『スプラトゥーン3』にて、「各攻撃のダメージ判定が攻撃/被弾どちらにあるか」を検証した猛者現る。“チャージャー攻撃避けたのに当たる問題”に切り込む

スムス氏は3月5日、『スプラトゥーン3』における調査記事を公開した。『スプラトゥーン3』での各攻撃のダメージ判定が、攻撃側か被弾側どちらに依存しているかを検証した力作だ。

Twitterユーザーのスムス氏は3月5日、『スプラトゥーン3』における調査記事を公開した。同記事では、『スプラトゥーン3』での各攻撃のダメージ判定が、攻撃側か被弾側どちらに依存しているかの検証結果が記載されている。力作であり有用なデータであるとして、コミュニティの一部で注目を集めている。本稿では引用の許可をとった上で、スムス氏の話をうかがいなら、データを見ていく。なお、本稿における各見解はあくまで筆者が考えたもの。スムス氏は後述するようにあえて自身で主観的な見解を提示しないように努めているので、留意してほしい。


『スプラトゥーン3』では、さまざまなウェポンが登場する。ウェポンを使って攻撃し相手を倒していく。しかしながら、各ウェポンを見ていくと、実はダメージ判定は攻撃側か被弾側に分かれているケースがある。攻撃を当てた側で判定されているウェポンであれば、被弾側がどう見えていても被弾する。逆に、被弾側に判定があるウェポンならば、攻撃側が当てたように見えても避けられていたりもする。ゲーム中にしばしば味わう「当てたはずなのに」「避けたはずなのに」と感じる現象は、ダメージ判定がウェポンによって攻め手・受け手で違うことで発生しているのだ。


スムス氏はこの仕組みをいちユーザーとして言語化しただけでなく、どのウェポンが攻撃側・被弾側判定なのかを調査したわけだ。かなり壮大な実験である。方法としては、最近発見された、プライベートマッチのさんぽモードのポーズ機能を利用することで、“ダメージ判定が被弾側のみ受けない”手法を採用。各ウェポンの判定を調査している。

詳細についてはスムス氏の記事を見ていただくのがいいだろう。要約するとメインウェポンについては、一部切り離しが可能なブキ以外は、ほぼすべてが“攻撃側”にダメージ判定が依存している。それゆえに、メインウェポンの攻撃は、被弾側がいくら避けられたと感じても、攻撃側でヒットしているかどうかにより決まることがわかる。「チャージャーの攻撃、ちゃんと避けたはずなのに、やられた!」という不満は、ある意味正しいといえる。


ではどのようなケースでは、被弾側にダメージ判定が依存するのか。傾向としては“自律性のある飛び道具”に被弾側へのダメージ判定依存が見られる。具体的にいうと、サブウェポンの多くは被弾側にダメージ判定が依存する。サブウェポンはメインウェポンとは違い、攻撃側から離れたのち自律的な動きをするものが多い。動いたり爆発したり、あるいは設置後に発動したり。一度攻撃側から切り離されて挙動するウェポンは、被弾側での判定となる。逆にいえば、ラインマーカーのように攻撃側から相手プレイヤーに直撃するギミックは、メインウェポンと同じく攻撃側依存のダメージ判定となる。


スムス氏の検証結果を見るに、基本的には、攻撃側からそのまま当てるものは攻撃側にダメージ判定あり。攻撃側から一度切り離されて挙動するものは被弾側にダメージ判定あり、といった傾向がある。同じウェポンによって、直撃と爆風で攻撃・被弾の判定依存対象が違うのも、こうした傾向が理由であると推察される。一方で、スペシャルウェポンの判定はもう少し複雑。直撃系でもサメライドは被弾側に判定があり、挙動としてはシューター/チャージャー寄りのウルトラショットも被弾側に判定がある。それぞれのウェポンごとの仕様は複雑。それだけに、スムス氏の研究には非常に価値がある。改めて、同記事の内容を自身の目で確かめてほしい。

