Steam無料ゲーム『The one who pulls out the sword will be crowned king』配信され盛況。剣を抜き続ける、多人数参加型苦行
インディースタジオMajorariattoは3月29日、『The one who pulls out the sword will be crowned king』を配信開始した。すでに盛況を見せているようだ。対応プラットフォームはPC(Steam)。無料で配信されており、ゲームのサウンドトラックが100円で販売されている。
『The one who pulls out the sword will be crowned king』は、剣を抜く、ただそれだけのゲームだ。プレイヤーは石に刺さった剣を抜くことを試みる。しかし石に刺さった剣なぞ、そう容易く抜けはしない。我慢強く剣を引っ張り続け、引き抜こう。見事剣を抜くことができれば、あなたは王。盛大な祝福を受け、冠を授かるのだ。
と、仕組みこそシンプルながら、本作はかなり苦行だ。というのも、この剣はなかなか抜けないのである。操作としてはマウスをクリックして、そのまま剣を上に引き上げていくのだが、判定はやや厳しい。剣の部分にうまくカーソルを合わせながら、慎重に持ち上げていく。王となるものには、休憩など許されない。剣からマウスを離してしまえば、剣はたちまち落下。最初からやり直しである。
さらに苦行なのが、この剣は長く重くなっていくこと。本作はオンラインマルチプレイに対応しており、世界中の人々が一斉に剣抜きを敢行中。その中では、剣を先に抜くプレイヤーも出てくるだろう。ほかのプレイヤーが剣を抜くとどうなるか?そう、剣が長く重くなるのだ。ただでさえ引きにくい剣が、他のプレイヤーの達成によりさらに引きづらくなっていく。まわりはどんどん抜けていくなか、延々とだらだらと剣を抜くことになる。さながら、給食の時間内に給食を食べ終えられず、掃除の時間までイスに座らされた学生時代を彷彿とさせる。
逆にいえば剣は誰も抜かなければ、短く軽くなっていく。とはいえ、本日はリリース日ということで人が殺到。13時時点では、難易度レベルは4700近い。ゴロゴロと雑に鳴る石の音を聞きながら、うまく抜けているかどうかもわからない剣を根気よく引き上げる。そんな泡沫のような体験を全世界の人々が味わっている。
本作にはオフラインモードも存在しており、そちらで剣を抜くのは(相対的に)幾分か楽だ。またアクセシビリティオプションも完備されており、剣の長さと重さを調整可能。短く軽い剣を引き抜き、達成感もない状態で人々に盛大に祝われ、実力が伴わないまま祭りあげられる、虚ろな王になるのもいいだろう。いずれにせよ、剣を抜いた後の演出は一見の価値ありだ。
本作の開発を手がけるのは、スペインのインディースタジオMajorariatto。2名のクリエイターで構成されており、これまでクイズアドベンチャー『Majotori』やキュートなミニゲーム集『pureya』、どこかで見たようなゴルフボール登頂ゲーム『Golfing Over It with Alva Majo』などをリリース。ユニークで意地悪なゲーム開発を得意としている。本作は、アーサー王伝説をモチーフにしているという。ざっくりといえば、アーサー王が、石に刺さった剣エクスカリバーを抜いたことで、王として認められたというエピソードである。本作のコンセプトには、簡単に石から抜かせまいというアーサー王の伝説へのリスペクトと、プレイヤーを苦しめてやろうというスタジオの悪意が垣間見える。
『The one who pulls out the sword will be crowned king』はSteamにて無料配信中。Steamでは1900件以上の評価が寄せられ「圧倒的に好評」。どこまで本気のレビューが投じられているかはさておき、このウェーブに乗ってみるのもいいだろう。
※ The English version of this article is available here