Steamにて昨年11月に早期アクセス配信が開始された剣闘士アクションRPG『We Who Are About To Die』が、かなりの好評を得ている。実は本作はたったひとりで開発されており、その過程ではさまざまな工夫が取り入れられてきたという。開発者のJordy Lakiere氏が、海外メディアGameDiscoverCoに対しその背景を明かしている。
『We Who Are About To Die』は、下っ端の奴隷の剣闘士として戦い、チャンピオンになることを目指すアクションRPGだ。キャラクターには8つの武器クラスがあり、サイズやスタイルの異なる12以上の闘技場を舞台に戦う。1対1だけではなく、複数の剣闘士が入り乱れる対戦形式も存在。勝利し報酬を得て、キャラクターを強化しながらキャラクターの背景を描く物語を進めていくのだ。また、本作はローグライク要素のある作品でもあり、死ぬと最初からやり直し。さまざまなランダム要素も導入されている。
本作は、Steamにて昨年11月15日に早期アクセス配信が開始。現時点で約2500件のユーザーレビューが投じられ、その90%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得している。また、配信開始から24時間で1万本を売り上げたそうで、売れ行きも好調のようだ。
開発者のJordy Lakiere氏は、『Divinity』シリーズなどで知られるLarian Studiosにてアーティストのインターンとして働いたのち、フリーランスとして活動。本作は、コンセプトアーティストの先生としての仕事をしながら、これまで7年をかけて開発してきたのだという。当初は、マルチプレイのMOBA作品を計画していたが、『Mount & Blade: Warband』のバトルメカニクスを研究するなかで、現在のシングルプレイの剣闘士ローグライトアクションへと舵を切ったそうだ。
Lakiere氏は、剣闘士というのはゲームにおいて過小評価されがちなテーマではあると語る。ただ、限定された空間である闘技場といくつかのキャリアマネジメントによって、バトルメカニクスを探求するというシンプルなゲームサイクルを表現でき、これはローグライク要素との大きなシナジー効果を生むことに繋がったそうだ。こうしたゲームデザインに対する柔軟さや、フックとなる要素への思慮深さは、開発において大事とのこと。
また、「栄光を掴むか、死んですべてを失うか」という緊張感ある剣闘士の戦いは、実況配信者およびその視聴者にウケる要素であるとし、あらかじめ意識して開発されたそうだ。本作には、物理演算によるゲームプレイを含め、プレイヤーや視聴者の感情を揺さぶるさまざまな要素があり、カメラも観客目線を意識したアングルが採用されているという。実際本作は、YouTubeなどで人気の配信コンテンツとなっている。
本作は、個人開発らしからぬクオリティである点も特徴的。GameDiscoverCoは、アーティストがプログラミングを学んでひとりで開発し、成功を得た作品は稀だと指摘する。Lakiere氏は、ほとんどの時間をプログラミングの学習に費やしながら開発してきたそうだ。
そのなかで、あえて手を抜く部分と作り込む部分を切り分けて、ワークフローを高速化することに努めているという。たとえば3Dモデルの多くは低品質で、テクスチャの再利用も多い。Lakiere氏は、本職の人に怒られるような手法であると語る。一方で、素材やポストプロセス、構成、ライティングの開発には多くの時間を費やしているとのこと。
素材については、ローマ時代の環境を表現する3Dアセットパックを購入した以外は、すべてLakiere氏自ら制作しているという。本作を自身のアート作品として手作りしたい思いがあるためだそうで、このあたりはアーティストとしてのこだわりかもしれない。
インタビューではこのほか、Steamの体験版配信イベントNextフェスなどを通じてウィッシュリスト数を伸ばしていったことや、現時点の収益の半分以上が米国からとなっていること、また返品率や平均プレイ時間などの数字も公開されている。興味のある方はチェックしてみてはいかがだろうか。
『We Who Are About To Die』は、PC(Steam)向けに早期アクセス配信中。直近の今後の予定については、バグ修正やパフォーマンスの改善、ゲームエンジンのバージョンアップに伴うテスト、Steam Deckへの対応などを計画。また、これまで個人で開発してきたが、今後スタッフを雇うことも検討しているところだそうだ。