フランス政府は5月30日、政府機関が発信する内容について、「eSports」などを含む英語のゲーム用語を用いることを禁止すると官報で発表した。
フランスでは、広がりつつある英語の使用に対し、フランス語を保護しようとする考え方が存在する。1994年にはフランス語の保護を法律で定めた「トゥーボン法」が制定。テレビ放送でのフランス語使用を義務付け、ラジオ局は聴取者の多い時間帯に流す音楽の35%あるいは40%をフランス語の楽曲にすることが義務付けられている。2019年には文化相が、トゥーボン法制定から25周年を記念し、英語の使用を減らしてフランス語で表現するよう呼びかけるツイートを投稿した。一方、フランス国民の実態としては、若者などを中心に英語の使用は広まっている状況がある。
こうしたなか、数世紀にわたり言語の監視機関を務めてきたAcadémie Françaiseは今年2月、言語について「必然性のない劣化が起きている」と警告。鉄道会社SNCFのブランド「Ouigo(英語のwe goとかけたネーミング)」や、その他一般に普及している英単語である「big data(ビッグデータ)」「drive-in(ドライブイン)」などを対象として批判した。
そして5月30日、フランス政府は官報を発行。フランス政府関係者の使う言語において、ゲーム関連の英単語の使用を禁止し、フランス語で表現をするよう求めた。例を挙げると、「cloud gaming(クラウドゲーミング)」は「jeu video en nuage」。「eSports(eスポーツ)」は「jeu video de competition」に。そして「pro-gamer(プロゲーマー)」は「joueur professionnel」に置き換えられるという。このほか、「streamer(ストリーマー)」は「joueur-animateur en direct」と言い換えられることが求められたそうだ。
本件に関し、フランス文化省はAFP(フランス通信社)に向けてコメント。ビデオゲームの領域においては、アングリシズム(英語化)が進んでおり、非ゲーマーに対する理解の障壁になっていると述べた。また同文化省は今回提示されたフランス語言い換えについて、事前に専門家がビデオゲームのウェブサイトや雑誌を調査し、すでに存在しているフランス語の用語があるかを調べたと説明。全体的なアイデアとしては、人々に対しより容易にコミュニケーションしてもらうための施策だと述べている。
政府関係者に限った話とはいえ、国による英語の禁止令というと、日本人にとっては想像しがたい状況だ。自国語に対する保護の厚い、かの国ならではの興味深いケースだといえるだろう。