『Among Us』のドット絵が“2000体”描かれる事案発生。「巨大キャンバスを1ピクセルずつ埋める」壮大実験にて
海外掲示板Redditにて、現地時間4月1日から4月4日にかけて一大イベントがおこなわれた。1000×1000ピクセルのキャンバスを、数百万人のユーザーが1ピクセルずつ埋めていくという壮大な実験だ。その結果としてできあがったピクセルアートは圧巻の出来栄え。そんななか、あるゲームが実験の陰で意外な活躍を見せていたようである。
「Place」は、Reddit内で開催された社会実験である。Reddit内の掲示板の一つr/placeを会場としておこなわれた。実験では、掲示板上にオンラインキャンバスを設置。登録したユーザーは16色から1色を選び、キャンバスに1ピクセルずつ色を置くことができる。ただし、ユーザーは一度色をおくと、その後5分間はキャンバスを編集できない。各ユーザーが制限を受けながら、徐々にピクセルを着色していくことで大きな画像を生成するプロジェクトである。本実験は2017年4月1日に実施されたのち、盛況のうち終了。そして2022年4月1日、5年ぶりに同実験が実施されることとなった。
ユーザーは5分に1ピクセルしか色を置けないため、個人の力で何かを描くのは難しい。しかしPlaceの見どころは、寄せ集めのユーザー同士が示し合わせたように結託し、徐々に具体的な画像を描き出していく点にある。タイムラプスを眺めてみると、さまざまな国旗が描かれたり、名画「夜警」のピクセルアートが再現されたり、スターウォーズのアートが出現したりと、その発展過程は実に多彩。混沌とした様相を呈しつつも、それぞれのモチーフが少しずつ描かれていく過程は見ごたえがある。
そして今回の企画では、ゲームのモチーフも数多く描かれている。トライフォースやカービィなどのメジャーどころから、『UNDERTALE』『ホロウナイト』などのインディーゲームに至るまで、幅広いゲームモチーフが登場。そのすべてを列挙することは不可能に近いほど、数多くのゲームがPlaceに参戦している。どのゲームのキャラクターがもっとも描かれたのかを正確に把握することは難しいが、かなりMVPに近いといえる作品も存在する。それが『Among Us』だ。
『Among Us』はデベロッパーのInnerslothが開発する宇宙人狼ゲーム。2018年にリリースされ、2020年に口コミなどでヒットした。2022年に至るまで精力的にアップデートが続けられる、人気インディーゲームの一つである。そのマスコットキャラクターといえば、シンプルな造形でおなじみのクルーメイト(インポスター)。宇宙服を着こんだ人に見えなくもないが、ミニマルにデフォルメされた造形がシュールでありつつ愛らしい。『Among Us』のアイコンともいうべきキャラクターである。
そしてPlaceにおいては、『Among Us』のクルーメイトが異様な数で描かれていたのである。たしかに単純なフォルムはドット絵でも表現しやすく、たくさん描かれてもおかしくはない。とはいえ、その繁殖の仕方が特殊なのだ。
というのも、上記のツイートをご覧いただきたい。これらの画像はそれぞれ、レモンのような物体、「スターウォーズ」の一場面、牛のキャラクター、石膏像のアップなどである。それ自体には何の変哲もないのだが、よく見ると色の塗りつぶし方に奇妙なディティールがあることに気づくだろう。千鳥格子だろうか? いや、違う。そう、よく見ると塗りつぶしのなかに、ごくごく小さなクルーメイトが描き出されているのである。そのサイズ感は、せいぜい5×6ピクセル程度といったところだろう。Placeでは各所の塗りつぶし部分に、サブリミナル的に極小クルーメイトたちが繁殖していたのだ。
こうしたなか、ユーザーのなかには『Among Us』クルーメイトを研究対象とする者も現れた。広大なキャンバスのうえで、クルーメイトを自動で認識するツールを作成。現在、クルーメイトが何人描かれているかを検出することに成功したようだ。その数はどんどん膨れ上がっていき、最終的には2000人に到達。概算ではなく、ジャスト2000人という地味な奇跡が発生したようだ。このうち、「右向きのクルーメイトは703人、左向きのクルーメイトは219人」といった、有意義かどうか分からないデータも得られた。
今年のr/placeには、480万人ものユーザーが参加。インターネットの混沌や協働のパワーを示す、圧巻の結果を残すこととなった。こうしたなか、『Among Us』のクルーメイトはシンプルなデザインを活かし、独自の生態系を築いている。なぜ人はキャンバスを与えられるとクルーメイトを描かずにはいられないのか。実験がもたらした結果は、今後さらなる研究課題を後世に残したことだろう。
*『Among Us』公式Twitterも、あまりに簡単に紛れ込むクルーメイトに驚きの様子。
※ The English version of this article is available here