“互いを罵り合いながら『オーバーウォッチ』をするトランプvsバイデン”のゲーム実況動画が大人気。AIを使った悪ふざけはここまできた

オンラインゲームをプレイしながら罵り合う米国の歴代大統領たちの動画が、話題になっているようだ。『オーバーウォッチ』をプレイしながら、互いを罵り合う。

オンラインゲームをプレイしながら罵り合う米国の歴代大統領たちの動画が、話題になっているようだ。コンテンツクリエイターのVortex氏が音声合成AIを用いて作成した動画は、その滑稽さからTikTokやTwitterで反響を呼んでいる。

TikTokで100万回以上「いいね」されているこの動画は、現米国大統領のバイデン氏と前大統領であるトランプ氏がオンラインマルチプレイヤーゲーム『オーバーウォッチ』をプレイしながら、互いを罵り合うという内容のもの。実際に以下の動画を見てもらったほうが早いだろう。

動画では、ふたりがなにやら口喧嘩をしている。一体何を話しているか見ていこう。動画の冒頭、自チームのボイスチャットに「おぉDORADOか、このマップ好き、懐かしい」と独り言を漏らすバイデン氏。「もしかして、ジョー(バイデン)。またお前がこの俺のチームにいるのか?」とトランプ氏が反応。続けて「GG」「負け試合だ」「誰かドッジ(マッチ離脱)しろ」などいかにもゲーマーらしい、そしてトランプ氏らしい皮肉と罵声を浴びせている。

一方のバイデン氏は「まだ試合が始まってすらいないのに、この男は文句を言っている」「どうせまたゼニヤッタを即ピックしてフィード(敵に無理やり攻撃をしかけて有利を与える)するつもりだろう」と反撃。あわせて、トランプ氏がいくらバイデン氏に罵詈雑言を吐いてもランクが上がるわけではない、との旨を指摘する。トランプ氏はこれを否定しつつ、今日という一日が(バイデン氏とロビーで出会うまでは)いかに素晴らしい日だったかを語り始める。しかし、なにか喋るたびバイデン氏によって「興味ないね」と冷たく突き放されてしまう。最終的にバイデン氏が「(運営会社の)Blizzardはさっさとマッチメイキングを直すべきだジーザスファッキンクライスト」と不満を垂れ、動画は終わっている。

34秒という短い動画だが、まさに罵声の嵐である。しかしながら、ゲーマーならばなんとなく見覚えのある光景だ。大統領という著名人たちが、ゲーマーならではの語彙を用い罵り合うことで、シュールなシーンに仕上げられている。そのシュールさが笑いを誘っているのかもしれない。改めて強調すると、本物の大統領ではなくAIによる合成音声である。

この動画はTwitterでも1.7万回以上リツイートされ、『オーバーウォッチ』プロチーム「フロリダ・メイヘム」もネタに便乗し現大統領にメンションを飛ばすなど、まさにお祭り騒ぎといった様相だ。

https://twitter.com/yakirisuu/status/1627718458489045027


どう聴いても本人たちが喋っているように思えるが、一体元ネタは何で、どのような技術が用いられているのだろうか。ゲーマー大統領が互いを罵り合うネットミームの正確な起源は不明だが、2021年に作られた動画が火付け役となったようだ。この動画では人気TVシリーズ「ブレイキング・バッド」に登場するウォルトJr.と、彼のIPアドレスを把握し脅しをかけるトランプ元大統領が言い争っている。IPアドレスを使って住所特定、というのも古きネットユーザーには馴染み深いネタかもしれない。


この動画はYouTubeに投稿されてから2年で70万回以上の再生を達成し、Twitterに@CunnyGriffin氏が投稿したクリップ動画は半年間で260万回以上表示され、5.5万いいねされている。ようするにウケまくっていたわけだ。

一方、AI技術の急速な発展を背景に、2020年頃にはすでに音声合成AIを用いて著名人やフィクションの登場人物にあることないことを喋らせる「AI Voice」と呼ばれるジャンルの動画が多数存在していた。また、2022年9月には音声合成AIを開発するEleven Labsが新技術のデモ動画を公開し、その精度の高さが大きな話題を呼んだことも記憶にあたらしい。

https://www.youtube.com/watch?v=17_xLsqny9E


こうした「急速な音声合成AI技術の発展」と「大統領をネタにする文化」を背景にして、大統領にゲームをさせる「AI Presidents Gaming」(Know Your Meme )というネットミームは誕生したと見られる。

今回取り上げた動画は『オーバーウォッチ』のプレイ動画を背景に『オーバーウォッチ』プレイヤーが喋りそうなことを大統領たちに喋らせるという動画だった。しかし別ユーザーは『マインクラフト』の世界でバイデン氏がトランプ氏の邸宅を爆破、元大統領のオバマ氏も参戦するといった動画をあげている。「AI President Gaming」の世界は広い。ほかにも『League of Legends』や『Halo 3』など人気のマルチプレイゲームを大統領たちにプレイさせる動画がTikTokやTwitter、YouTubeに多数投稿されている。

もちろんAIは、ゲームコミュニティにおいてジョークだけに使われるわけではない。高精度な音声合成AIはMod制作にも新たな風を呼び込んでいる。『The Elder Scrolls V: Skyrim』 のMod制作者wSkeever氏は、自身が作成したModに音声合成AIを盛り込んだ動画をプレビューとして公開。ユーザーからの反響も大きい。

どのようにAIを使うかは、その人次第。新たな技術の発展が、ゲーマーコミュニティにどのような変化を及ぼすのか。今後の展開を注視していきたい。

Akira Tabata
Akira Tabata

離島に暮らす雑食ゲーマー。物語性の高いゲームが特に好き。『League of Legends』はシーズン3からプレイ。学生時代を棒に振った。歴史ストラテジーゲームが好物です。

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