あるNintendo Switch向けゲームがアルゼンチンにて大量購入される。“国間価格差悪用”と、思わぬ“副作用”

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ゲームの価格は、現地の物価や為替レートにより、ある国での価格は別の国からするとかなり安く見えることがある。そのため、たとえばSteamでは、居住地を偽ってゲームを不当に安く購入するユーザーが後を絶たないという。そしてあるパブリッシャーによると、同様の問題はNintendo Switchのニンテンドーeショップでも発生しているようだ。ただ同時に、同パブリッシャーにおいては思わぬ副作用も確認されたという。

パブリッシャーNo More Robotsの代表Mike Rose氏は10月13日、動物園運営シミュレーションゲーム『Let’s Build a Zoo』のNintendo Switch版をリリースした際のエピソードを紹介した。本作はSpringloadedが開発し、昨年11月にPC版がリリースされ高い評価を獲得。そして今年9月29日に、Xbox One/Xbox Series X|Sおよび海外Nintendo Switch/PS4/PS5向けにも配信された。

本作のNintendo Switch版は、リリース1週間前の9月22日から予約受け付けを開始。すると、初日から非常に多くの予約購入者が押し寄せたそうだ。そしてRose氏が国別の予約数を調べたところ、実に全体の85%がアルゼンチンからの予約購入だったという。同氏は何が起きたのかをすぐに察知し、頭を抱えることになる。


予約購入の85%がひとつの国からというのは明らかに異常であり、本稿冒頭で述べたようなゲームの国ごとの価格差が悪用された疑いが濃厚だ。すなわち、アルゼンチン以外の国に居住する数多くのゲーマーが、Nintendo Switchの地域設定を変更しアルゼンチンのニンテンドーeショップにアクセスして、本作を不当に安く購入した可能性が高い。

ちなみに、本作の米国での価格は19.99ドル(約2900円)で、アルゼンチンでの価格は224.99ペソ(約220円)である。日本円に換算すると10倍以上の開きがある。Rose氏によると、アルゼンチンで本作が1本売れた場合、1ドル(約147円)未満の収益しか得られないという。なお、ニンテンドーeショップでの国ごとの価格設定は、任天堂がメーカーに推奨値を提供しており、No More Robotsではそれを採用したとのこと。

価格差を悪用した予約購入者のうちの一部でも正規に自らの国で本作を購入していたらと考えると、そうした不当な行為によって同パブリッシャーは潜在的な収益を大きく失ったかたちになる。Rose氏は、予約開始から24時間経ってもどう対処すべきか分からず、一方でアルゼンチンでの価格を変更することはしたくないと考えていたそうだ。他国からは格安に見えても、アルゼンチンで暮らすゲーマーにとっては、それが適正価格だからという配慮だろう。

結局Rose氏は、アルゼンチンでの状況について特に対策は取れずにいたようだ。ただ予約開始2日目になって、同氏は奇妙な現象に気がつくことになる。米国のニンテンドーeショップの売上本数ランキングにて、『Let’s Build a Zoo』が急上昇したのだそうだ。100位以上ジャンプアップし、一気にトップ100位圏内に入ったとのこと。

何が起きたのかというと、アルゼンチンで多数の予約購入がおこなわれた影響が、米国ニンテンドーeショップの売上ランキングにも反映されたのだ。それでRose氏は、米国の売上ランキングは米国内の売上本数だけをカウントしているのではなく、北南米の国すべてが対象となっていることに気づいたそうだ。

これによって本作は、通常では考えられなかったほど高い露出を米国内で獲得。さらに、好調な売れ行きが任天堂の目に留まったのか、欧州や豪州のニンテンドーeショップでも、本作が目立つ場所でアピールされることになったという。結果的に、それらの地域でも高い露出を得ることとなり、普段よりも多くのセールスに結びついたとのこと。

Mike Rose氏は『Let’s Build a Zoo』のコンソール版のローンチを迎えてから1週間後、本作のさまざまな成績を公開している。それによると、コンソール版全体で100万ドル(約1億4700万円)の収益を上げ、Nintendo SwitchではNo More Robotsとして過去最高のローンチになったそうだ。

本作は、すでにPC版にて高い評価を得ていた人気作という前提は無視できないものの、もしかすると上述したアルゼンチンでの価格に他国ユーザーが殺到したこと、およびその“副作用”としての露出が欧米に及んだことが、Nintendo Switch版の大きな成功に繋がったのかもしれない。

とはいえRose氏は、容易に地域設定を変更し他国にて低価格で購入できてしまう仕様については、Nintendo Switchを含め各プラットフォームは早急に対処すべきだとしている。先述したように、国ごとの価格の違いを悪用するユーザーはSteamなどでも確認されており、開発者は頭を悩ませている(関連記事)。

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