循環RPG『Loop Hero』開発元、同作を海賊版で遊ぶことをロシア向けSNSで勧める。難しい立場に置かれたロシアのゲームスタジオ
ゲームスタジオFour Quartersは3月27日、ロシアの人気SNSであるVKontakteを介して、『Loop Hero』を海賊版でプレイすることを推奨した。難しい立場にいるロシアのゲームスタジオは、独自の判断を下したようだ。VICEが報じている。
【UPDATE 2022/3/30 21:28】
ロシアユーザー向けに発信している可能性を加味し、タイトルに「ロシア向けSNS」を追加
Four Quartersは、『Loop Hero』を手がけたスタジオだ。『Loop Hero』は、死神によって無限のループに陥った世界を舞台にするRPG。プレイヤーは、拠点であるキャンプを起点にぐるりと周回する道が用意された自動生成マップを進みながら、バトルなどをおこなう。主人公キャラクターは自動的にマップを歩き、道中に現れる敵とのバトルも自動でおこなわれることが特徴。プレイヤーはその様子を眺めつつ、倒した敵がランダムにドロップする装備品の吟味や、カードの配置をおこなうことになる。
『Loop Hero』は、PC向けにリリースされたのち、Nintendo Switchでも配信。さまざまなゲームジャンルの要素が組み合わせられたユニークなゲームプレイが人気を呼び、昨年12月には売り上げとして100万本を突破。ヒットタイトルの仲間入りを果たした。無料アップデートにより機能や要素も追加されておりゲームの評価も盤石。順風満帆に見えていた。しかし同スタジオは難しい立場にいるようだ。というのも、Four Quartersはロシアに拠点を構える(もしくは構えていた)スタジオなのである。
ロシアは現在ウクライナへと侵攻中であり、その状況を重く見た世界各国はロシアへの経済制裁を敢行。銀行や決済など金融サービスも機能が停止しているところが多く、ロシアへの送金は困難だ。Four Quartersは、その煽りを受けていると見られる。『Loop Hero』はSteamとNintendo Switchでリリースされているが、Steamではロシア/ウクライナデベロッパーへの送金が取引処理の関係で止まっているほか、ニンテンドーeショップもロシアエリアでは停止中。もっとも、ゲームの売り上げはパブリッシャーが受け取りデベロッパーに分配するケースが多い。同作のパブリッシャーはDevolver Digitalなので、『Loop Hero』の売り上げは適切に入ってきているだろう。
とはいえ、もしFour Quartersがまだロシアにいるのなら、パブリッシャー経由でも、売り上げの利益を得られないという苦しい状況にある。そんな事態を憂いたユーザーが、Four Quartersに対して、なにか支援できる方法はないかと尋ねていた。そこでFour Quartersは、VKontakteを介してスタンスを明らかにしたわけだ。
同スタジオは、ロシアの決済サービスが止まっていると報告。このような難しい情勢において自分たちができることは、海賊版を勧めることぐらいであるとコメント。なんと、『Loop Hero』のPC版をTorrent経由でダウンロードできる、海賊版サイトのリンクを貼ったのである。
ロシア向けSNSに投稿していることを踏まえると、Four Quartersの海賊版を遊んでというメッセージは、ロシアユーザーに限定するものかもしれない。とはいえ、自分たちのゲームを海賊版で遊ぶことを勧めるというのは、かなり特殊。スタジオおよびロシアの苦しい状況が垣間見える。ロシアでは言論統制が敷かれているとされているが、Four Quartersはロシアの侵攻が開始されてからすぐに、Twitterアカウントにて反戦を表明。表明投稿はTwitterアカウントのトップに固定されている。渦中のロシアにルーツをもつというだけでなく、ロシアのスタジオながら反戦のスタンスをとっていることもまた、Four Quartersの立場の難しさを物語る。
ロシアのゲームスタジオが外国に亡命するケースも出てきており、Four Quartersも、現在は別の国にいるのかもしれない。もしそうだとしても、祖国を出なければならず、海賊版を推奨しなければいけないのは苦しい。Four Quartersは、VKontakteにてスタジオを心配し寄付を申し出るユーザーに対し、なんとか切り抜けられそうだとし、その善意に感謝すると返信。そのお金は、愛する人たちのために使ってほしいと添えた。ロシアの人々を助けるためにも、ロシアの侵攻が止み、クリエイターたちがものづくりに専念できるようになることが望まれる。