PCゲーム向けコピーガードのDenuvo Anti-Tamper(以下、Denuvo)を提供するIrdetoは6月30日、ゲームのDLCを保護する技術「Denuvo SecureDLC」(以下、SecureDLC)を発表した。SecureDLCはゲーム業界初の「DLCに特化した」海賊版対策技術だという。
ゲームソフトにはDRM(デジタル著作権管理)と呼ばれるハッキング対策技術が使われている。これはプレイヤーがソフトの中身をコピーし、個人間で自由に共有することを防ぐためのものだ。その中でもDenuvoは一時期、強力な海賊版対策とされてきた。一方で、これを採用したソフトもしばしばプロテクトを破られ、違法に共有されている現状だ。絶対に破られないコピーガードを作ることは事実上不可能なため、現在のDenuvoは発売直後のタイトルの売り上げを、一定期間クラックから守るという目標を示している(関連記事)。Denuvoは、「いずれ破られるにしても、発売からしばらくの間の売上を守る」手段として提供されているわけだ。そして、今回発表されたSecureDLCは、このDenuvoのDLC版と言えるだろう。
最近ではソフト本体のみならず、DLCを狙ったクラッキングも横行している。海賊版のソフトとDLCをパッケージにして共有する例もある。DLCなどが盛り込まれた作品エディション、いわゆる”後発の完全版”を、クラッカー同士で作ってしまうのだ。SecureDLCはこういった海賊版DLCを防ぐべく、SteamやEpic Games Storeなどのプラットフォームと連携。それぞれのプラットフォームのAPIをSecureDLCのAPIで再検証し、DLCへの不適切なアクセスを防ぐ試みだ。ユーザーの使うDLCが正当に購入されたか、SecureDLCが間に入り監査するかたちだろう。すでにDenuvoを採用しているタイトルや、有料DLCを配信する基本プレイ無料タイトルにも対応するとのこと。また開発者にとっては、比較的少ないコード変更でSecureDLCに対応できるという。
新技術はゲーム企業にとって頼もしい一方、Denuvoにはかねてより、条件次第でゲームのパフォーマンスに影響するとの指摘がある。そのためDenuvoを導入した作品がリリースからしばらく後にDenuvoを解除したり、中にはリリース前にDenuvoの導入を取りやめたケースもある(関連記事)。一部のユーザーはこうした背景からDenuvoに抵抗を示しており、Steamには「このゲームがDenuvoを使用しているかどうか」をまとめたリストまで存在するのだ。
Denuvoによるパフォーマンス低下は、開発者や正規の手段で遊んでいるプレイヤーにとっても懸念となる要素。一方でDenuvoおよびSecureDLCは、クラッカーからの攻撃への対策であり、ビジネスとしてゲームを提供する企業にとっては売り上げを守る貴重な手段だ。SecureDLC導入によってDLCはしっかり守られるだろうか、そしてパフォーマンスなどへの影響はあるだろうか。今後の導入例が答えを示すだろう。