『Grand Theft Auto』(以下GTA)シリーズの初期開発者の一人Mike Dailly氏が、自身のYouTubeチャンネルにシリーズ一作目のプロトタイプ映像を公開したところ、Rockstar Gamesにより著作権侵害の申し立てを受けたようだ。海外メディアVGCが伝えている。
『GTA』シリーズはRockstar Gamesから発売されている、シリーズ累計売上3億7500万本を超えるオープンワールドクライムアクションゲームだ。Mike Dailly氏は、『GTA』シリーズの開発を手がけるRockstar Northの前身であるDMA Designの創業者の一人であり、『GTA』シリーズ初期の開発やパズルアクション『レミングス』の開発に携わっていた人物である。
そんなDailly氏が8月21日、自身のTwitterに、YouTubeに投稿した『GTA』のプロトタイプ映像がRockstar Gamesにより著作権侵害を申し立てられた旨を報告した。自身が投稿した映像を含めた『GTA』に関する映像が著作権侵害を申し立てられていることに対して、“I see Rockstar are going full fuckers mode again”(Rockstar Gamesがまたまた愚か者全開モードになっているようだ)と苛立つ様子を見せた。同氏は、Rockstar Gamesがゲームに携わる人が開発の途上で制作した作品や古い開発の映像の公開をすべて封じようとしているとし、批判的な姿勢を見せている。
YouTubeに投稿されていたのは、1997年に発売されたシリーズ一作目に関するプロトタイプ映像だ。今回問題となったのは2本の動画で、真上から街の初期デザインを見下ろした映像と斜めの視点から街を写した映像。前者の映像が作成されたのは1994年の後半のようだ。シリーズ一作目のいわゆる『GTA1』は、現在のような三人称視点の3Dオープンワールドゲームではなく、真上から見下ろした視点の2Dで車やキャラクターを操作する形式であった。同作のプロトタイプムービーということで、シリーズの開発初期を感じられる映像であったが、現在はDailly氏のYouTubeチャンネルから削除されている。
その後もDailly氏の感情は止まらないようで、『GTA』の開発に関連する映像はすべて自身のYouTubeチャンネルから削除し、作品内では使われていないもののシリーズの進化にインスピレーションを与えた自身の作品だけを残すと投稿。また投稿の末には“You can thank Rocksuck.(ロックスターならぬロックソスターに感謝するといい)”と添え、Rockstar Gamesをもじって揶揄している。また、「二度と日の目を見ることのない10ページの『GTA』のデザイン書類」という文言とともにデザインに関する書類の表紙も投稿しており、今回の一件への悲哀をアピールしている。
Dailly氏のYouTubeチャンネルには、自身が制作したゲームに関連する動画やDMA Designのオフィスの様子がアップされており、収益獲得のためというよりはゲーム開発の足跡をファンや後進に向けて残すために動画を投稿しているように見受けられる。
とはいえ、Rockstar Gamesとしても大事な自社シリーズIPの資料を無断でYouTubeに投稿されることを看過することはできないだろう。『GTA』に関する資料はあくまでRockstar Gamesに権利がある。一方でこうした資料は歴史的な価値もある。今回削除されてしまった動画をはじめとして、Rockstar Gamesからシリーズの開発の軌跡が正式な資料として公開されることを願いたい。
なおRockstar Gamesは今年2月、『GTA』シリーズの新作を開発中であることを正式に発表している(関連記事)。こちらも楽しみにしたいところだ。