クラファンで約1000万円を集めたゲームの責任者、資金はゲーム開発費のため募ったのではなかったと主張。「開発費の問題を解決したい」と呼びかけたにも関わらず
国内デベロッパーの株式会社ピクセルは1月18日、シューティングゲーム『スチームパイロッツ』について実施されたクラウドファンディングに関する、“お詫びとご報告”を公開した。
【UPDATE 2023/1/20 11:45】
ピクセルの声明ツイート削除にあわせて本文を調整
『スチームパイロッツ』は、元コナミ所属の作曲家である古川もとあき氏を発起人として発表された、PC向け縦スクロールシューティングゲームだ。Makuakeにて2019年より実施された2度のクラウドファンディングキャンペーンを通じ、合わせて1000万円を超える出資金を獲得。当初は2020年9月の完成が想定されていたが、現在もまだ開発は続いている。
ピクセルは本作の開発を担当。代表取締役の佐々木英州氏が本プロジェクトに参加するも、その後降板した。同社の発表によると、開発費の未払いや、両者間の合意についての一方的な条件変更などがあったという。開発費が出ていないなかでは、それ以上の開発続行は断念せざるを得なかったとして、完成分のデータおよび成果物の権利引渡しを条件に、報酬の支払いを請求したとのこと。しかし古川氏側からの回答が途絶えたことで、ピクセルは請負代金の支払いを求めて、2022年2月に仙台地方裁判所にて訴訟を提起することとなった。
なお古川氏側は、共同制作契約に対するピクセルの債務不履行があったことから契約を解除したと主張し、また同社に対し損害賠償を請求しているという。ただ、その主張に対してピクセルは反論している(関連記事)。
*ピクセルは1月19日、本件が同社の意図しないところまで規模が大きくなってしまったとして上記ツイートを削除。公式サイトでの発表を代わりに案内している。
今回ピクセルが発表した“お詫びとご報告”では、本作のために実施されたクラウドファンディングの目的について、先述した訴訟において古川氏の代理人から回答を得たとして、その内容が説明された。それによるとクラウドファンディングは、開発担当であるピクセルに制作費を支払うために実施されたわけではなかったとのこと。制作の一部を外部に発注などする際の、経費負担のリスクを回避するために実施されたのだという。
これを受けてピクセルは、当然同社に開発費が支払われるものと“錯誤”していたと述べる。同社は、第1回目のクラウドファンディング実施時には、Twitterや各SNSで資金調達に協力。古川氏側の回答によれば、結果的にピクセルはゲーム開発費に支援したいという想いでいた支援者を偽るようなかたちとなったことから、同社は支援者に対し謝罪した。
一方で同社は、「ゲーム開発費の名目クラウドファンディングを開催しておきながら、当初からゲーム開発費が目的ではなかったという事実に驚きを隠せません」ともコメントしている(上述のツイート削除時に、公式サイトではこのコメントも削除された)。実際、Makuakeのクラウドファンディングページには、資金の運用方法のひとつとしてゲーム制作費が記載されている。またゲームの開発費という問題のために資金を集めることも記されている。普通に読めば、開発費のために資金を募っていると解釈するだろう。
*キャラクターデザインを担当したShuzilow.HA氏が、本裁判と開発状況について見解を表明。ただ「既にクビの様です」とも述べ、最早プロジェクトに関与していない模様。
なお古川もとあき氏は、現在SNSは非公開とし、Makuakeのクラウドファンディングページを通じて情報発信をおこなっている。直近の更新は昨年11月で、“大きな騒ぎ”になっているため、本プロジェクトの進捗報告および質問への回答に関しては、弁護士と相談しながら可能な範囲でおこなっているとのこと。『スチームパイロッツ』の開発中の画像や動画については、現段階では見せられないとも述べている。そして、裁判を通して正規の方法にて事実を明らかにし、本件問題の解決を図っていきたいとした。