『Dead by Daylight』新環境でキラーは本当に有利になったのか。大規模アップデート後の現状から読み解く環境の変化

Behaviour Interactiveは7月20日、『Dead by Daylight』の6.1.0のアップデートを配信した。新作のよう表現されるほどの大規模なバランス調整が実施。変化した環境には、さっそく賛否の声が上がっている。

Behaviour Interactiveは7月20日、『Dead by Daylight』の6.1.0のアップデートを配信した。その後本作では、変化した環境にさっそく賛否の声が上がっている。内容としては、育成システムリワーク、ゲームシステムと40個のパークに調整の手が入った。一部のプレイヤーから“DbD2”、すなわち新作のよう表現されるほどの大規模なバランス調整がおこなわれた結果、かつてない環境の変化が起きているようだ。

アップデート直後、新環境を体験したプレイヤーの感想がSNSで続々と投稿されていった。アップデート前の段階では「キラーに不利な調整なのではないか」という声も散見されたものの、実際には「キラー有利」というワードがTwitterでトレンド入り。しかし「いわれているほどキラー有利な環境ではない」という反論を中心にして、新環境の評価は大きく二分。プレイヤーの間でしばし議論を生むことになった。では実際のところ、新環境はどのような変化を遂げたのか。いくつかの項目を分析してみると、これまでの環境と明確に異なる点が浮かび上がってきた。


ゲームシステム調整の影響

まず注目しておきたいのは、発電機の修理完了までにかかる時間が80秒から90秒へと変更されたことにより、1マッチあたりのプレイ時間が伸びたという点だ。10秒だけではあまり変化がないように感じるかもしれない。しかし実際には、発電機を5台修理するのにかかる時間が従来より50秒伸びる計算になる。そしてキラーが発電機を破壊した際には、即座に修理進行度が2.5%失われるようになった。こうした変更によりサバイバー側は、明らかに従来よりも発電機の修理に要する時間が増えているのだ。

同時にキラー側は発電機やパレットの破壊、通常攻撃を当てた際のクールダウンといった、チェイスにおける各種アクション所要時間が10%ほど短縮されている。サバイバーのチェイスに関する強力なパークが調整された影響もあいまって、サバイバーが以前よりもキラーから逃げ続ける時間を稼ぎづらくなった。その結果、発電機修理の進捗が遅れて、試合進行のテンポも遅くなる傾向にある。これは純粋に、キラーにとって有利な変化といえるだろう。


キラー側で採用されるパークの変化

次に注目したいのは、キラー側のパーク調整についてだ。実装当初からキラーにとって必須と言われることも多いパークであった「呪術:破滅」は、その効果量が半減。さらにサバイバーが1人死亡した時点で、効果が無効化されるようになった。大きく弱体を受けた影響もあって、新環境では採用率が目に見えて減少している状態だ。代わりに台頭してきたのは「イラプション」「海の呼び声」といった、比較的新しいパークだ。「イラプション」については、本アップデートで強化も受けている。

「イラプション」はキラーが発電機を破壊した際に、その発電機が黄色のオーラで強調表示されるようになる。その状態でサバイバーが瀕死になると、強調表示されている発電機すべてが爆発し、進行度が即時10%後退するという効果をもつ。さらには爆発時に修理をしていたサバイバーに強制的に叫び声を上げさせ、最大で25秒間の行動不能ステータスを付与する。30秒というクールダウンが設けられているものの、このパークだけで索敵、妨害、遅延のすべてをおこなえる、非常に強力なパークとなっている。今回のバランス調整ではほかの強力なパークが軒並み下方修正されている中で、効果量が引き上がった結果、その汎用性と総合力の高さからもっとも注目を浴びているパークだ。

「海の呼び声」はキラーが発電機を破壊した際に60秒間、最大で通常の200%の速度で、発電機の進行度を後退させる効果をもつ。また、効果発動中は、パーク効果対象となる発電機を修理するサバイバーが、スキルチェックでグッドを達成するたびに通知を受け取る効果もある。こちらも非常に強力な遅延と索敵をおこなえるパークで、似た効果のパークを阻害せずに併用可能な点も評価されている。昔から一定の採用率を誇る「オーバーチャージ」との相性が良いことも注目されている理由のひとつといえる。


