“世界初のインディーゲームサブスク”を謳う「MagnaPlay」登場。しかし怪しさ満点
世界初のインディーゲーム・サブスクリプションを謳う「MagnaPlay」なるサービスが運用開始されているようだ。しかし、何かと怪しい雰囲気が漂っている。興味があるにしても、まだ様子見したほうが良いかもしれない。
「MagnaPlay」は、サブスクリプションサービスだ。月額費用を支払うことで、さまざまなインディーゲームをプレイすることができる。専用のクライアントからゲームをダウンロードし、プレイする形式。現在インディーゲームは最盛期を迎えており、コンセプトそのものはなかなか面白い。
しかし「MagnaPlay」がサービスとしてしっかり成り立っているかどうかは怪しい。まずは製品としての特色を見ていこう。提供されているゲームは、現時点で11種類。『Hello Neighbor』や『Punch Club』といった人気ゲームはあるものの、ラインナップはかなり寂しい。また月額料金については、1か月8ドル(約1000円)と(このラインナップにしては)高め。
また「MagnaPlay」のクライアント画面では、同サービスでは提供されていない『Dead Cells』『Hades』といったゲームのパッケージを、「Steamキーが手に入る」としつつ表示させている。先着1000人にこうしたゲームのSteamキーをプレゼントする企画があり、そのためのデザインかもしれないが、誤認を招きかねない。さらには、サイトには運営会社の情報の記載がなく、プライバシーポリシーページにも記述がない。決済するにあたっても決済サービスのstripeの規約は表示されるものの、「MagnaPlay」はなんの規約も提示してこない。
といったように、サブスクリプションサービスとして必要な要素を欠いており、利用に際し不安がつきまとう。提供作品のパブリッシャー/デベロッパーが「MagnaPlay」への参画を表明しているケースも特にない。こうなると、そもそもとして提供されるゲームが、開発者から許可をとっているのかも疑わしくなってくる。
そもそも運営者は何者なのだろうか。Our Storyページによると、「MagnaPlay」はブラジルのサンパウロに住む大学生チームによって開発されているとのこと。彼らはゲームを愛しているものの、フラストレーションを溜めているという。というのも、新作ゲームの価格が上がることで新しい体験をしづらくなっていることや、その売上のうちに開発者にいくお金が少ないことから、革新的な可能性をもつゲームが幅広いユーザーに知られず、スタジオ自体が閉鎖するといったケースを目にしてきたそうだ。
チームはそうした状況を鑑み、開発者たちにヒアリングをした上で、「MagnaPlay」を開発しているそうだ。ようするに、アイデアの素晴らしい小規模開発のゲームを遊びやすい場を安価で提供しつつ、開発者にも報酬をしっかり渡すという理念だということだろう。この挑戦はゲーム業界に革命を起こしインディーゲームを次のレベルに引き上げる、とも語っている(revolutionize the gaming industry and take indie developers to the next level)。
本サービスについては、開発チームのひとりであるという人物が、上述のようなコンセプトを海外フォーラムHacker Newsにて投稿している。また、本サービスではサブスクでありつつも作品をストリーミングするのではなく、インストールする形式だという。そのため、海賊版の問題を解決するためにDRMを新規に開発したといい、技術面についても詳しめに説明されている。そうした投稿へのユーザー反応はというと、そうした技術面の努力や熱意をある程度評価しつつも、インディーゲーム配信の分野でサブスクが成功するかについては懐疑的な意見が目立つ状況だ。
チャレンジとしては面白いものの、ビジネスのスキームはかなり危うい。公式Twitterアカウントは一部実績あるスタジオとフォローしあっており、今後タイトルラインナップは充実していく可能性はあるものの、現時点で月額料金を支払うのはリスキーと言わざるをえない。
Xbox Game Pass/PC Game Passのように、小規模開発者への還元も大きいとされており、消費者もアクセスしやすい巨大サービスと、どのように差別化していくかも気になるところ。今後のサービス整理と充実に期待したい。