『マリオカート8 デラックス』の”アイテムスイッチ”実装が遅いとの不満に、無関係の個人開発者が反論。新機能開発は難しい

任天堂は12月7日、『マリオカート8 デラックス』の更新データVer.2.2.0の配信を開始した。同アプデで実装されたアイテムスイッチの実装が遅いとするユーザーもおり、そうした意見への反論もなされている。

任天堂は12月7日、『マリオカート8 デラックス』の更新データVer.2.2.0の配信を開始した。内容としては、有料追加コンテンツ「コース追加パス」の第3弾に対応。また仕様変更として、「アイテムスイッチ」の追加、および滑空中のプレイヤーにサンダーを落とした場合の仕様変更(いわゆる「落とサン」の廃止)がなされている(関連記事)。


今回のアップデートの目玉は、新機能「アイテムスイッチ」だ。レース中にアイテムボックスから出現するアイテムについて、種類ごとに出現する/しないの設定が可能になった。苦手なアイテムをOFFにしたり、「トゲゾーこうら」「キラー」といった強力なアイテムのみが出現する波乱のレースが楽しめたりと、プレイヤーからは肯定的に受け止められているようだ。

好評のアイテムスイッチだが、一部のプレイヤーからは不満も出ている。「なぜこの機能はローンチ当初から実装されていなかったのか?」という点だ。『マリオカート8 デラックス』は、2017年4月に発売されたタイトル。リリース以降、5年に渡って調整やコース追加を重ねてきた。今回追加された「アイテムのON/OFF機能」は、その開発に年単位の時間が必要なものには思えない。アイテムスイッチという機能は好評なものの、より早い段階で実装されてほしかったという不満の声があるようだ。あわせて、アイテムスイッチの実装に発売から相当の時間を要した理由についても疑問が投げかけられている。

ではなぜ、アイテムスイッチはローンチ当初から実装されていなかったのだろうか。この疑問に、インディーゲーム開発者のMuno氏が自身のTwitter上で私見を述べている。Muno氏の指摘は大きく分けてふたつだ。ひとつは、一見シンプルそうなアイテムスイッチ機能だが、その設計は決して簡単ではないこと。そしてもうひとつとして、ゲーム開発におけるアイテムスイッチの優先度の低さについて論じている。

Muno氏はまず、「新しいメニューやUXには、まず設計のプロセスが必要」と指摘。実現したい内容(ここではアイテムスイッチ)については、事前にその外観や予算を検討するプロセスが発生すると述べている。アイテムスイッチの設定画面ひとつをとっても、プレイヤーが使いやすく、ナビゲーションが適切に機能していることを確認しながら設計する必要があるのだ。

設計面においては、『マリオカート8 デラックス』のアイテム出現の仕様も検討する必要がありそうだ。同作では、順位が低く不利なプレイヤーほど、レースに大きく影響する強力なアイテムが出やすいとされている。この順位によるアイテム出現の傾向があるとすれば、新たにアイテムスイッチを実現するうえでもそれを考慮する必要があるのだ。例としては、特定の順位で出る可能性のあるアイテムを、アイテムスイッチですべてOFFに設定した場合などが考えられそうだ。

Muno氏は比較として、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズを例に挙げている。ハンデ戦などカスタマイズ性の高さが魅力のひとつである『スマブラ』が当初からアイテムスイッチ機能を採用しているのに比べ、すでに順位に応じたアイテムテーブルを持つ『マリオカート8 デラックス』におけるアイテムスイッチは、設計面のハードルがより高いという。


これら設計上の課題とは別に、Muno氏は「ゲーム開発作業における優先事項」についても述べている。ゲーム開発においては、限られた予算と時間の中で、徹底的に無駄な作業を省く必要がある。中でも本作において、Muno氏は「通常のアイテム機能は、ほとんどのプレイヤーのニーズを満たしていた」と指摘。ゲームのコアであるレース機能や、コース追加といった作業に比べて、アイテムスイッチの実装は優先度が低かったのだろうと推測している。その優先度の低さゆえに、アイテムスイッチの実装はローンチではなく今回のアップデートに含まれるかたちになったというのだ。

こうした設計上の課題および優先度の低さから、「アイテムスイッチ」はこのたびのアップデートでようやく実装できたのでは、というのがMuno氏の推測だ。もちろん、Muno氏は『マリオカート8 デラックス』の開発に携わった人物ではない。しかしながら、「なぜアイテムスイッチの実装に5年もかかったの?」というプレイヤーの素朴な疑問に、開発者として一つの見解を示したかたちだ。プレイヤーには見えづらいゲーム開発の苦労を知る上での、ひとつの参考情報になるだろう。

記事執筆時点で世界売り上げ4841万本を達成し、なお売り上げを伸ばし続ける『マリオカート8 デラックス』。一見小さな調整や機能追加も、本作のゲーム寿命に貢献するかもしれない。

Aya Furukawa
Aya Furukawa

主にニュースを担当。ビジュアルや世界観にこだわりのあるゲームが好きです。

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