Nintendo Switch『モン勇』突然の100円セールは、特定層へのダンジョンRPG布教が狙いだった。しかし“事故”により想定外の事態に

株式会社エクスペリエンスは、同社タイトル『モン勇』にて100円セールをおこなった背景を明かした。話によれば、『モン勇』が激安で販売されたのには“事故”があったという。

株式会社エクスペリエンスは3月25日、同社の最新情報を届ける番組「EXPチャンネル」を放送。このなかで先日話題となった、Nintendo Switch向けダンジョンRPG『モンスターを倒して強い剣や鎧を手にしなさい。死んでも諦めずに強くなりなさい。勇者隊が魔王を倒すその日を信じています。』(以下、モン勇)の100円セールについて語った。それによると、本件は“事故”が起こった末のセールだったのだという。

本作は、勇者隊を率いて戦うダンジョンRPGだ。勇者には戦士や騎士、武闘家、忍者など8種類の職業が用意され、転職も可能。そして秘宝を奪った七つの魔王を倒すため、竜王の塔へと挑む。迷宮を進みモンスターと戦い、より良い装備品を集めてパーティを強化していくのだ。
 

 
そんな『モン勇』が、3月15日にニンテンドーeショップにて突如セールを開始。通常価格5480円のところ、なんと98%オフの100円で購入できる激安セールだった。『剣の街の異邦人』や『黄泉ヲ裂ク華』、『デモンゲイズ』など、ダンジョンRPG開発に定評のあるエクスペリエンス作品とあって、ゲーマーのあいだで話題に。弊誌でも紹介した(関連記事)。

ただ、エクスペリエンス代表取締役の千頭元氏によると、このセールの背景には事故があったのだという。同社では、若年層に向けてダンジョンRPGを布教する取り組みを計画。まずは小学生に向けた施策として、お小遣いで気軽に買える100円の“シークレットセール”をおこなうこととしたそうだ。“完全ステルス”なセールとするため、同社からはもちろん、任天堂の協力を得て公式からの告知もせず、小学生がよく読んでいるであろうコロコロコミック誌面でのみ告知した。しかし、結果的に広く知れ渡ることとなってしまった。

また同社としては、コロコロコミックにて広告を出してから3日間限定のセールとすることで計画を進めていたが、それはできないということが後になって判明。しかしビジネス上、セールを止めるわけにもいかなかったそうだ。千頭氏は、通常価格で購入したユーザーに不快感を与えたり、会社についてファンに心配させたりしてしまったと振り返っている。
 

 
千頭氏は、『モン勇』が売れていないから格安セールをおこなった、というわけではないとも述べている。むしろ本作はもともとかなり売れており、今年度同社が黒字なのは本作の貢献が大きいそうだ。また、同社が手がけたタイトルはすべて黒字であることも明らかにしている。

とはいえ、今回のセールの反響はかなりのものだったようで、セール開始から10日間、錚々たる大作をおさえて売り上げランク1位をキープすることに。『デモンゲイズ』をぶっちぎるほどの、同社歴代1位の販売本数になったという。また相乗効果として、990円で販売中のDLCが“べらぼうに買われた”そうだ。結果的に“想定のウン十倍”の売り上げが入り、事業計画が狂ってしまったと嬉しい悲鳴を上げている。
 

*『モン勇』セールについての言及は11分30秒あたりから。

 
シークレットセールとするために策を練ったものの、ニンテンドーeショップにて誰もが確認できる状態であったため、バレてしまうのは時間の問題だっただろう。コロコロコミックにしても小学生以外が読まないとは限らず、誰かひとりがSNSに投稿すれば一気に拡散してしまう。対象者を限定したセールというのは、既存のシステムにおいてはなかなか難しいことだったといえそうだ。

もっとも同社は、ニッチなジャンルであるダンジョンRPGを若い人にも知ってもらう施策を、今後も続けていく考えのようだ。ただ、次に対象とする中学生向けには、今回のようなセールやプロモーションはやらないとのことである。

『モンスターを倒して強い剣や鎧を手にしなさい。死んでも諦めずに強くなりなさい。勇者隊が魔王を倒すその日を信じています。』は、Nintendo Switch向けに販売中。またエクスペリエンスは、新作心霊ホラーアドベンチャーゲーム『死噛(シニガミ)』を、Nintendo Switch/PS4向けに9月15日に発売する予定だ。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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