Steam無料美術館シミュレーター『Occupy White Walls』正式リリース。自分だけの美術館を作り、世界中の人々と絵画を嗜める究極アート体験

StikiPixelsは7月8日、美術館シミュレーター『Occupy White Walls』をSteam向けに正式リリースした。本作は世界でたった一つの美術館を作ることができるMMO型の美術館シミュレーター。一部ユーザーから注目を集めているようだ。

デベロッパーのStikiPixelsは7月8日、美術館シミュレーター『Occupy White Walls』をSteam向けに正式リリースした。本作は世界でたった一つの美術館を作ることができるMMO型の美術館シミュレーター。多彩なパーツを用いて館内を自由にデザインしたり、実在する美術作品を数多く扱えるというユニークな作風が口コミを呼び、一部ユーザーから注目を集めているようだ。

『Occupy White Walls』は、自分だけの美術館を作ることに主眼を置いたゲームだ。プレイヤーは、豊富な美術作品と建築パーツを用いて、館内および外観を自由にデザインすることができる。購入できる美術作品の数は1万6000点以上で、すべてが実在する作品だ。レオナルド・ダ・ヴィンチのモナ・リザやゴッホのひまわりといった有名作品にくわえ、伊藤若冲の乗興舟といったニッチな作品まで多種多様。ルネサンス時代から現代に至るまでの美術作品を扱っており、その幅広さには驚かされる。

この膨大な数の美術作品は、DAISYと呼ばれる人工知能により管理され、プレイヤー好みの作品が提供される。美術に馴染みのないプレイヤーであっても、気軽にプレイできるように配慮されたシステムだという。また気になる作品を選択すれば、その作品に関する情報や作者のバイオグラフィーを観覧することも可能。まるで美術書のページをめくるようで面白い機能だ。


本作の建築における自由度の高さは、2300以上の建築および装飾パーツの多さが物語っているが、具体的にどのような美術館が作成できるかは、こちらのサイトをチェックするのが早いだろう。プレイヤーが作成した個性的な美術館の画像がいくつも掲載されており、アイデアによっては非常に魅力的な空間が演出可能であることが分かる。たとえば美術作品が空中を浮遊し、まるで無重力状態であるかのような美術館や、「天空の城ラピュタ」よろしく空中庭園のような美術館など、千差万別。このような現実の物理を無視する建築表現は、ヴァーチャルならではである。

またプレイヤーが作成した美術館は、オンラインを通じて世界中に公開される。来館したプレイヤーから入館料を徴収することができ、そのお金を使用して新しい芸術作品や建築パーツを購入することが可能だ。くわえて世界中のプレイヤーが作成した美術館が多数公開されており、インスピレーションを受けに足を運んでみるのも面白いだろう。まさに本物の美術鑑賞さながらの行為だ。なお本作のゲームサイクルは、美術館を作る&見ることに終始しており、スタッフを雇ったり経営に介入する要素はない。とはいえ、建築要素だけでもできることが豊富であるし、他プレイヤーの美術館をめぐる行為はユニークで、ゲームとしての楽しさはしっかり施工されている印象である。


筆者も本作を実際にプレイした。これまで美術鑑賞といえば、長蛇の列に辛抱強く並び静かに作品を熟視する、というのが基本的な作法であった。そこにバーチャルギャラリーが登場したことにより、鑑賞体験が大きく変わったのは近年の話である。メトロポリタン美術館のThe Met Unframedやルーヴル美術館のバーチャルツアーなど、こうしたフィジカルなイベントがバーチャルな空間で実施される事例は、新型コロナウイルスをきっかけに目に見えて増えてきた印象だ。

しかしどんな精工な展示空間を再現できたとて、本質的には鑑賞を目的としていることに変わりはないし、当然キュレーションそのものには介入できない。一方『Occupy White Walls』では、そのようなデジタル体験とはかなり異なる。作品の鑑賞行為に加え、プレイヤーだけの視点を持って絵画を収集、選別、編集し、さらには美術館自体も創造しつつ世界中の人たちへと共有することができるのだ。こうした試みはあまり類を見ない。

また絵画に対して「自分がどう感じたか」についてコメントできる機能が特に印象的だ。入力したコメントは作品ごとに管理され、過去に他プレイヤーが感じた言葉も閲覧することができる。またオープンチャットでギャラリー内の人たちと作品に関するトークを繰り広げたり、アバターを通じてコミュニケーションできるのも、オンラインゲームならではの体験だと思う。建築要素は多少のセンスが問われそうではあるものの、実在の作品を扱い自分だけの美術館を作るという唯一無二な体験を本作は提供してくれる。


『Occupy White Walls』の開発を担当したのは、イギリスのデベロッパーStikipixels。テックカルチャー・メディア WIREDが報じた内容によれば、本作は誰にでもアクセスできる芸術をコンセプトに開発されたという。各地の美術館に所蔵される作品の大部分は、保管庫や地下室に眠ったままであり、人目に触れることは少ない。Stikipixelsはこうした美術業界の課題に向き合い、有名無名関係なく、すべてのアーティストに公平な機会を与えることを目指し本作の開発がすすめられてきた。

2018年に早期アクセスが開始された本作は、4年以上の開発期間を経て無事正式リリースされた。Steamユーザーレビューを覗いてみると、本稿執筆時点で87%が好評とする「非常に好評」を獲得。同時接続プレイヤー数といったデータでは派手さはないが、ゆっくりと堅実にレビューを増やしていったと思われる。

『Occupy White Walls』は現在PC(Steam)向けに無料配信中。本稿執筆時点では、日本語対応していない。ちなみに美術館を作ることに億劫な方は、他プレイヤーが作成した美術館に遊びにいくだけでも魅力的な体験が得られるので、是非チェックしてみてほしい。

Yu Naganeo
Yu Naganeo

野生のグラフィックデザイナー。ゲームをプレイすることを「ゲームを食べる」と言う。

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