ある海外個人開発者がUnityで「現代日本の街VR」を制作中。ありふれた街を作りこむこだわり、看板の日本語もバッチリ
Unityで現代日本の街並みを再現した動画が注目を集めている。建築物や道路、街路樹に至るまで、「きっと日本のどこかにこのような町があるのだろう」と思わせるだけの説得力がある映像だ。これはある個人開発者が開発中のVR向けデモの映像だという。いったいどのようにして作られたのだろうか。
この動画を投稿したのは、アメリカのシカゴ在住の3DアーティストのSherman Waffle氏。Unity上でさまざまな空間表現を製作している人物だ。冒頭の動画は、Waffle氏自身が制作・販売している「JAPANESE CITY」のアセットを使用した開発中のVRデモの映像とのこと。「JAPANESE CITY」は、日本の市街地を表現するためのさまざまなパーツを収録したモジュール形式のアセットだ。このアセットには建築物用の壁や窓、歩道や電柱、さらには室外機や配管といった細かいものに至るまで、街並みを構成するさまざまな要素が用意されている。このVR向けデモの映像には、街の雰囲気を作りこむための大量のオブジェクトや質感表現が用いられているのだ。
この現代日本の街並みの映像について、その再現性もさることながら、街中の看板にも注目したい。店の名前やアルバイト募集といった文字情報が、街の様子を印象付ける要素として機能している。アセットに登場する日本語は、VTuberの霧笛ノト氏が監修しているとのこと。霧笛ノト氏自身もインディーゲーム開発者として、現在は幽霊に”やり返せる”ホラーゲーム『近畿霊務局』を開発中の人物だ(関連記事)。監修前と後を見比べると、確かに看板の文言やフォントがより自然なものへと調整されている。日本人ユーザーにも違和感を感じにくい表現になっており、こうした調整が没入感を高めるための工夫になっているのだ。
Waffle氏は「JAPANESE CITY」のほかにも、九龍城砦を再現したアセットを製作・販売している。九龍城砦といえば、香港の九龍城地区に存在していた居住区だ。増築を繰り返したいびつな建築と、暗く複雑な内部構造から「東洋の魔窟」の異名を持つ。Waffle氏はこの九龍城砦を再現したアセットについても、Unityでレンダリングした動画を投稿している。薄暗い路地の先には怪しげな空間が広がっており、こちらも雰囲気たっぷりだ。イギリスのゲームアーティストメディアGamesArtistに語ったところによると、Waffle氏は現代建築に強い関心を持っているとのこと。そうした彼のこだわりが、アセット作りに活かされているのだろう。
先述の通り、この現代日本の街並みを再現したVR向けデモは現在開発中だ。Waffle氏は動画への反応に対し、VRデモの公開を検討していると述べている。限りなくそれらしく、しかし実在しない街をVRで散策できる日も近いかもしれない。なお、「JAPANESE CITY」アセットは、Unity Asset Storeにて販売中だ。
※ The English version of this article is available here