仏パブリッシャーNACONが『The Lord of the Rings: Gollum』開発元Daedalic Entertainmentを買収へ。デベロッパーを抱え込む流れ続く


パブリッシャーのNACONは2月16日、パブリッシャー/デベロッパーのDaedalic Entertainmentを買収すると発表した。買収金額は5300万ユーロ(約70億円)で、2022年内には買収手続きを完了する見込みとのこと。
 

 
Daedalic Entertainmentは、2007年設立。ドイツ・ハンブルクに本拠を置くデベロッパーであり、近年はパブリッシャーとしても知られる中堅老舗メーカーだ。デベロッパーとしてはアドベンチャーゲーム『Deponia』シリーズなどを手がけており、パブリッシャーとしては多数のインディーゲームを販売。代表的なところでは、『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』や『Unrailed!』『Witch It』などが挙げられる。

一方のNACONは、以前はBigben Interactiveとして活動していたフランスの大手パブリッシャー。『WRC』『Rugby』『Pro Cycling Manager』『Tour de France』などのシリーズを展開しているほか、今後発売の新作としては『Test Drive Unlimited Solar Crown』や『Steelrising』『Vampire: The Masquerade – Swansong』などが注目されている。さらに、ゲーム周辺機器も開発・販売している。
 

 
またNACONは、小説「指輪物語」(および映画「ロード・オブ・ザ・リング」)をもとにしたアクションアドベンチャーゲーム『The Lord of the Rings: Gollum』の販売も担当する予定で、Daedalic Entertainmentが同作を開発中。両社は、この作品でのパートナーシップをきっかけにして、さらなる協業を見据えて今回の買収発表に至ったという。

この買収により、NACONはAAクラスのゲーム市場をリードする立場を強固なものにし、さらにDaedalic Entertainmentのインディーゲームパブリッシャーとしての側面とのシナジー効果も見込んでいるとのこと。なお、Daedalic Entertainmentの経営陣は続投し、高い自立性をもった活動を今後も継続。NACONは、販売やマーケティングなどにおいてサポートしていくとしている。

ちなみに、Daedalic Entertainmentが販売する直近の新作としては、Zing Gamesが手がけるピンボール&タワーディフェンス『ゾンビ ローラーズ:ピンボール・ヒーロー』が、PC/Nintendo Switch向けに3月2日配信予定だ。日本向けにも発表されており、国内リリースに比較的積極的であることも特徴のメーカーである。
 

 
今回の買収は、NACONにとって過去最大規模の案件になるという。同社はこれまでに、『Styx』シリーズなどで知られるCyanideや、『WRC』シリーズなどを手がけるKylotonn、『GreedFall』の開発元Spiders、『Session』のcreā-ture Studiosなどを傘下に収め、そして今月7日には『Edge Of Eternity』の開発元Midgar Studioも買収したばかりだった。

このように、パブリッシャーが買収によってデベロッパーを抱え込む動きは近年目立っている。代表的なところでは、THQ NordicやKoch Mediaなどを傘下にもつEmbracer Groupが挙げられる。THQブランドの獲得以降積極的に買収を進め、2021年末時点で傘下スタジオは100を超えているという。また、NACONと同じくフランスに拠点を置くFocus Entertainment(旧Focus Home Interactive)は、Deck13やDotemuなどを買収。ソニーやマイクロソフトも、スタジオ買収にて世間を賑わせている。

こうした大手メーカーだけでなく、インディーゲームパブリッシャーによる買収も活発だ。たとえばDevolver Digitalは、CroteamやDodge Roll、Nerialなどのデベロッパーを傘下にもつようになった。ほかにも、tinyBuildやThunderful、Team17、Private Divisionなどが、販売を担当するなど縁のあるデベロッパーの買収を進めている。
 

 
こうした買収の背景について、各社の説明はさまざまであるが、競争が激しい業界のなかにおいて、良質なコンテンツを確保することは大きな狙いとしてあるだろう。また、パートナーとして実力を証明したスタジオを買収する例が多く、すでに良好な関係を築けていることは、買収されるデベロッパーにとっても安心材料となっているのかもしれない。また、デベロッパーが引き続き独立した運営を任されることが多く、これも後押しとなっている可能性がありそうだ。こうした買収の動きは、しばらく続きそうである。