『スプラトゥーン3』ヒーローモードのポエムにハマる人続出。洗練された恥ずかしさ、元ネタありそうな素敵ポエム

『スプラトゥーン3』に“マンションポエム要素”が存在していると、一部ユーザーたちが指摘しているようだ。しかもやたらと完成度が高いのだ。

スプラトゥーン3』に“マンションポエム要素”が存在していると、一部ユーザーたちが指摘しているようだ。ヒーローモードに据えられたあのポエムたちは、おそらくであるがマンションポエムが元ネタになっていると見られる。しかもやたらと完成度が高いのだ。


『スプラトゥーン3』のヒーローモードは、さまざまなステージをこなすモードとなっている。クリアするには膨大な数のステージを踏破していくことになるだろう。その中で注目されているのが「ステージ名」だ。本作同モードの各ステージ名は、やたらとポエミーなのである。

具体的にステージ名を見ていこう。序盤の名前だけ見ても「小鳥が集う、憩いの場をあなたに。」「驚きをまとう、建築の美学。」「扉を開けた先で、真の上質に出会う。」など、火力強めだ。キャッチーで爽やかでありながら、どことなく恥ずかしいという感情を呼び起こすだろう。このステージ名群にハマる人がSNSなどで散見されるのである。またこれらのステージ名はステージ内容と完全に一致しているかというと、そうでもなかったりもする。一体このポエムはなんなのか。


あくまで推測であるが、これらの元ネタはマンションポエムだろう。マンションポエムとは不動産広告などで見られるキャッチコピーの俗称だ。マンションなどの広告に、独特のキャッチコピーがつけられるケースがあり、そうしたコピーはマンションポエムと呼ばれている。街などで爽やかなマンション画像にキザなコピーが添えられた広告画像を見たことがあるだろう。あれがマンションポエムである。なおマンションポエムが生まれる理由としては、不動産関係の宣伝は規制が多く、限られたキーワードの中で目を引く文言を作る必要があるといった背景が指摘されている(リビンマガジンBiz)。

マンションポエムをテーマとしたカードゲーム「ザ・ポエティックマンション」紹介ページより


そのマンションポエムのスタイルがなぜか『スプラトゥーン3』のヒーローモードのステージ名に使われている可能性が高い。前述のステージ名「小鳥が集う、憩いの場をあなたに。」「驚きをまとう、建築の美学。」「扉を開けた先で、真の上質に出会う。」などは、的確にマンションポエムのフォームに沿っているほか、ステージ名には全般的に建築系のキーワードが多いのだ。たとえば「オルタナの高層を住みこなす、その贅沢。」というステージでは、高い場所に移動する要素はあるものの仰々しい。微妙にステージ名とリンクしておらず、明らかに「言いたいだけ」感が漂う。こうしたキャッチコピーありきのステージ名がやたらたくさん出てくるのだ。


一方で、前作『スプラトゥーン2』のステージ名は序盤から割とオーソドックス。「タコリゾートへようこそ # 登ってアゲて夏の庭」「ゆうやけのタコプター # 飛び出せ青春 ダッシュ&ジャンプ」といったステージ名。ステージ名とハッシュタグを組み合わせており、ダジャレ要素もあり。ややポエミーであるがクセのないキャッチーなスタイルだ。『スプラトゥーン』シリーズでのステージ名はどの作品でも工夫が凝らされており、『スプラトゥーン3』になりポエムスタイルが採用されたようだ。ネット上でも『スプラトゥーン3』のヒーローモードに盛り込まれたマンションポエム要素を指摘する人は多くいるようだ。またこうした魅力に取り憑かれているようにも見える。とあるユーザーは、「スプラトゥーン3のステージ名か、マンションポエムか」の2択クイズを生み出している。このクイズは問題としても完成度が高く、なかなか手ごわい点も面白い。


マンションポエムとはある種のネットミームであり、任天堂の人気タイトルに盛り込む要素としてはやや前衛的といえなくもない。しかしながら、『スプラトゥーン』シリーズはアートワークが魅力の作品で、本作でも惜しげもなくアーティストたちのセンスが発揮されている。ステージクリア時のモノクロに映るオシャレなイカたちを確認し、そこに添えられたマンションポエムを見れば、ポエムを見たことで呼び起こされる羞恥心もアートワークのクールさに屈服・調和させられることだろう。『スプラトゥーン3』のおしゃれ力、恐るべし。


なお英語版でのステージ名はどうなっているかというと、マンションポエムの面影はなくなっている模様。たとえば「扉を開けた先で、真の上質に出会う」は「Door, Doors, Doors! And More! (Doors) 」。「驚きをまとう、建築の美学。」は「Splat you on the Flip Side」となっている。さすがにマンションポエムの文脈は英語では表現できなかったのか、別のベクトルのローカライズになったようだ。むしろこちらのほうがステージ内容に忠実ではある。マンションポエムとは無縁となったが、ローカライズに定評のある米任天堂らしい洒落た言い回しにはなっているだろう。

そんな素敵なポエムが耳を駆け抜けていくゲーム。唯一無二の体験。Nintendo Switchを携えて『スプラトゥーン3』を始めよう。騒がしくも眩しいバンカラ街は、あなたの情熱(パッション)との融合を待っている。



※ The English version of this article is available here

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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