NFTプラットフォーム「Ubisoft Quartz」海外向けに発表。ゲーム内での利用や、市場での売買が可能なNFTアイテムDigitを提供
ユービーアイソフトは12月8日、独自のNFTプラットフォーム「Ubisoft Quartz」と、それを通じて提供されるNFTアイテム「Digit」を海外向けに発表した。現在販売中の『ゴーストリコン ブレイクポイント』のPC版を対象に、12月9日からベータテストを実施する。
今回ユービーアイソフトが発表したDigitは、NFTにより唯一性をもたせた、同社タイトル向けのゲーム内アイテムの総称である。NFT(Non-Fungible Token・非代替性トークン)とは、ブロックチェーン技術を用いてデジタルデータに所有権の証明を発行するものであり、近年はデジタルアートなどでの利用が広がりつつある。またゲーム業界においても、ゲーム内アイテムなどを対象にした採用例がみられるようになってきた。
Digitは、ハイクオリティかつ個性的なゲーム内アイテムとして用意され、Ubisoft Quartzを通じて入手し、対応ゲームにて使用できる。Digitごとにシリアルナンバーが付与され、現在また過去の所有者が記録。シリアルナンバーに関しては、ゲーム内ではほかのプレイヤーからも視認可能とのこと。そして通常のゲーム内アイテムとの最大の違いは、ユービーアイソフトのエコシステム外にて売買が可能なことだ。NFTアートなどと同じように、市場で取引できるという。
Ubisoft QuartzとDigitは、真のメタバースを構築するという同社の野心的なビジョンの実現に向けた第一歩として、Ubisoft Strategic Innovation Labが4年の研究の末に開発。プレイヤーが、本当の意味で同社タイトルのステークホルダーになることができる、新たな価値を提供するとしている。
今回の発表に対しては、ゲーマーから大きな反響が寄せられている。多くはネガティブな反応である。冒頭に掲載したトレイラーでは、本稿執筆時点で、好評数がわずか約700件であるのに対し、不評が約1万3000件も投じられている状況だ(YouTubeでは不評数が非表示となっているが、ブラウザの拡張機能にて開示可能)。上のユービーアイソフトの発表ツイートに対しても、理解を示す意見がないわけではないが、批判的なコメントが大量に寄せられている。
NFTを活用した取引には、現状として投機的な側面が指摘されている。また、デジタルデータは容易にコピー可能であり、ゲームの場合はサービスが終了することもあることから、NFTが証明する価値に対して懐疑的な見方をする人もいる。くわえて、NFTに関しては環境負荷への懸念も根強い。ブロックチェーン取引の根幹となる、ネットワーク上でのプロセスにおける電力使用量が多く、ひいては温室効果ガスの排出増加に繋がっているという意見だ。
今回の発表にてユービーアイソフトは、このうち環境負荷について説明している。それによるとUbisoft Quartz/Digitでは、初期のブロックチェーン技術が採用するProof-of-Workプロトコルではなく、Proof-of-Stakeプロトコルを採用するTezosを利用。Tezosでは、1取引あたりの電力使用量が前者よりも100万倍少ないとして、環境負荷の少なさをアピールしている。また、今後もエネルギー効率の高い技術のみを使用すると約束した。
Ubisoft Quartzは、アメリカやカナダ、フランス、ドイツ、オーストラリア、ブラジルなど欧米9か国にて、12月9日からベータテストを開始予定。現時点では、日本向けには提供されない。そして早期参加者向けとして、3回に分けて無料のDigitが提供され、『ゴーストリコン ブレイクポイント』のPC(Ubisoft Connect)版にて利用できるとのこと。参加資格は、18歳以上のXPレベル5以上のプレイヤーとされている。また、2022年前半にはさらなるDigitが提供予定だ。
提供されるDigitの内容としては、装備品や武器、車両などで、ゲームプレイには影響しないコスメアイテムに限定されるという。また、従来からある『ゴーストリコン ブレイクポイント』のゲーム内アイテムも引き続き提供され、既存プレイヤーのゲーム体験が変化することはないと説明されている。ちなみに、Ubisoft Quartz利用者がゲームにてBANされた場合は、Digitの保有や売却には影響しないが、BAN期間中は外部市場経由を含め新たなDigitは入手できないとのこと(GamesIndustry.biz)
ユービーアイソフトは、各Digitの唯一性や、プレイヤーに与えられたマネタイズの自由などについて、どのように受け入れられるのかを注視していきたいとしている。先述したとおり、ゲーマーからは必ずしも歓迎されているとはいえないUbisoft Quartzではあるが、ベータテストを通じて今後どのように展開されていくのか注目される。