PS4『グランツーリスモSPORT』でトップランカーを破る高性能AIドライバーが誕生。操車テクニックからドライブマナーまで守れる人工知能
株式会社ソニーAIは2月10日、新たなAI「グランツーリスモ・ソフィー」を発表した。PlayStation 4用リアルドライビングシミュレーター『グランツーリスモSPORT』におけるトップランカーに勝利した実績を誇るという。
グランツーリスモ・ソフィーは、株式会社ポリフォニー・デジタルおよび、ソニー・インタラクティブ エンタテインメントとの共同開発によって制作された。新たな深層強化学習プラットフォームを利用して トレーニングされた自律型AI エージェントである。グランツーリスモ・ソフィーは『グランツーリスモSPORT』でトップランカーと対戦するにあたり、トレーニングを通じてさまざまな能力を獲得した。
まず、車の挙動やドライビングライン、および難易度の高いコースを攻略するための精密な操作を深く理解し、レーシングカーを制御することができる。さらに、 刻々と変化するレース状況を元にした瞬時の意思決定が可能。および前走車のすぐ後について追い越すスリップストリームパスや、コーナーで前走車との走行ラインを交差させながら前走車を追い越すクロスオーバーパスといったテクニックを駆使し、レースでの戦術も使いこなす。そして、 衝突を回避したり、対戦相手のドライビングラインを尊重したりと、明確には定義されないレースマナーを守るといった挙動も可能だ。
ソニーAI は、2021年7月2日と2021年10月21日に「Race Together 2021 チャレンジイベント」を2回開催。『グランツーリスモSPORT』の世界最高峰のドライバー4 人とのレースを通して、グランツーリスモ・ソフィーの機能をテストした。7月のイベント結果を元に改善を受けたグランツーリスモ・ソフィーは、10月の第2イベントにて、タイムトライアル および FIA(国際自動車連盟)公認「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ」のレギュレーションに則ったレースの両方で、4名の『グランツーリスモSPORT』トップランカーに勝利したそうだ。
プレスリリースには、グランツーリスモ・ソフィーと対戦したドライバーからのコメントも掲載。「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2020」ネイションズカップ、マニュファクチャラーシリーズ世界チャンピオンとして知られる宮園拓真選手は、レース中は AI と対戦していたことを完全に忘れていたとコメント。また、茨城国体 文化プログラム「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」少年の部 準優勝者である龍翔太郎選手も、「AI エージェントはドライバーにとって素晴らしい相棒になると思います」と伝えている。
今回の成果は、既存のアルゴリズムとインフラストラクチャでは解決できない課題に対して、共同三社が新たな深層強化学習アプローチとプラットフォームを構築することで実現できたという。研究の詳細については、2月10日に発行される科学誌Natureにて「深層強化学習でグランツーリスモのチャンピオンドライバーを凌駕する」というタイトルで論文が掲載予定だ。
今後、ソニーAIとポリフォニー・デジタルは、グランツーリスモ・ソフィーをどのように『グランツーリスモ』シリーズに組み込んでいくかを検討していきたいとのことだ。一般のプレイヤーがAIドライバーとしのぎを削る未来も近いかもしれない。