Steam『大戦略SSB』の“収録シナリオが強烈”として注目集める。尖閣奪還や米国内戦など国際情勢の懸念トピック詰め込む
システムソフト・ベータが現在PC向けに販売中の『大戦略SSB』。同作に収録されているシナリオが話題になっている。同作は今年6月30日にSteamでも配信予定。ストアページに記載されたシナリオ紹介が、Twitterユーザーずんこ。氏のツイートによって取り上げられ、注目を集めている。
『大戦略SSB』は、開発元の前身であるシステムソフト・アルファー時代から展開されている、シミュレーションゲーム「大戦略」シリーズの新作。プレイヤーは戦車や戦闘機などユニットを指揮して戦う。ユニットを生産し、移動や攻撃などの指示を与え、陣地を占領することで戦場を掌握しよう。本作は『大戦略』シリーズの新展開と位置づけられており、戦闘シーン含め3D表現が数多く盛り込まれている。PC向けのダウンロード版とパッケージ版は、今年頭に発売されていた。
同作では、シナリオモードが搭載。そのシナリオ群が強烈であるとして注目を集めているようだ。1つめは「台湾海峡危機」。アメリカと日本から見捨てられた台湾が、独立のため単独で中国と戦う。プレイヤーは台湾軍を指揮する。2つめは「朝鮮半島の赤化統一」。共産化統一され人権侵害が始まった南北朝鮮を相手に戦う。国連は軍事介入を宣言するものの、各国は派兵に及び腰。プレイヤーは、そんな中唯一軍隊を送った国である日本の自衛隊を指揮。
3つめは、「尖閣奪還」。中国が尖閣諸島に上陸しており、その中国軍を制圧するために戦う。プレイヤーは日本の自衛隊を指揮。4つめは「アイヌ独立」。北海道が中国資本に買われ、北海道の治安維持を名目に侵攻してきたロシアと戦う。プレイヤーは自衛隊を指揮。5つめは「米国内戦」。共産化した米民主党による正規軍と、民間人と州兵による米共和党反乱軍が戦う。プレイヤーは共和党の反乱軍を指揮する。
シナリオモードについてシステムソフト・ベータは「最新の国際情勢から作られた5本のシナリオを収録!日本の未来を守れ。」と紹介している。その文言に違わず、それぞれのシナリオは、昨今の国際情勢にて懸念されているトピックが詰め込まれている。また有料追加コンテンツとしては、竹島をめぐる攻防戦のシナリオが収録されている。単にそうした時事問題を扱っているだけなく、戦争シミュレーションゲームのシナリオとして落とし込まれている点は非常に挑戦的。また、どの勢力を“プレイヤー視点にするか”という点で、システムソフト・ベータの思惑が伝わってくることも興味深い。
しかしシステムソフト・ベータは、最近になりこうした世界情勢盛り込みを始めたわけではない。古くから、その時代に応じたシナリオを収録。とくに『現代大戦略』シリーズでは顕著だ。具体的にいうと、2001年に発売された『現代大戦略2001 ~海外派兵への道~』のキャッチコピーは、“これは「現実」に起こりうる「最悪」のシチュエーションだ”。同作では第二次朝鮮戦争などを取り上げており、シナリオとしては「日韓激突!ソウル占領」といったものを収録するなど、火力強め。その後も、『現代大戦略』シリーズでは国際情勢にあわせたトピックを盛り込み続けていた。
一方で、その牙はつねに鋭かったわけではない。というのも、コンソール版ではシナリオの設定がややマイルドになっているからだ。実はコンソール版『現代大戦略』シリーズは、国名がすべてイニシャル的な伏せ字となっている。日本はN国やJ国、中国はC国、韓国はK国、アメリカはA国といった次第にボカしている。比較的ストレートなイニシャル表現をしているものの、とはいえ、何の国や組織を指しているかすぐにはわからない。結果的にフィクション感が強まっている。これは憶測にすぎないが、コンソールメーカーとしては、政治的なトラブルに巻き込まれることを避けたいという意図があるのだろう。ゆえに、イニシャル表記というかたちでの配慮がされたと考えられる。いずれにせよ、コンソール版はファンタジー感が強かったのである。
結果として、どこからも干渉が入らないPC版のみ、すべて実在の国や組織の表記が可能になっているのだろう。『大戦略』シリーズのSteamリリースは二作目で、『現代大戦略』シリーズ過去作はSteam未リリース。さまざまな理由が重なって、やたらとリアリティのあるシナリオとしてSteamユーザーらに注目を集めることとなったのかもしれない。ただしSteamでリリースされた過去作は『太平洋之嵐6』『大戦略パーフェクト4.0』含めどれも評判が芳しくない。シナリオ面だけでなく、ゲームとしてどこまでブラッシュアップされるかが、期待されるところだろう。
『大戦略SSB』Steam版は、6月30日に発売される。Nippon1.jp ショップなどでもすでに販売中だ。
※ The English version of this article is available here