Steam無料「他人が剣を抜くほど剣が長く重くなる」剣抜きゲーム、リリース1日で剣の長さカンスト。開発者もビビる

 

Steamで3月29日に無料配信された『The one who pulls out the sword will be crowned king』の「剣の長さ」がさっそくカンストしたようだ。3月30日午前10時時点で、Difficulty Levelは10000 に達している。剣を抜くには、尋常ではない忍耐力が求められるわけだが、そうした体験を好き好んでしている人々が全世界にいるようだ。


『The one who pulls out the sword will be crowned king』は、剣を抜く、ただそれだけのゲームだ。プレイヤーは石に刺さった剣を抜くことを試みる。しかし石に刺さった剣は容易く抜けない。マウスカーソルを柄に当ててつかみ持ち上げ続けることで、剣を引き抜こう。見事剣を引き抜くことができれば、プレイヤーは王となる。

ルールはシンプルながら、かなりの苦行。そもそもとしてこの剣はなかなか抜けない。左クリックで柄などをつかんだまま上に持ち上げ、その作業を長時間続けることでやっと剣が抜ける。その間、剣をつかむのをやめれば、最初からやり直しだ。地獄である。また本作はオンラインマルチプレイに対応しており、リアルタイムに剣抜きがおこなわれる。そしてたちの悪いことに、ほかのプレイヤーが剣を抜くと、自分の剣が長く重くなる。剣を抜くのに30分以上要したというユーザー投稿もSNSなどで見られている。とにかく剣を抜くのが大変なゲームだ。

※インディーゲーム系インフルエンサー/クリエイターLayerQ氏の実況動画を見ると内容がわかりやすい


その悪名高いゲームシステムはさっそく人気を呼ぶこととなる。Steamの同時接続プレイヤー数は一時2200まで到達(SteamDB)。配信から1日が経った時点で、剣が抜かれるほど伸びるDifficulty Levelは10000に到達。1日でカンストに至ったわけである。かなりの人気っぷりであるようだが、開発者はこの人気をどう捉えているのか。開発元のMajorariattoに話を聞いた。回答してくれたのは、同スタジオの設立者であるAlva Majo氏である。

まず配信から1日で剣の長さがカンストしたことについて、配信前に予想していたかと質問。すると「まったく予想していなかった」との返答がかえってきた。カンスト値自体を高くしており、そこまで多くのユーザーが剣を抜くとは予想していなかったという。本作では、一定時間、誰も剣を抜けなければ剣が短く軽くなっていく仕組み。みんな剣が短くなるのを待ってから再挑戦するだろうと考えていたが、ユーザーが意固地になって延々と剣を抜き続けていると、Majo氏は喜んだ。


ちなみに剣の長さの上限を引き上げる計画があるか聞いたところ、検討中ではあるが現時点ではその予定はないとのこと。チーター以外は遊べなくなる可能性や、剣抜きに時間がかかりすぎてしまう可能性を、懸念点としてあげている。また今後のアップデートについても、バグ修正以外は予定はないとコメント。もともと実験的な小さなゲームで、かつゲームは完成されているので、追加コンテンツは必要ないとのこと。

また本作では、前述したように、剣を抜くという行為にプレイヤーは苦しんでいる。苦しんでいるプレイヤーを見るのはどんな気持ちかと聞いてみると、「自分もとても苦しい」との返答がかえってきた。とくに、もうすぐ抜けそうという時に剣から手を放して落としてしまったユーザーを見るのは、苦労が水の泡になり時間の無駄であるし、何も手に入らないことを考えると気の毒に思うと答えた。剣を抜く時間はせいぜい15分程度だと見込んでいたので、人々がいかに頑固なのかを思い知ったそうだ。


もともとMajorariattoは、過去作『Golfing Over It with Alva Majo』にて「ユーザーの苦労を水の泡にする」企みは遂行済み。同作では操作をミスすると、ステージを大幅にやり直すことになる可能性がある。しかし、やり直すことは挑戦的で愉快であることから、ゲームを面白くしていたという。一方、『The one who pulls out the sword will be crowned king』はひたすら忍耐力を試すゲームであり、やり直す過程に面白味があるわけではない。剣が抜ければこの上ない幸福と満足感が得られるが、失敗した時はとてもひどいに気持ちになる。Majo氏はそうした気持ちになるのは嫌いだとし、「剣を落とさないでくれよ!」と語った。

いずれにせよ、『The one who pulls out the sword will be crowned king』をプレイし積極的に苦しもうとするユーザーが多いことには、Majorariattoとしても驚いているようだ。ちなみに3月31日12時にゲームを起動して遊ぼうとしたところ、オンラインモードでのDifficulty Level は0になっており、すっと剣を抜くことができた。なにか事故が起こっているようだ。直近で剣を抜いたプレイヤーは「Bad Game Dev」と名乗っている。Steamコミュニティを見たところ、ネットワークがハッキングされていると報告するユーザーが複数。何者かが、剣が抜けないゆえに逆恨みしたのだろうか。真実は謎に包まれているが、罪深いゲームなのは間違いなさそうである。


『The one who pulls out the sword will be crowned king』は、Steamにて無料配信中。本作を気に入った方は、スタジオの過去作をチェックするといいだろう。




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