『エルデンリング』がついに40分以内にクリアされる。タイム短縮の鍵を握る、ワープ技とは?


『エルデンリング』のスピードランが白熱中だ。先日1時間切りが報告されていたが、はやくも新たなスキップの発見やチャートの最適化が進み、すでに40分切りの記録が出ている。カテゴリとしてはany%(なんでもあり) Wrong Warp(グリッチ名)での記録。40分切りを達成したのは、ソウルシリーズの走者としてはよく知られるDistortion2氏。Twitchでの配信中に出た記録で、ゲーム内時間で37分15秒となる。同作のspeedrun.comページは、3月18日までロックされており集計はされていない。そのため確実とはいえないものの、おそらく3月11日12時半時点での世界記録である。なお、以下の記述および映像には『エルデンリング』のネタバレが含まれているため注意してほしい。








初見プレイでは多くの人が最低でも50時間はかかるであろう『エルデンリング』。40分以内で踏破されるカラクリは、カテゴリ名にもなっている「Wrong Warp」というグリッチだ。内容は「本来ワープできないはずの場所へワープする」というもの。『ダークソウル リマスタード』にも同名のグリッチは存在していた。スピードランには非常に有用ながらも、その難易度の高さでよく知られるグリッチ技であったが、『エルデンリング』でのWrong Warpは『ダークソウル リマスタード』とは比較にならないほど簡単に再現可能となっている。


『エルデンリング』では、ゲームをロードしなおした時にプレイヤーキャラクターが「不安定な足場」の上にいる場合、エリアの初期位置にスポーンしなおすという仕様が存在する。また、湖のリエーニエに存在する「四鐘楼」というエリアには「崩れゆくファルム・アズラ」への転送門が存在する。ファルム・アズラは本来火の巨人を倒した後のイベントでしか到達することのできないゲーム最終盤のエリア。そして、この転送門で飛ばされる場所はファルム・アズラのメインルートからは隔離されたアイテム回収用の離れ小島となっている。しかし前述の仕様を利用すればこの転送門を利用した後、「不安定な足場」の上でゲームを終了しロードしなおすことでファルム・アズラの初期位置にスポーンしなおすことができるのだ。

このグリッチに利用できる「不安定な足場」にはいくつか候補があり、以前のルートではライカード前の祝福「謁見の道」が利用されていたが、現在はアルター高原の「調香師の隠し洞窟」の祝福が使われている。ワープ地点がすでに「不安定な足場」扱いされているためか、このグリッチは簡単に実行することが可能だ。手順はまず四鐘楼の転送門でファルム・アズラに飛んだ後、マップから調香師の隠し洞窟の祝福にファストトラベル。ロードが終わったらその場でゲームを終了し、タイトル画面からCONTINUEでロードしなおせばそれだけでファルム・アズラの初期地点でスポーンすることができる。四鐘楼にはゲーム開始時点から行くことができるため、ボスを一体も倒さないままファルム・アズラに到達することが可能というわけだ。


しかし現実的には、ゲーム開始直後のステータスと装備でファルム・アズラ以降のボスを撃破することはかなり厳しい。そこでany% Wrong Warpのルートは現在レアルカリアの水車リフトを降りた先にいる敵キャラ・乙女人形によるワープを利用し、火山館を先に訪れている。ここで武器の強化素材や戦技「王騎士の決意」を回収し、レアルカリアで拾える「氷殻の斧」とその戦技「霜踏み」をメイン火力とする。「霜踏み」は威力・範囲ともに非常に強力な戦技となっており、攻略でお世話になったというプレイヤーも多いのではないだろうか。

また、「王騎士の誓い」は次の一撃に強力な倍率アップをかけるバフだ。こちらは「持ち替えた後の武器や反対側の手に持った武器にも効果は乗るものの、効果を発揮してもバフが消費されない」という怪しい挙動を見せることで知られている。この2つの戦技を組み合わせることで「神肌のふたり」や「黒き剣のマリケス」といった終盤のボスを素早く撃破することが可能となるわけだ。

なお、終盤のストーリー上必須ボスである「百智卿、ギデオン=オーフニール」と「戦士、ホーラ・ルー」はそれぞれスキップとAIグリッチが発見されている。前者は木の根を登ることでボスエリアを丸々スルーするもので、後者は柵の上でゲームをロードしなおすことでボスエリアに不法侵入し、ボスのAIを起動しないまま素通りするというものだ。

またラスボスである「エルデの獣」についてもAIグリッチが存在する。このボスはAIの挙動がやや不安定なことで知られており、普通にプレイしていても突然行動してこなくなり棒立ちになるという現象がよく報告されている。具体的な再現方法や原因についてはいまだに不明であるが、「ラダゴンを倒した後に遺灰を召喚し、正面からブレスを誘発させた上でボス背面に回り込む」という手順を踏むと高確率でエルデの獣をフリーズさせることができるようだ。このAIグリッチについては今後より再現性の高いセットアップが発見される可能性は高いだろう。

Any% Wrong Warpに利用されているバグやグリッチの多くは、通常のプレイにおいてもかなり影響度が高いものが多く、今後修正される可能性は非常に高い。『エルデンリング』最初の大型修正パッチがいつになるかは不明だが、このカテゴリにおけるチャートの変化は今後もかなり激しいものになると予想される。また、Wrong Warpを禁止するAny%カテゴリや、従来のフロム・ソフトウェア作品でのAll Bossesに相当する「All Remembrances」という追憶を落とすボスをすべて撃破するカテゴリなども現在研究中となっている。もともとスピードラン人気の高かったフロム・ソフトウェア作品の最新作ということで走者も多く、今後もかなり注目度の高いタイトルであることは間違いないだろう。

なお、Distortion2氏はTwitchにて、現在進行系で『エルデンリング』のスピードランに挑戦中。しばらく更新は続きそうである。





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