Discordに作られた『VALORANT』『Apex Legends』合コンサーバーが突如消失。出会いという難しいトピック
『VALORANT』や『Apex Legends』での出会いを求めて設立されたというDiscordサーバーが、9月28日に削除された。“合コンサーバー”という少々センセーショナルな名称もあってか、Twitterでトレンド入りしていた。
設立からの流れ
今回話題に上がったのは、「VALORANT APEX合コンサーバー」という名称のDiscord上のサーバーだ。本サーバーは9月26日には既に存在していたようだ。運営者がメンバーを募集するツイートでは、「彼氏彼女つくったり、フルパ募集できたり」という文言が記された画像が添付されていた。『VALORANT』や『Apex Legends』などのゲームプレイを目的としつつも、男女の出会いを求める場であるということは明白だろう。画像の配色や火の玉のようなマークも、マッチングアプリを彷彿とさせるようなデザインとなっていた。
Discordサーバーの設立以降、「VALORANT APEX合コンサーバー」のメンバー数は次第に増えていく。9月27日の19時には3000人を超え、さらにメンバー数は増加。1時間後には5000人を超え、どんどん規模を拡大。参加者たちのSNSを見ると、他者との交流を純粋に楽しんでいる様子が確認できる。
しかしながら、増加したメンバーの中には出会いを求めていない興味本位でやってきた人々や、いわゆる荒らしも混ざっていたようだ。多くの人が加わったことで、「VALORANT APEX合コンサーバー」は混沌となっていく。そんな状況の中、サーバーの方針にそぐわない発言や迷惑行為をおこなっていたユーザーが、運営によって次々にBANされたと報告。また、そんな合コンサーバーの内情を紹介する人々も現れた。
瞬間的に多くの人に知られたことで、「VALORANT APEX合コンサーバー」は9月28日にTwitterのトレンド入りを果たす。しかし、同日15時頃、サーバーの方針が一転。18歳未満の利用が禁止となったほか、「出会い系サイトではない」と前置きした上で、異性に対して交際を求める行為が禁止された(削除される前の管理者のTwitterアカウントキャッシュ)。サーバーの用途はゲームのフルパーティ募集と、雑談募集のみとなり、至って普通のゲーム向けのサーバーとなったわけだ。
また、サーバー名も「FPSなど ゲーム 合コン(ペテティブ)サーバー」に変更される。合コンと『VALORANT』のランクマッチにあたるコンペティティブモードをかけた名称と思われる。しかし、前述したとおり同サーバーでは出会い行為は禁止されている。それにも関わらず合コンという言葉が残されていることに、参加メンバーたちは疑問を抱き、急な方針の変更にSNSなどで不満を示す。
そして、同日17時頃にサーバーが削除された。さらに、運営をしていた人物のTwitterアカウントも削除されることになる。本稿執筆時点では削除された理由は明らかになっていない。
魑魅魍魎の合コンサーバー
では、「VALORANT APEX合コンサーバー」はどんな内容だったのか。参加していたというユーザーたちの反応を見る限り、各々がボイスチャンネルを立て、『VALORANT』や『Apex Legends』、それ以外にも『ガンダムエボリューション』や『スプラトゥーン3』『雀魂』など、純粋にゲームと会話を楽しむ人々もいたようだ。しかし街コンなどによく見られる、出会いの場の男女比が男性側に傾く傾向はここでも同様で、数少ない女性に多くの男性が集まる形だったという。人が集まり過ぎて会話もままならないボイスチャットもあったようだ。過激なチャットも投稿されるなど、悪ノリを繰り返すユーザーも多いようだった。だが、コミュニケーションの場としては機能していたとのこと。ちなみに実際に出会えたのか、肝心な部分については定かではない。
混沌とした盛り上がりを見せた「VALORANT APEX合コンサーバー」は、前述のとおり削除された。運営者は募集の際に「人が増えすぎたら締め切る」と発言していた。どれほどの参加人数を想定していたのかは定かではないが、参加者が数千人にまで増え、手に負えずに削除した可能性もある。また、後からルールに18歳未満の利用禁止や “出会いNG”を加えたり、それにも関わらずに合コンというワードをサーバー名に残したりと、運営方針が定まっていなかったものと見られる。
事の発端としては、ゲームを一緒に遊ぶ仲間が欲しい、という思いがきっかけとなり同サーバーを作成したと、運営者は語っていた。しかし、「出会い」を趣旨とするコミュニティを運営するにあたっては、準備や管理が足りなかったことは否めない。
ちなみにDiscordではコミュニティガイドラインが明示されている。これには他人への嫌がらせやヘイトスピーチ、脅迫の禁止といったことに加えて、児童を性的被害から守るための事項も含まれている。これらのことから、男女の出会いを取り扱うということのリスクの高さがわかるだろう。参加者の中には18歳未満と見られるユーザーも多く見られ、そのまま野放しにされていればより大きなトラブルに発展していた可能性がある。出会う場を作るのは簡単だが、出会う場を管理するには責任が伴うのである。
出会いが悪いわけではない
今回は出会いを介した手法が問題視された事例である。ただしゲームを通して交際、結婚に至るということそのものが問題なのではない。ゲームを正しくプレイし、その中で出会って交際に至るケースも昨今珍しくない。『ファイナルファンタジーXIV』では開発・運営チーム監修のもと、ゲーム内の結婚システムであるエターナルバンドをモチーフにした現実の結婚式をプロデュースした実績もある。今回のケースはネットやゲームを介して恋愛を始めようとしたことではなく、合コンと称する倫理観やそのプロセスが問題だったのだろう。
ちなみに「VALORANT APEX合コンサーバー」は削除されたが、新たな合コンサーバーが設立されている。新たな運営者が元々の運営者と同一人物かは不明である。また、合コンサーバーが話題になったことで、『League of Legends』など、別のゲームの合コンサーバーも設立されている。どのようなサーバーを立てるかは個人の自由であるが、これらのサーバー管理者が、先例から学びさまざまなリスクを考慮したマネジメントをすることを願うばかりである。
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