Nintendo Switch『メトロイドプライム リマスタード』元開発者がクレジット表記に不満の声上げる。原作スタッフは掲載されるべきか


任天堂は2月9日、『メトロイドプライム リマスタード』をNintendo Switch向けに発表し、即日配信開始した。本作は、ニンテンドーゲームキューブ向けに2003年に国内発売された探索型FPS『メトロイドプライム』のリマスター版だ。グラフィックが一新され、現代的な操作方法にも対応し、すでにメディア・ユーザー双方から高い評価を獲得している。

一方で本作については、開発元Retro Studiosの元スタッフからは不満の声も聞かれる。それは、本作に収録された開発者のクレジット表記のあり方についてである。


Retro Studiosにかつて務め、シニアエンジニアとして『メトロイドプライム』の開発に携わったZoid Kirsch氏は2月12日、『メトロイドプライム リマスタード』のクレジット画面をTwitterに投稿。リマスター版開発に参加した多くのスタジオが素晴らしい仕事をしたと本作を高く評価する一方で、オリジナル版のクレジットが省略されていることにガッカリしたと述べた。

投稿された画像では、本作はニンテンドーゲームキューブおよびWii版『メトロイドプライム』を元に開発されたとし、その開発スタッフがクレジットされている。ただしスタッフの個人名は記載されず、“開発スタッフ(Development Staff)”という一言にまとめられた格好となっている。Kirsch氏は、オリジナル版では多くの素晴らしい人々と共に仕事をしたとし、このような一文ではなく、全員の名前をクレジットすべきだと主張した。

ゲーム開発者にとってクレジット画面に名前が記載されることは、その作品に携わったことの証明であり、各々のキャリアにとって大きな意味をもつ。ただ今回のように、直接開発に携わっていないリマスター版やリメイク版へのクレジットとなると、少し意味合いが異なるかもしれない。とはいえ、オリジナル版が存在したうえでのリマスター・リメイクであるため、全員載せるべきだという意見も一理ある。


では、他作品ではどのようなクレジットがなされているのだろうか。同じ任天堂のリマスター作品である『ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD』の場合は、クレジット画面の最初にオリジナル版のスタッフがひとりひとり掲載されている。まさにZoid Kirsch氏が望んでいる形式だろう。このことからは、任天堂としてクレジット表記に関する一貫したポリシーが存在するわけではなく、開発会社ごとの判断でおこなっているのであろうことがうかがえる。

また、セガの『ソニックカラーズ』のリマスター版『ソニックカラーズ アルティメット』においても、オリジナル版スタッフがすべてクレジット(上の映像)。こうした作品は少なくない。ちなみに、『ソニックカラーズ アルティメット』の開発を担当したBlind Squirrel Gamesの元テクニカルアーティストWeston Mitchell氏は、Kirsch氏の意見に賛同するひとり。同作では全員を掲載した結果、クレジット画面が約30分の長さになったと笑いながら振り返っている。

一方、たとえばカプコンの『バイオハザード2』のリメイク版である『バイオハザード RE:2』のクレジット画面では、Special Thanksの項目の最後に、オリジナル版のディレクターを務めた神谷英樹氏に加えて「Original Development Team」とだけ掲載。スクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジー VIII』のリマスター版『FINAL FANTASY VIII Remastered』においても、「ALL FINAL FANTASY VIII DEVELOPMENT STAFF」と記されている。『メトロイドプライム リマスタード』に似たかたちの記載であり、是非はともかく、業界内ではこうした形式も珍しくはないようだ。


話はやや逸れるが、『メトロイドプライム リマスタード』のクレジットに関しては、本作に直接携わった開発者からも不満の声が上がっている。Retro Studiosの元エンバイロメントアーティストAshley Rochelle氏は、自身がSpecial Thanksの項目内にクレジットされていることを指摘。クレジットのリストが作成される前に退社した元スタッフは、みな同項目に記載されているという。“Special Thanks”はクレジット画面には付きものであるが、その作品にどのように貢献したのかは曖昧なカテゴリ。作品によっては開発者でない人物が記載されることもある。Rochelle氏は、担当した役職と共にクレジットすべきだと主張し、上述した慣例は止めるべきだと批判した。

ゲーム業界においては、クレジットへの記載を巡り開発者が不満や嘆きの声を上げることが少なくない。たとえば『メトロイド ドレッド』では、開発元MercurySteamの複数の元スタッフが、クレジットに掲載されなかったと明かしたことがあった。当時同スタジオは、開発期間の25%以上のあいだ携わっていることが掲載条件であるとコメント。元スタッフらはこの条件に該当しなかったとみられるが、そうした条件設定自体について議論を呼んだ(関連記事)。

今回のZoid Kirsch氏やAshley Rochelle氏の件についても、おそらくRetro Studiosが設けているクレジット掲載についての基準に沿った措置であったと考えられる。場合によっては、雇用契約時に規定されていた可能性もあるだろう。


今後Retro Studiosが、『メトロイドプライム リマスタード』のクレジット画面にオリジナル版の開発スタッフを追加したり、携わった元スタッフの記載を改めたりするのかどうかは何ともいえない。規定どおりにクレジットされているとすると、変更することは容易くはないかもしれない。

ただ、クレジット修正の前例がないわけではない。バンダイナムコの『パックマンワールド 20thアニバーサリー』のリマスター版である『PAC-MAN WORLD Re-PAC』の発売当時、オリジナル版の開発元Namco Hometekの元リードゲームデザイナーScott Rogers氏が、オリジナル版の開発スタッフがクレジットされていないと指摘。その後バンダイナムコはアップデートを配信し、各スタッフの名をクレジットに追加したのだ。

Rogers氏の訴えは当時メディアにも取り上げられ、大きな注目を集めると同時に、一部ゲーマーからはバンダイナムコに対する批判的な意見が寄せられた。そうしたコミュニティの後押しが今回の件においても起こり、Retro Studiosを動かすことに繋がるのかどうか注目されそうだ。


『メトロイドプライム リマスタード』は、Nintendo Switch向けに販売中。また、Retro Studiosはシリーズ最新作『メトロイドプライム4』を開発中である。



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