Bohemia Interactiveが新ゲームエンジン「Enfusion Engine」を発表。『Day Z』でも一部採用された次世代エンジン


Bohemia Interactiveは12月16日、自社が開発する新たなゲームエンジン「Enfusion Engine」を発表した。これまでReal Virtuality EngineやEnforce Engineといった独自エンジンで開発を進めてきたBohemia Interactiveだが、将来的な開発の中心はEnfusion Engineが担っていくという。
 

 
Bohemia Interactiveは、チェコ・プラハに拠点を置く開発企業だ。軍事シミュレーション『ARMA』シリーズなどで知られており、同作や『Day Z』などでは独自の開発エンジンReal Virtuality Engineが用いられていた。一方、火星開拓シミュレーション『Take On Mars』ではBohemia Interactiveは別の独自エンジンEnforce Engineを使用。そして、今回発表されたEnfusion Engineはその両者の長所をあわせもったエンジンとなるようだ。『Day Z』の一部でもすでにEnfusion Engineが採用されていたという。

新エンジンは、Real Virtuality Engineにおけるスケールやマルチプレイヤーのキャパビリティ、シミュレーションの奥深さなどを兼ね備えつつ、Enforce Engineにおける明快な構造、移植性、ユーザーフレンドリーな設計も備えているという。20年間にわたるゲームエンジン開発の経験がパッケージ化された強力なツールセットになっているわけだ。

Enfusion Engineはクロスプラットフォームで利用が可能。PC、Xboxプラットフォーム、PlayStationプラットフォームでの開発に対応しているという。またPC、Xboxプラットフォームの場合はDirectX 12をサポートしている。エンジンのコアはC++プログラム言語および、Enforceというスクリプト言語で記述されている。シェーダーはHLSLで書かれたものがレンダリングに使われているそうだ。
 

 
したがって、Enfusion Engineで開発されたゲームのオーディオビジュアルデザインは、将来を見据えたものになるという。最新のプロセッサとグラフィックカードのリソース使用率を最適化することで、要求の厳しいシミュレーションでもスムーズな操作と安定したレンダリング周波数が可能。また開発にあたっては、ネットワークコードにおけるかなりの改善に注力されており、マルチプレイヤーの体験も改善されているという。

またEnfusion Engineにおいて大きな機能とされているのが、「Enfusion Workbench」だ。本機能により、開発者は簡単にゲームや開発中のModの属性を変更することができるという。仮想空間を設計するWorld Editorや、ビジュアルエフェクトを編集できるParticle Editor、Enforce言語でスクリプトの記述とデバッグができるScript Editorなど、数多くのエディターツールがひとまとめになっているようだ。またワークベンチはBohemia Interactiveのバックエンドシステムと緊密に接続されているという。これにより、開発用ツールだけでなく、Enfusion Engineで稼働するすべてのゲームにおけるModの作成と配布が可能だそうだ。

なおEnfusion Engineは、現在の業界標準を念頭に置いて構築されているという。 たとえば、Enfusion Engineで既存のFBXモデルを使用し、それらにPBRライティングを適用することも可能。 過去にほかのエンジンを使用したことがある場合は、馴染みやすいインターフェースとツールになっているようだ。
 

 
Enfusion Engineの開発はまだまだ途上であるとのこと。同エンジンを段階的に進化させていくことは、Bohemia Interactiveの最優先事項であるという。エンジンそのものは、開発者ツールやユーザードキュメントとともに、近々公開されるとのこと。その際には、同エンジンの機能を確認出来る最初のプレイアブルなデモがリリースされるそうだ。なおBohemia Interactiveは、現時点では、開発者にEnfusion Engine のライセンスを供与することは検討していないという。特定のソフトウェアのライセンスを取得する必要はないため、Blenderなど、無料またはオープンソースのアプリケーションがEnfusion Engine のワークフローで利用可能だそうだ。

Enfusion Engineは現在開発中。具体的なリリース予定は今のところ不明だ。