開発元も、説明なしに削除されたと訴えている。ただ本作のSteamコミュニティページでは、本作のプレイについて注意を呼びかける投稿が複数投じられていた。というのもゲーム内には、プレイヤーが自身のソーシャルセキュリティナンバー(社会保障番号)の入力を求められる場面があるからだ。

本作のトレイラーでは、デート相手のIrisが「あなたの個人的なことをもっと知りたいな。たとえば、ソーシャルセキュリティナンバーとか?」と話しかけてきて、プレイヤーが番号を入力するシーンが紹介されている。実際の確定申告書を作成するためには必要な情報ではあるが、開発元が著名なアート制作集団とはいえ、本作がセキュリティ上信用できるソフトウェアかどうかは分からない。Valveは、そうしたリスクを考慮して本作を削除した可能性がありそうだ。


Steamでの配信は望み薄となったものの、開発元MSCHFは本作について、引き続き公式サイトやitch.ioを通じてリリースする計画でいるようだ。公式サイトでは、ゲーム内容に合わせてか一部に日本語が記載されている。またIrisの抱き枕などを同梱するコレクター版の販売や、“規制解除パッチ”の配布をうかがわせるバナーも掲載。ただ、これらが実際に販売・配布されるのかどうかは現時点では不明である。

Tax Heaven 3000』は、4月4日に無料にて配信予定。実際に米国での確定申告に利用できるのか、またセキュリティ上のリスクはないのかなどについて、配信後にはふたたび注目されることになりそうだ。