以上の理由から、新環境では発電機を蹴ってまわるタイプのキラーは、「イラプション」と「海の呼び声」を併用して採用する傾向にあるようだ。従来の環境では「呪術:破滅」や「イタチが飛び出した」といったパークで発電機の修理を遅延させるのが主流となっていた。しかし新環境ではバランス調整にともなって、かみ合わせが良く、複数の強力な効果をもつパークが脚光を浴びることになった。発電機の遅延を従来以上の効率でおこないながら、索敵効果を併用することで、残された発電機の位置を固めるといったプレイも可能に。発電機をコントロールするという点では、上記のパークと相性の良い「堕落の介入」も引き続き採用されることが多いようだ。

ほかのキラー側パークとしては「死恐怖症」「ずさんな肉屋」「悶絶のフック:苦痛という名の賜り物」などが採用されやすい傾向にあるようだ。これらのパークに共通しているのは、修理速度や治療速度を遅延できるという点。マッチ全体の進行速度が低下した結果、特定の行動速度を低下させる効果をもつパークが、従来よりも価値を上げていることが人気の背景にあると考えられる。

しかし、これまで挙げたパークはどのキラーでも採用できるというわけではない。徒歩キラーでは「野蛮な力」「まやかし」といったパークが引き続き採用されることもあるようだ。また、「死を呼ぶ追跡者」「不協和音」といった索敵系のパークも、相変わらず評価されている。新環境ではキラーそれぞれの能力やスタイルと相性の良いパークを選ぶことがより重要となり、結果として以前よりも採用されるパークの幅が増えている傾向にあるようだ。


サバイバー側で採用されるパークの変化

では、サバイバー側で採用されるパークには、どのような変化があったのか。従来の環境では「セルフケア」「デッド・ハード」「決死の一撃」「与えられた猶予」といったパークの採用率が高かった。しかしこれらのパークが軒並み下方修正を受けたことで、新環境における最適なパークの組み合わせが模索され続けている。特に「デッド・ハード」の効果が大幅に変更され、効果時間が0.5秒まで短くなったのは、サバイバー側に大きな影響を与えているようだ。

これまでチェイス系パークの定番だった「デッド・ハード」だが、その効果時間の短さから、誰でも気軽に使えるパークではなくなった。発動タイミングのミスを恐れ、「全力疾走」「しなやか」「スマートな着地」「打開策」といったパークに切り替えているプレイヤーの姿もしばしば見られる。しかし「デッド・ハード」は依然としてキラーとのチェイスにおいて優秀な効果をもっており、いまだに採用する人も多いようだ。ゲーム配信者のSpider氏がTwitterに投稿している動画では、一新された「デッド・ハード」を有効活用したチェイスを見ることができる。一方で、サバイバーで遊ぶ際、新環境が「デッド・ハード」一択ではなくなったという点において、ゲームとして健全な調整がされたといえるのかもしれない。


また、「決死の一撃」や「与えられた猶予」は下方修正や効果の変更にともなって、採用率が目に見えて減っている。これらのパークの代わりに注目されているのが「オフレコ」だ。「オフレコ」はフックから救出されるか、自力で脱出した際に発動し、最大で80秒間オーラが見えなくなり、うめき声が100%減少する効果をもつ。さらに新環境では上方調整によって、効果時間中は我慢ステータスを得るようになった。いわゆるトンネル対策として、80秒という非常に長い効果時間をもつ「オフレコ」の採用率が急増している。「鋼の意思」が下方修正を受けたこともあいまって、効果時間は限定的ながらうめき声を100%減少させられるという点も、評価されている理由のひとつだろう。

一方で「セルフケア」はいまだに根強い採用率をもっているようだ。「セルフケア」は治療速度が大幅に下方修正を受けており、ひとりで治療するのは非常に効率が悪くなっている。それでも採用される理由としては、「死恐怖症」を採用するキラーが増えているという点が挙げられるだろう。しかし「ずさんな肉屋」の影響もあってか、「セルフケア」を採用する場合、治療速度を上げられる「植物学の知識」との同時採用を推奨する意見もあるようだ。

