国内の個人開発者るっちょ氏は12月11日、自作ゲーム試遊展示サービス「Nora」を公開した。同サービスでは、開発者のPCでゲームを実行しながら、リモートでユーザーが試遊できるという。
Noraは、自作ゲームをオンラインで展示・試遊できるプラットフォームだ。本サービスでは、ユーザーが「開発者のPCで」ゲームをプレイすることが可能。開発者は自分のPCでゲームを実行し、その映像/音声を専用アプリを使ってNoraにリアルタイム配信する。プレイヤー側はNoraのウェブサイトでゲーム映像を視聴し、PC/スマホにつないだゲームコントローラーや画面上のバーチャルパッドを使ってゲームを遊ぶことができるのだ。
入力操作はリアルタイムで開発者のPCに送信され、あたかも直接コントローラーを繋いでいるかのようにゲームを操作可能。つまり、「体験版を配信する」のではなく、「開発者のPCでユーザーがゲームをプレイする」状態をリモートで再現できるわけだ。
なぜ、体験版配信ではなく、Noraのようなサービスが必要なのか。その背景には、昨今のゲームイベント事情がある。インディーデベロッパーにとって、イベントに出展し、ユーザーに目の前で自作ゲームを遊んでもらう機会は非常に貴重だ。開発の方向性を確認したり、問題点を発見したり、より多くの人に作品を知ってもらうことができる。体験版を配信するよりもリアルタイムに、生の声やリアクションを目にすることができるわけだ。
しかし、コロナ禍の影響により、こうしたイベントの機会や規模が縮小。開発者が直接ユーザーからフィードバックを得るチャンスが少なくなってしまった。さらに、開発中のバージョンを実行ファイルとして配布するのは、開発者としては避けたい場合もある。やはり、体験版をわざわざ用意するのと、イベントで気軽に遊んでもらうのとでは、事情が異なるわけだ。そこで、あたかも「イベントのブースでゲームを試遊する」ような状態をリモートで再現するべく開発されたのが、Noraである。
また開発者のPCで遊んでもらうメリットとして、どれだけスペックを要求するゲームであろうと、遊んでもらえる点が挙げられる。ユーザーはあくまで配信された映像を表示するだけなので、開発者側のPCで動作さえしていれば、問題なく遊べるわけだ。プレイヤー環境はブラウザ上で動くので、スペックの低いPCでも、スマホでもプレイできる。また、プレイヤーのコントローラー入力は、仮想コントローラーデバイスとして開発者のPCに反映される。そのため展示するゲームがコントローラー操作に対応してさえいれば、ゲーム側に特別な対応は必要ないという。
ユーザー側の画面にはメインのゲーム画面のほか、開発者や参加者と会話できるテキストチャットも表示。ゲームの説明や感想をやりとりできる。また、ゲームを遊びたいユーザーが複数いる場合は、「待機列システム」によって参加者を管理。ブースに参加すると、ユーザーは待機列の最後尾に並んで順番待ちすることになる。まさに、イベント会場の試遊ブースがそのまま再現されているのだ。一方、開発者側は専用ツール「NoraHost」を使用して試遊ブースを設営することとなる。これらの手順は、公式サイトのガイドに詳しい。
Noraは今のところ、開発途上のベータ版のようだ。今年3月時点では映像や入力の遅延などの課題も挙げられており、今後改善が続けられていくことだろう。Noraはこちらの公式サイトより利用可能。なお開発者るっちょ氏は現在、幽体離脱2Dアクションゲーム『地下楼』を制作中。今後、Noraで同作を遊べる機会もあるかもしれない。
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