チェルノブイリ・サバイバルFPS『S.T.A.L.K.E.R. 2』向けに、“NPCになれる”NFTアイテムが発表されるもファンから批判。開発元が説明に追われる

デベロッパーのGSC Game Worldは12月15日、現在開発中のサバイバル・ホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobyl』について、NFTプラットフォームDMarketと提携して「S.T.A.L.K.E.R. Metaverse」を展開すると発表した。本作に関するNFTアイテムを提供するという。

デベロッパーのGSC Game Worldは12月15日、現在開発中のサバイバル・ホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobyl』について、NFTプラットフォームDMarketと提携して「S.T.A.L.K.E.R. Metaverse」を展開すると発表した。本作に関するNFTアイテムを提供するという。

本作は、原発事故が発生したチェルノブイリを舞台にするサバイバル・ホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズの最新作だ。本作の世界では、2回目の爆発事故によりゾーンと呼ばれる危険なエリアが発生。プレイヤーは、エリア内に存在するとされる宝や謎を求めて、放射能汚染と異形のモンスターが存在するゾーンの探索に挑む。本作はUnreal Engine 5を用いて開発中であり、緻密に描かれたビジュアルなどが話題となっている。
 

 
今回発表された「S.T.A.L.K.E.R. Metaverse」を通じては、2022年1月にNFTアイテムのオークションが実施される。アイテムの内容はというと、『S.T.A.L.K.E.R. 2』のNPCになれる権利だ。フォトグラメトリ技術により、購入者の顔や表情の動きなどをリアルに再現したメタヒューマンを作成し、ゲーム内に登場させるという。

ストーリーなどに絡むキャラクターとなる可能性はあるが、あくまでNPCのため、プレイヤーのゲーム体験に影響したり、何らかのアドバンテージを得られたりといったことはないとのこと。また、完全にオプションであると説明されていることから、同NPCを登場させるか否かはプレイヤーが選択できるようだ。

NFTアイテムはオークションだけでなく、ファンに無料で提供する機会も設けられるという。そしてNFTアイテムであるため、市場で自由に売買することができる。所有者が移れば、該当するNPCの顔も変更されるものと思われる。
 

 
今回の発表に際してGSC Game WorldのCEO Evgeniy Grygorovych氏は、ゲーム業界における現在のトレンドを考えると、没入感のあるゲーム体験という以上のものを提供できるとコメント。ゲーム内にて、プレイヤーの存在をより大きく示すことが可能だとし、本作はそうした機会を提供する最初のAAAタイトルになるだろうと述べる。それがすなわち、NFT技術を利用した“NPCになれる権利”ということのようだ。

ただ発表に対しては、批判的な意見が数多く寄せられている。ファンをNPCにするというアイデアに対してではなく、NFTを利用するという点についてだ。NFT(Non-Fungible Token・非代替性トークン)とは、ブロックチェーン技術を用いてデジタルデータに所有権の証明を発行する技術のこと。その可能性についてはさまざまな業界で注目されているが、一方で投機対象として過熱気味であるとか、投資詐欺などに利用されているとの指摘が一部にある。また、ブロックチェーン取引における電力使用が、環境負荷に繋がっているとの懸念も根強い。

Grygorovych氏がいうように、確かにゲーム業界でもNFTを取り入れる動きが出てきている。先日には、ユービーアイソフトも独自のプラットフォームを立ち上げた(関連記事)。ただ、上述した理由などにより、NFTに対しては一種の胡散臭さを感じるゲーマーは少なくないようで、発表がおこなわれるたびに批判にさらされる状況にある。
 

https://twitter.com/stalker_meta/status/1471128688112676864

 
『S.T.A.L.K.E.R. 2』においても、これまで大きな期待を集めていただけに落胆する声が多い模様。これに対しGSC Game Worldは、導入するNFTアイテムはゲームプレイに必須あるいは影響を及ぼすものではまったくないとしたうえで、『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズにおけるMod文化を促進することが目的であると説明した。Modコミュニティは、今回の取り組みを通じて制作されたコアアセットを活用できるようになるそうだ。

また、同シリーズのプレイヤーベースが、従来のファンからNFT取引目的の人々に置き変わるだろうという懸念の声に対しては、99.9%のプレイヤーは、このNFTアイテムを利用しないだろうとコメント。NFTアイテムはあくまで付帯的な存在と位置付けているようで、同スタジオとしては本作の開発に集中し、完全なゲーム体験をファンに届けるとした。なお環境負荷に関しては、通常のAWS(Amazon Web Services)サーバーと同程度だと説明している。
 

https://twitter.com/stalker_meta/status/1471126535927218182

 
開発元は、多くの批判の声に対して説明に追われている状況だ。上に挙げた以外にも、ファンをNPCにすることやModの促進に、なぜNFTが必要なのかという疑問の声も寄せられている。同スタジオは、寄せられた数々の懸念に対し心配には及ばないとし、近い将来に明確にすると約束した。

『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobyl』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/Xbox Series X|S向けに、2022年4月28日発売予定だ。Xbox Game Pass向けにも提供される。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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