荷ほどきゲーム『Unpacking アンパッキング』開発元、模倣作品が存在するとして注意喚起。配信からわずか3か月でコピーされ開発者も憤る

Witch Beamは1月25日、同スタジオが手がけ昨年11月に配信したパズルゲーム『Unpacking アンパッキング』を模倣したゲームアプリが配信されているとして、ファンに対し注意喚起をおこなった。

デベロッパーのWitch Beamは1月25日、同スタジオが手がけ昨年11月に配信したパズルゲーム『Unpacking アンパッキング』を模倣したゲームアプリが配信されているとして、ファンに対し注意喚起をおこなった。

『Unpacking アンパッキング』は、新居での荷ほどきをテーマにしたパズルゲーム。段ボール箱からアイテムを取り出しては、各部屋のふさわしい場所に配置していく。アイテムの豊富さやそのディテールの細かさ、配置の自由度の高さ、またアイテムから感じ取れる住民にまつわる物語などにより、非常に高い評価を受けた作品だ。

開発元Witch Beamは、「モバイル環境にて『Unpacking アンパッキング』に妙に似ているゲームの広告を見たことがあるかもしれないが、それは我々が手がけた作品ではない」とツイート。その作品については、「TikTok」などにかなり多くの広告が出されているようで、気づいたファンから同スタジオに報告が寄せられたという。そして、そうした模倣作品はこれまでにも存在したが、今回はアプリストアのランキングでトップにまで上り詰めている状況にあることから、注意喚起をおこなったそうだ。

問題の作品は『Unpacking Master』というゲームアプリだ。iOS/Android向けに、今年1月に無料配信(広告あり)開始した模様。ゲーム内容はというと、段ボール箱から次々にアイテムを取り出して、ステージである部屋に配置していくというもの。アイテムごとに置くべき場所が設定されており、すべて正しく配置すればクリアとなり次のステージへと進む。

こうしたゲームプレイは『Unpacking アンパッキング』にかなり似ている。アイソメトリック視点で、空間に部屋が浮かんでいるようなステージ表現も同じ。さらに上のツイートにて示されているように、ステージによっては部屋の構成や家具の種類・配置までそっくりであり、『Unpacking Master』は『Unpacking アンパッキング』から影響を受けて制作されたとみて間違いないだろう。


『Unpacking Master』は、SayGamesというパブリッシャーから配信されており、開発元は[HN]&Alex Ilinと表記されている。[HN]の詳細は不明だが、Alex Ilinとはロシアのインディー開発者Alexander Ilin氏のことかもしれない。同氏はHolyWaterGamesの設立者・ゲームデザイナーとしてパズルゲーム『Feed Me Oil』シリーズを手がけたことで知られ、近年はSayGamesに複数の作品を提供している。ただ、現時点ではポートフォリオに『Unpacking Master』は掲載しておらず、実際に関与しているかどうかは不明。

SayGamesは、いわゆるハイパーカジュアルゲームを中心に展開しているパブリッシャーだ。ハイパーカジュアルゲームは、広告によりユーザーの流入を得てさらに広告で収益を上げる、アドネットワークを活用したビジネスモデルを採用するカジュアルゲームのこと。『Unpacking Master』においても多数の広告が打たれていたことで、今回の問題が発覚したのだろう。

同作ではそうしたビジネスモデルが上手くはまったのか、米国App Storeでは、現時点で無料アプリのランキングで1位となっている。「TikTok」や「YouTube」「Instagram」などを上回る人気だ。『Unpacking アンパッキング』の開発元Witch Beamの地元オーストラリアやイギリスでは4位に位置している。またGoogle Playにおいても、米国では12位と高順位につけている。ちなみに、日本ではあまり注目されていないようだ。

Image Credit: App Annie


そうした人気を得ている『Unpacking Master』に対しては、Witch Beamのアートディレクター・デザイナーのWren Brier氏が怒りをあらわにしている。同作は、『Unpacking アンパッキング』の部屋全体のレイアウトから個々のアイテムまでを“丸パクリ”していると指摘。また同スタジオも、小さなインディースタジオとして何年もかけて制作した作品が、配信からわずか3か月でコピーされたと憤る。さらに、『Unpacking アンパッキング』にて成功を得たとはいえ、模倣作品を随時追跡し対処する余裕まではないとして、やるせなさも吐露している。

特にモバイルゲームにおいては、人気作を模倣したアプリが問題視されることが時折起こる。たとえば、先述したハイパーカジュアルゲームのトップ企業であるVoodooは、『Ridiculous Fishing』風の『The Fish Master!』や『Desert Golfing』風の『Infinite Golf』など、複数のクローンゲームを配信し批判を浴びた。

また、同社の人気作『Hole.io』においても、インディー開発者Ben Esposito氏が手がけた『Donut County』のアイデアを盗用したとして同氏から指摘。開発中から注目を浴びていた『Donut County』が完成する前に『Hole.io』がリリースされ、ストアランキングのトップに躍り出ることとなった(関連記事)。こうした背景には、ゲームのアイデアそのものは一般的に著作権法の保護対象にならないとされている事情があり、クローンゲームの出現を防ぐことはなかなか難しいようだ。


『Unpacking アンパッキング』と『Unpacking Master』をあらためて比べてみると、基本的なコンセプトやゲームプレイはほぼ同じといえる。ただ、アイテムを置いた際の音がそれぞれ異なる点や、時代を追って住人の人生を感じ取る物語性など、こだわりの詰まった造り込みや奥深さは本家には及ばない印象である(関連記事)。

とはいえ、ストアでの『Unpacking Master』のユーザーレビューでは、某著名配信者のプレイを見て入手したとのコメントがみられる。その配信者が実際にプレイしていたのは『Unpacking アンパッキング』の方だったため、誤認するユーザーも生まれているようだ。こうした状況は、ともすればWitch Beamに対する誤った評判に繋がる可能性もあるだろう。

なお本稿執筆時点では、『Unpacking Master』のiOS版はストアには表示されるが入手できない状態にある。前出のWren Brier氏は事情を知らない様子なので、Witch Beamとして対処したわけではなく、ユーザーからAppleに対し何らかの報告が寄せられたのかもしれない。あるいは販売元SayGamesが自主的に取り下げた可能性もあるだろう。ただ現時点では、特に声明などは出されていない。

本家である『Unpacking アンパッキング』は、PC(Steam/Humble Store/Microsoft Store)/Nintendo Switch/Xbox One向けに配信中だ。Xbox Game Pass向けにも提供されている。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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