結果だけ見ると面白く納得しやすいが、これほどの量のデータを集めようとするとかなり気が遠くなる。スムス氏は「攻撃側視点でヒット音が鳴るがダメージ判定は被弾側の攻撃」まで調査しており、執念さえ感じさせる。なにがここまでスムス氏を掻き立てるのだろうか。話をうかがった。

スムス氏によると、2023年2月中頃、とあるユーザーの「スペシャルウェポンによって、判定が違う」ことを報告したツイートをきっかけに今回の調査記事を書き始めたという。記事ができあがるまでは3週間ほど要したようだ。検証のモチベーションについては、スムス氏自身の好奇心が大きかったとのこと。プレイ中に感じたり見かけたりした仕様について深く知るべく検証をしているそうだ。記事にする上では備忘録としての意義だけでなく、発展的な検証や他者のプレイングの開拓にも期待をよせているとのこと。

というのも、スムス氏は記事を書くことで『スプラトゥーン』シリーズをよく知り楽しめるようになった経験があるという。具体的にいえば、ガチアサリだ。ガチアサリはゲーム内で提示されるルールこそシンプルであるが、スムス氏はアサリのスポーンや詳細なルールなどを把握できず、不満を感じていたそうだ。しかし記事にして自身の理解度が高まったことにより、よりガチアサリを楽しめるようになったという。また他プレイヤーからもルールを理解でき楽しめるようになった声もあるとのこと。該当記事はこちら


こうした背景から、スムス氏は今回急に検証を始めたのではなく、『スプラトゥーン2』の頃から検証や調査をしてきたことがわかる。そんな同氏に、もっとも面白く感じた検証結果について訊いてみたところ、ブキのマニューバー種の射撃仕様が、『スプラトゥーン2』から『スプラトゥーン3』にかけて変わったことをあげてくれた。

スムス氏はクアッドホッパーブラックを愛用していたが、『スプラトゥーン3』になり体感として射撃命中率の向上を感じたとのこと。任天堂は『スプラトゥーン3』発売に際して、同作における過去のメインウェポンの基本性能は、過去作と一緒と説明していた。しかしスムス氏が検証したところ、マニューバー系は『スプラトゥーン3』から、立ち射撃時にハの字の方向に弾を撃つようになり、中央にいる相手に弾が命中しやすくなったことが判明したそうだ。スムス氏の洞察力と検証力が面白い結果を導き出した一例といえる。


またスムス氏は、検証記事内では基本的に主観的な考察などを入れていない。これは同氏が心がけていることだという。あくまで検証記事の役割は戦略を考える上での前提知識であって、そこからどのような戦略をとるかは人それぞれだと考えているそうだ。パラメータをひとつとっても、プレイヤーのスキルやスタイルによって強さは異なる。それゆえに、パラメータが優れているからといって、安易に強いと強調したり、思想を入れたりしないように意識しているようだ。検証者としてのこだわりが見てとれる。

『スプラトゥーン3』はさまざまな複雑な要素が絡み合い、面白いゲームプレイを実現している。各仕様について疑問をもつこともあるだろう。スムス氏はそうした問いに対して、時間と労力をもって人力検証に向き合い、客観的なデータや数字を提示している。非常に情熱的で誠実な試みである。

筆者も、チャージャーの攻撃を避けたように見える場合の被弾について漫然とイラつくことは多かったが、スムス氏の調査記事を読んでから、納得はできなくとも少し気持ちに折り合いをつけやすくなった。こうしたちょっとしたデータが、プレイを豊かにすることは往々にあるだろう。またこうした検証は、熱心なユーザーを抱える、『スプラトゥーン』シリーズのコミュニティ熱の高さがはっきりとわかる事例だといえそうだ。勝つためにはプレイングスキルも重要ながら、こうしたデータを参照しながら戦場におもむいてみるのもいいかもしれない。

『スプラトゥーン3』は、Nintendo Switch向けに発売中だ。




※ The English version of this article is available here

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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