タイピングシム『Mondays: a Sisyphean Typing Game』が、itch.ioで公開中だ。対応プラットフォームはPC(itch.io)で、ブラウザでのプレイに対応。アカウントは不要で、誰でも無料でプレイ可能だ。
『Mondays: a Sisyphean Typing Game』は、ひたすらビジネスメールを打ち込むタイピングシム。ゲームを開始すると、古代ギリシャ風の男性とその身の丈ほどある巨大な岩が表示される。お題の英文を入力するごとに男性が岩を押し上げ、山を登っていく仕組みだ。ひとつでもタイプミスするか、メール1通分の入力に成功すると、男は登ってきた山から岩とともに転がり落ちる。それまでに入力した文字数に応じた給料(コイン)が得られ、アイテムを購入できる。そしてまた最初から山を登り、メールをタイプするのだ。
お題に含まれる大文字・記号・スペースもそれぞれ正しく入力する必要がある。慎重になりすぎて入力の間隔が空いてしまった場合も、男が岩を支えきれなくなり終了。お題が難しい場合は、50コイン支払うことで変更できる。お題の変更にコインが必要になるが、ミスした場合でもそれまでに入力した範囲は給料として入手できるため、難しくて詰むということはない。精神的に辛いという問題は別として。
ショップでは給料のコインで装飾用アイテムを購入できる。しかし、ほとんどのアイテムはなぜか岩の装飾用アイテム。また、仕事のアップグレードを購入すると、より長いメールが出題されるようになる。コインを稼ぐ効率がよくなるのかと思いきや、1字=1コインの基本レートはそのまま。一通のメールが長くなるため、かえって失敗したときのロスが大きくなる。根気強さが求められる。
プレイヤーは企業の従業員であり、入力するお題はビジネスメールの形式に沿った文章だ。「お世話になっております」「全社員へ」に始まり、「敬具 ○○(プレイヤー名)」「iPhoneから送信」といった言葉で結ぶ。しかし肝心の内容は、ビジネスメールと呼ぶにはツッコミどころがあるものが多い。例を挙げれば、「ホッチキスの針を使い切ったので誰か貸してください」のようなメールで連絡するほどでもないもの、難解な単語が並ぶわりに内容の薄いもの、「読んだらこのメールは消去してください」と書かれた怪しいものなど、内容は多岐にわたる。一文字入力するごとに、脱力感に見舞われるようなものが多い。先述の「敬具」のような定型文や名前も同様に一文字ずつ入力する必要がある。タイピングゲームなのだから当然といえば当然だが、日頃メールソフトの自動入力機能にどれほど支えられてきたかが痛感できるところだ。
タイトルの「Sisyphean」とは、「徒労の」「骨折り損の」といった意味。神を欺いた罰として、山の上に岩を運ぶ作業を命じられたギリシャ神話の人物シーシュポス。岩を運んでも、運び終わった途端に岩が山を転げ落ちるため働き続けなければならなかったシーシュポスの神話が、「非効率な重労働」の比喩として使われているのだ。本作では休み明けに大量のメール処理に忙殺される現代のビジネスマンを、シーシュポスと重ね合わせているのだろう。ギリシャ神話をモチーフにしたビジュアルも含め、皮肉とユーモアに溢れた作品だ。
『Mondays: a Sisyphean Typing Game』は、PC向けにitch.ioにて無料で公開中だ。ブラウザで気軽にプレイできるため、興味があれば是非プレイしてみてはいかがだろうか。