任天堂は3月24日、公式ページ「開発者に訊きました」を更新。『星のカービィ ディスカバリー』の制作について、開発者に対するインタビューを公開した。発売が3月25日に迫った同作について、開発の裏話が語られている。ハル研究所の謎の技術と、意外な側面が明らかになっているようだ。
『星のカービィ ディスカバリー』は、Nintendo Switch向けに発売されるアクションゲーム。『星のカービィ』本編シリーズ初の3Dアクションとなっており、奥行きのあるステージをカービィが縦横無尽に駆けまわる。自動車や三角コーンなどをほおばって新たな能力を発揮する「ほおばりヘンケイ」や、コピー能力にさまざまなバリエーションをもたらす進化、ステージでワドルディを助けるごとに発展していく町づくりなど、多彩な新要素が用意されている。
一見してポップで可愛らしいビジュアルが特徴の『星のカービィ ディスカバリー』。しかしその背後には、骨太な技術力が隠されているようだ。たとえば3Dで『星のカービィ』を作る際には、カービィならではのハードルがあったという。それは、カービィが真横~後ろを向いていると、どの向きを向いているのか分からなくなってしまうという問題だ。まんまるボディが災いして、どの方向を向いていても同じシルエットになってしまうため、プレイヤーからカービィの向いている方向が判別しにくくなってしまうのである。これでは敵を攻撃する際に、正確に当てることが難しい。
そこで本作では、同問題を技術的に解決しているという。具体的には、「ゲーム画面で攻撃が当たっているように見える時は実際当たっていなくても『当たる』ようにする」という仕組みを取り入れたのだ。同システムでは、カメラとカービィの位置関係から、ユーザーから攻撃が当たったように見える範囲を自動で特定。たとえばカービィがカッターを投げた際、実際には敵よりやや手前側に攻撃がずれてしまっていたとしても、カメラから見て攻撃が敵と重なっているように見えれば、攻撃が当たったことにして処理してしまうのだという。この仕組みにより、3Dアクションが苦手な人でもストレスなくスムーズに攻撃を当てることができるようになっているそうだ。
さらに同様の技術として、ファジー着地と呼ばれる仕組みについても解説された。3D空間の場合、ジャンプした後に戻って着地する位置が分かりにくくなる問題がある。いちど着地したつもりで連続ジャンプをしようとAボタンを押しても、実際はカービィがまだ着地しておらずホバリングになってしまう、という事態が起こるわけだ。
そこで、地面からある程度近い距離でプレイヤーがAボタンを押した場合は、ちゃんと着地したことにしてジャンプ入力として処理する仕組みが作られたようだ。このシステムによってホバリングを誤発することなく、気持ちの良いアクションが可能となるという。ほかにも、地形のモデリングを自動的におこなうシステムを開発して時間短縮・効率化を図るなど、ハル研究所の技術力をうかがわせる発言が続出し、読者を驚かせている。
高い問題解決能力を見せつけたハル研究所だが、一方でどうしても解決に時間がかかった課題もあったそうだ。それは、2Dアクションをそのまま3Dアクションに作り変えると、スリルや冒険度が薄まってしまうという懸念だった。3D化で奥行きができて敵を避けやすくなる分、カービィが敵にしっかり囲まれて狙われないと、難易度が下がってしまったのだという。実際、任天堂に所属する二宮氏がフィードバックした際も、敵の配置の調整を何度依頼してもフィールドが隙間だらけになってしまったのだという。
そこで二宮氏が、なぜマップの密度が上がらないのかハル研究所に尋ねたところ、意外な回答が返ってきたそうだ。ハル研究所スタッフいわく、「そんなに敵に囲まれたらカービィがかわいそうじゃないですか」とのこと。開発しているスタッフは皆カービィが好きで、カービィを苦しめてしまう場面づくりに抵抗があったのだという。アクションゲームが苦手な人や低年齢のプレイヤーを考慮することはもちろんのこと、どうしてもカービィをいじめたくない気持ちが、マップのレベルデザインをするうえでの困難となっていたようだ。なかなか越えがたいハードルではあったものの、こうした難易度調整については時間をかけて擦り合わせていったとのこと。
ハル研究所の豪快な技術力と、思わぬカービィへの愛惜があらわになった今回のインタビュー。全文はこちらから読むことができる。『星のカービィ ディスカバリー』は、海外レビューが解禁済み。レビュー集積サイトMetacriticにてすでにメタスコア85と高い評価を獲得している。3月25日に発売される同作を楽しみに待っておこう。
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