賞金約650万円獲得したゲーム、『ゼルダの伝説 夢をみる島』に似すぎとして批判殺到。大きく取り上げられ、そして下げられたゲームの行く末
とあるゲームが、激しい批判に晒されているようだ。ゲームの名は『Mysplaced』。ゲームジャムRogue Jamにて、賞金5万ドル(約650万円)を勝ち取るなど栄光に輝いたが、コミュニティからは、既存のゲームと類似しすぎているとして疑問の声があがっている。Zelda Dungeonが報じている。
Rogue Jamは、パブリッシャーRogue GamesとメディアIGNが共催するコンテスト。開発者たちは自由にゲームを作って応募する。テーマなどの制約は設けず著名人を交えたを審査が実施。アワードに勝ち残った開発者は賞金を得られる。賞金の枠も、5万ドル(650万円)から50万ドル(6500万円)まで幅広い。上位入賞となれば、Rogue Gamesとのパブリッシング契約を結ぶことができる。Rogue Jamと命名されているように、パブリッシャーRogue Gamesによる大型ゲームコンテストと呼ぶのがしっくりくるかもしれない。
このコンテストにて、あるゲームが賛否両論を呼んでいる。それが『Mysplaced』である。同作は、アメリカのワシントンを拠点とするClear Sky Gamesが手がけるアクションアドベンチャーゲーム。百聞は一見に如かず。まずは下の映像を見るといいだろう。
結論からいうと、同作は『ゼルダの伝説 夢をみる島』リメイク版に酷似している。グラフィックの質感から、画面構図からエフェクトまで、かなり『ゼルダの伝説 夢をみる島』リメイク版のようである。ついでにいうと、キャラモデルや小物、アニメーションなど含めて、むしろ似ていないところを探すほうが難しい。IGNがTwitter上に投稿した動画には、大量の批判が寄せられている。さまざまな意見があるが、つまるところ“丸パクリではないか”と指摘しているのである。寄せられているリプライや引用RTの数は2000に及び、激しい議論が繰り広げられている。
開発者は、『ゼルダの伝説 夢をみる島』リメイク版から、強い影響を受けていることを認めている。一方で、本作ならではの要素も多く用意しているとコメント。たとえば、ストーリー進行はリニア型ではなく“メトロイドヴァニア”スタイルであることを主張している。パズルを解くために同作のキャラクター名義のSNSアカウントをチェックしたり、MapアプリでGPS座標を確認したりといった、現実とのつながりをもたらす要素を盛り込む点も、オリジナルポイントであると強調している。
同作については、Rogue Jamの審査員も、その質の高さを褒めながらもオリジナリティに懐疑的。審査員のひとりである元米任天堂社長のレジナルド・フィサメィ氏も、既存作品をコピーしていることから、ファンからの反応が手厳しくなるだろうといった意見を投げかけている。実際にその懸念どおりの結果になっているわけだ。しかしながら、『Mysplaced』は最終的にAudience Choiceを勝ち取った。開発者は約650万円を手にしたのである。Rogue JamはコンセプトとしてRogue(あらくれ)という言葉のとおり、細かいことを抜きにしようといったテーマがあるようだが、そうしたことを踏まえてもなお驚きの選出となった。
とはいっても、この結果に運営は思うところがあったのか、あまりにも『ゼルダの伝説 夢をみる島』リメイク版に似すぎているとして、『Mysplaced』をさらなる上位のアワードの選出対象から外すことを決断。一方で、Clear Sky Gamesは約650万円をワシントンに持ち帰り、開発拠点を拡大。ゲームはPlayStation 5/Xbox Series X|S向けに制作されることとなった。
※ ちなみに同アワードを共催した身であるIGNは、同作を“恥知らずなゼルダクローン”と紹介している。
Rogue Jamはリアリティショー形式となっており、審査員のコメントも含めて、ゲームコンテストとしてはやや苛烈。あまりに『ゼルダの伝説 夢をみる島』リメイクに似たゲームも、あくまでショーを盛り上げるための道具だったのかもしれない。開発者としては「酷似ゲーム」として大きな批判を浴びれば、商業ゲームとしてリリースする際にはその批判と向き合う必要もある。Rogue GamesとIGNに大きく取り上げられ、そしてコミュニティからこき下ろされた『Mysplaced』は、PS5とXbox Series X|Sでのリリースにこぎつけられるのだろうか。