『マインクラフト』で現代日本を再現するプロジェクト「味噌汁市」。航空写真のようなスクリーンショットが話題に

 

一枚の航空写真がTwitterで注目を集めている。「味噌汁市 Misosiru City」というアカウントが投稿した画像。一見日本の市街地を映した航空写真のようだが、なんと『マインクラフト』のワールドだ。

味噌汁市は架空の日本の都市を『マインクラフト』上に再現するプロジェクト。話題の画像は、そのプロジェクトの一部を収めたスクリーンショットだ。画像を拡大すると、『マインクラフト』の世界であるかもしれないことが、かろうじてわかる。屋根や川に注目すると、たしかにキューブ状のブロックで構成されている。そして、画像をよく見るとさらに気づくことがある。いわゆるバニラ(標準)のブロックで作っているであろうということだ。バニラのブロックで作られているという点は、このプロジェクトの特筆すべき点のひとつだ。

『マインクラフト』の構造物は基本的に近代の世界観に準拠しているため、このような現代的な日本の街並みを作るのは難しい。とはいえJava版には、リソースパックと言って、ブロックなどの見た目を変えるインターフェイスがある。豊富な種類が有志により用意されていて、中にはブロックをモダンな雰囲気のテクスチャーに変更することのできるものもある。そのようなリソースパックを使えば、ブロックベースの世界も現代風に見せることが可能だ。しかしこの味噌汁市では、画像から見える範囲では、現代風のリソースパックを使わずに、バニラのブロックで街を再現しているように見える。屋根や外壁をよくよく見ると、おなじみの板材や石材が中心なのだ。少なくとも大きく見た目を変更してはいない。地道な作業の積み重ねによって生まれているのだろう。

同プロジェクトは今年2月にも話題となっていた。その時には横向きの画像だったが、今回は縦長に近い比率の画像で投稿されている。風景に奥行きが出て、カメラアングルも高くなったことで、建物がより小さく見えるようになり、『マインクラフト』のスクリーンショットだとは気づきにくくなっているようだ。また空が映っていないことも『マインクラフト』ワールドか現実か判断しにくくしている。なお二つの画像は映っているエリアが別のようである。味噌汁市は画角外にも広がる広大な面積を有しているようだ。

「味噌汁市」は複数名でおこなっているプロジェクトだ。ハッシュタグ「#味噌汁市」で検索すると、各メンバーが建てた建物を間近で見られる。近くで見ると本当に『マインクラフト』の世界であることが、そしておそらくバニラのブロックの範囲内で再現しているであろうことが、実感できる。たとえば味噌汁市の代表を務めるmomo氏は、とある牛丼チェーンの店舗を建築している。

特徴的なオレンジ色の看板においては「赤い砂岩」や「橙色の色付きガラス」、「橙色の羊毛」を使って細かなグラデーションを表現している。また、既存のブロックを、現代日本の街並みを演出する小道具に見立てる技術にも驚く。飲食チェーン店ではおなじみの、期間限定フェアを告知するポスター。これは旗で表現されている。『マインクラフト』では旗織り機と染料を使うことで旗に模様をつけることが可能。どうやら旗に、赤色の染料でレンガの模様を、緑色で縁取りを付与しているようだ。飲食店のポスターの無秩序な情報量がうまく再現されている。ほかにも今年2月の投稿では、点字ブロックを「シラカバの板材」の木目のテクスチャーで表すなど、日常風景への観察眼がさえ渡っている。

建物一軒一軒のリアリティもさることながら、話題になっている画像を見たとき、あらためて遠景としてのリアルさに注目してしまう。マンションの下に設けられた申し訳程度の公園や、住宅地に突如現れる寺院など、現代日本のアーバンデザインが忠実に再現されている。余談だが、筆者の実家と同じマンションらしきマークもあり、なぜか『マインクラフト』のスクリーンショットでホームシックになってしまった。まさに味噌汁のような、ありのままの日常の味が出ている。

なお味噌汁市以外にも同様のプロジェクトはある。2014年から始まっている佐山県や、富栄市など、架空の都市名で日本の市街地を再現するプロジェクトは、一つの界隈を形成しているようだ。もはや建築というより都市計画に近い。Twitterでは、それぞれがハッシュタグをつけて、街の発展の様子や存在する施設を紹介している。それらの街並みを見ていると、不思議と、存在しないはずの土地の歴史を感じてしまいそうだ。

味噌汁市は製作員を募集している。初心者歓迎で指導研修もあるとのことだが、「向上心、やる気のある方お待ちしております」と述べている。積極的にかかわれる人は応募してみてはいかがだろうか。



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