そのほかには、サバイバーがチェイスで稼げる時間が従来よりも短くなった影響もあってか、周囲を把握してより適切な動きをとれるパークを採用するケースが増えている。代表されるのは「絆」「血族」「凍りつく背筋」「アフターケア」といった昔からの定番パークだ。「有能の証明」のように発電機の修理速度を上げられるパークの採用も増えている。新環境におけるゲーム進行速度の低下にともなって、今まで以上に味方と協力する必要が出てきた結果と考えられる。


現環境で採用されているパークの顔ぶれからうかがえるのは、特定の不利な状況を打開できるパークが従来よりも大幅に減った、という点だろう。「決死の一撃」をはじめとする強力なパークは、下方修正を受けただけでなく、マッチ終盤では機能しなくなった。その結果、「特定の効果量を引き上げる」あるいは「特定のものを可視化する」といった、堅実な効果のパークが多く採用されている。キラー側が採用できるパークの幅が増えたのに対して、サバイバー側が採用できるパークの幅が減ってしまったのは、キラーにとって有利な環境になったという見方もできる。


苦境に立たされ続けたキラーの復権

キラーとサバイバーの調整や、現在のパークの流行りを改めて俯瞰してみたい。キラーは制限されたパークも多いものの、新たに台頭した強力なパークも多く、以前より多様性が増したといえる。しかしサバイバーはこれまでできたことの多くが制限され、以前よりもシビアな環境下でプレイしなければならなくなった。トラッパーやレイスのような徒歩キラーにとっては理不尽な負けが減り、良い勝負がしやすくなったというSNS上などでのユーザー意見も多い。一方で以前から勝率が高いとされるナース、プレイグといったキラーにも、新環境追い風の環境となっているようで、“理不尽”とも感じるほどの強さを発揮する場面もあるようだ。

『Dead by Daylight』では、長らくキラーにとって不利な環境が続いてきた。これは多くのプレイヤーにとって定説となっており、キラー人口が少ない要因のひとつとも言われていた。ゆえに今回のキラー有利という言葉に対しては、今までが不利だったのだという意見が多く見受けられる。また、過去の環境下で戦ってきた猛者たちが、磨き上げてきた腕前を今の環境で発揮していることが、キラー有利と言われる原因ではないかという見解を示すユーザーもいるようだ。不利な環境を耐え忍んできたプレイヤーにとっては、その苦労が報われる調整といえるようだ。

なお、今回のバランス調整によって、キラーの人口は大きく増えているのだという。一方で、今回のアップデートでは、役割のプレイヤー人口が偏らないようにする施策として、人数が不足している陣営にBPボーナス(マッチメイキングボーナス)が加算されるようになった。しかし、そうした調整の甲斐なく、新環境ではサバイバーが不足しているという報告もある。この状況には、キラーが戦いやすくなったこと、逆にサバイバーが戦いにくくなったこと、そのどちらも影響していると考えられるだろう。なお、マッチメイキングボーナス機能は現在不具合修正のため、停止されていることが発表されている。

【UPDATE 2022/7/27 12:52】
BPボーナス(マッチメイキングボーナス)についての記述を修正

しかしながら現環境においても、必ずしもキラーが勝てるというわけではない。マッチの内容次第ではひとりも処刑することができず、逃げられてしまうことも相変わらずあるようだ。Twitter上ではキラー有利という噂を聞きつけてプレイしてみたものの、自らの悲しい結果を涙ながらに報告するプレイヤーの姿も見受けられる。漫画家の泉朝樹氏の叫びは、まさにそんなプレイヤーたちの声を代弁しているといえるだろう。


調整された項目は非常に多岐にわたり、今後も新たに強力なパークの組み合わせが発見されたり、定番パークが増えることが予想される。また、現状のバランスに調整の手がくわえられる可能性もあるだろう。しかし、もうしばらくは一新された環境下で、以前よりも凶悪になった殺人鬼が力を見せる期間が続きそうだ。

また『Dead by Daylight』では、今回のアップデートと同時に「進撃の巨人」コラボレーションも開始されている。計10種類の衣装がリリースされており、ゲーム内ストアで販売中だ。

蒼唯レン(VTuber)
蒼唯レン(VTuber)

自分のことをジーニアスだと思い込んでいる物書き系個人VTuber。FF14とドルフロをこよなく愛する特撮オタク。

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