泥道運転シム『Spintires』がSteamにて配信停止と再開を繰り返す。長年続くトラブル、いまだに解決せず
パブリッシャーのOovee Game Studiosから販売されているオフロード車シミュレーションゲーム『Spintires』が、Steamにて販売停止と再開を短い期間のあいだに繰り返している。背景には、このゲームのIPをめぐる争いがあるようだ。海外メディアEurogamerが報じている。
本作は、全天候型の車両にてロシアの自然のなかを走るシミュレーションゲーム。リアルなビジュアルと物理シミュレーションを取り入れており、プレイヤーは泥でぬかるんだ厳しい悪路を踏破し、目的地を目指す。
『Spintires』は、ロシア出身の開発者Pavel Zagrebelnyy氏が制作。そしてOovee Game Studios(以下、Oovee)と契約し、2014年にSteamにてリリースした。本作は、当時Steamにてトップセラーとなり、配信から1か月で10万本以上を売り上げるなど大きな成功を得た。Zagrebelnyy氏はその後、Saber Interactiveで働くことに。同スタジオはOoveeからライセンスを受け、『Spintires』のスピンオフ作品ともいえる『MudRunner』や『SnowRunner』を開発・リリースしている。
ただ、このOoveeとSaber Interactiveのあいだでは、現在法廷闘争が進行中だという。Ooveeは、数百万本を売り上げている『MudRunner』と『SnowRunner』の収益から、25%のロイヤリティを受け取る権利を主張。一方Saber Interactiveは、『Spintires』は同スタジオの従業員であるZagrebelnyy氏が、同スタジオが保有するコードを用いて制作したものであると主張。両社がどのようなライセンス契約を結んだのかは不明だが、Saber Interactive側としては、そうしたロイヤリティを支払う義務はないとしているようだ。
両社はさらに、ゲーム内に収録されたトラックのデザインやテーマ曲の権利、『Spintires』の商標権、将来的なスピンオフ作品の制作権についても、どちらに帰属するのか争っているという。またSaber Interactiveは、Zagrebelnyy氏は契約に基づきOoveeから支払われるべき金額の、半分も受け取っていないと主張している。
両社の争いが続くなか、Ooveeが自らの主張を公にし一方的に展開していることについて、Saber Interactiveは新たに名誉毀損も訴えているという。そうした最中、Steamで販売中の『Spintires』が、突如ストアから姿を消したり、販売再開したりといった妙な動きを見せることに。海外メディアEurogamerによると、販売停止はDMCA(デジタル・ミレニアム著作権法)に基づく申し立てを受けた措置とのこと。申請者は不明。現時点では、ふたたび販売が停止されている。どうやら6月17日にストアから削除されたようだ。
OoveeのCOO Devin Milsom氏はEurogamerの取材に対し、『Spintires』の配信停止により数百万ドルの損失を被ったと主張している。また本作を維持するために、同氏や設立者のZane Saxton氏が資金を捻出しており、Saxton氏にいたっては家や車を売却したとも述べている。
『Spintires』は大きな成功を収めたタイトルである一方で、『MudRunner』や『SnowRunner』がリリースされる前からトラブル続きだった。2014年には開発者のPavel Zagrebelnyy氏が、Ooveeが売上金を持ち逃げしたと告発。その影響で、ゲームのアップデートも滞ったとも主張。その後、お互いの意思疎通に問題があったとして両者は和解するも、Zagrebelnyy氏は先述した契約に基づく支払いについてはすべて履行されていないと述べている。またOoveeにおいては、不透明な資金の動きなども報じられていた(関連記事)。それから何年も経ってなお、トラブルを抱えている状況にある。
なお、現在Steamでの配信が停止されている『Spintires』について、OoveeのMilsom氏は、配信再開する予定であるとSteamの掲示板にて述べている。また、なぜストアから取り下げられたのかや、先述した現在進行中の争いについて、近くコミュニティに説明するとのことである。そこで同氏は何を語るのか注目される。