個人開発者のDan DiIorio氏は、『Luck be a Landlord(幸運の大家様)』の売上が非常に好調であることを報告した。Steamで正式リリースして以来、ユーザーベースがぐっと拡大したという。同氏を悩ませた“リアルな家賃への不安”は解消されそうだ。
『幸運の大家様』は、デッキ構築型スロットゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam)。本作にてプレイヤーは、アパートの住人となり大家に家賃を支払う。大家からは、家賃の金額と支払い期日がメールで通知される。ただ、ゲーム開始時の手持ちのお金はコイン1枚だけ。そこで大家は、アパートに用意されたスロットマシンでお金を稼ぐことを提案する。スロットマシンは無料で回すことができる一方、原則1日1回しか回せない。指定された日数分スロットを回すなかで、家賃を支払えるだけのコインを稼ぐのだ。
本作は2021年1月に早期アクセス配信が開始され、2年の時を経て今年1月頭に正式リリース。実績の導入やバランス調整、UIの改善などが実施されている。そして正式リリース時から、とにかくゲームが売れているそうだ。たとえば本作のSteam同時接続ユーザー数は、早期アクセス配信中は平均して150人程度だったという。しかし現在は1000人程度で安定しているようだ。さらに具体的な売上金額については伏せつつ、正式リリース時の売上は、2022年10月第1週と比較すると30倍であったとのこと。
DiIorio氏は正式リリースに際して『幸運の大家様』が売れている理由について、Steamストアトップページの「人気の新作」セクションに載ったことが大きいとコメント。もともとこの場所に載ると効果的とは聞いていたという。結果として、この枠からユーザーが多く流れ込んだとのこと。正式リリース時のインプレッションの75%以上がこの枠からきたそうだ。アルゴリズムの研究などはしておらず、意図的にこのセクションに載せたわけではなかったという。一方で、早期アクセスとして配信してきたことが、このセクションに載ることを後押ししたと確信しているそうだ。つまり、無名の新作としていきなりリリースしてもウィッシュリスト数なども少なく載らなかったが、早期アクセス中に数字などの実績を積み上げたことで、アルゴリズムにプッシュしてもらえたと考えているのだろう。
DiIorio氏は、引き続き『幸運の大家様』の開発に取り組むとコメント。ゲームバランスは完璧ではないとしつつも、バランス調整をする予定はないとしている。一方で最適化や移植などを進めていくと語った。具体的には、iOS/Android向けなどさまざまなハードへの移植が考えられているそうだ。
なお余談となるが、『幸運の大家様』は、怒りっぽく強欲な大家から家賃を取り立てられるゲームであるが、このアイデアはDiIorio氏の実体験から着想を得ているという(Waypoint)。というのも、DiIorio氏はADHD(注意欠如・多動症)を抱えており、同氏の場合は日常生活や開発に大いに支障が出るとのこと。そのため、薬を飲むことを余儀なくされている。一方でアメリカの医療制度によって、薬を手に入れることは難易度が高く、苦しい生活を送っていたそうだ。薬が手に入らなかったという理由で、『幸運の大家様』のアップデートが遅れたことも度々。金銭的にも苦しく、家賃を支払うのも厳しい。そもそも家賃を支払うという考えについても疑問。そうした実体験からゲームが生まれたわけだ。
そして『幸運の大家様』は商業的に成功を収めた。一方でDiIorio氏の生活は安定し、さらに身の回りの人間の生活費のサポートなどもしているという。しかし、ADHD適応の薬をコンスタントに手に入れるまでには至っていないという(Waypoint)。大企業に勤め上げていない者はなかなか保険も受けられないそうだ。また、ADHD適応薬は平均して薬価も高いため、そうした保険制度のなかではなおさら手に入りづらいだろう。
またアップデートでは、ゲーム内で“大家を倒す”展開も実装。さらにチーズとワインを好むBillionaire(金持ち)なるシンボルも実装され、アイテムのギロチンを使えばこのシンボルが処刑可能。物々しさも加速している。この金持ちシンボルについては“あの人”に似ているとの指摘も。あの人とはMetaのCEOである、Mark Zuckerberg氏だ。この指摘に対しDiIorio氏は「億万長者はみんな魂のない抜け殻みたいな顔しているから、(Zuckerbergみたいに見えるのは)僕のせいじゃないよ」と痛烈に皮肉を飛ばしていた。
いずれにせよ、家賃に苦しめられたDiIorio氏は家賃を題材にしたゲームによって商業的な成功を収めた。安定した収入を得ているようで、次なる新作にも着手できそうである。『幸運の大家様』はSteamにて1200円で発売中。他ハードへの移植計画も進行中である。