荷ほどきゲーム『Unpacking アンパッキング』の「音」のこだわりがすごい。1万4000種類ものサウンドを収録し、各アイテムの音を表現

Witch Beamが手がけたパズルゲーム『Unpacking アンパッキング』の「音」が話題を呼んでいるようだ。物を置くたびに変わる音。

パブリッシャーのHumble Gamesは11月2日、Witch Beamが手がけたパズルゲーム『Unpacking アンパッキング』を配信した。対応プラットフォームはPC/Nintendo Switch/Xbox One。

本作は、新居での荷ほどきをテーマにした作品だ。段ボール箱からアイテムを次々に取り出し、自室やリビング、キッチン、浴室などに配置していく。オモチャや文具、調理用品や家電、その他生活用品などが多数登場し、それらは自由に配置可能である。小規模な作品ながら、精緻なドット絵で表現されたアイテムからは、並々ならぬこだわりが見て取れる。ただ、本作のこだわりはそれだけではなく、「音」にもあるようだ。


『Everybody’s Gone to the Rapture -幸福な消失-』などで知られるデベロッパーThe Chinese RoomのシニアサウンドデザイナーFrancesco Del Pia氏は11月4日、驚きを示すコメントとともに、『Unpacking アンパッキング』のゲームプレイ映像をTwitterに投稿した。映像の内容はというと、何かのスプレー缶をさまざまな場所に置いては拾ってを繰り返すというもの。一見なんてことのない映像だが、ゲーマーやゲーム開発者などから多くの反響が寄せられている。

というのも、スプレー缶を置いた際の音をよく聴くと、浴室の床やベッドルームの床、トイレの便蓋、タンク、洗面台、洗濯機、ベッドの布団、勉強机、ダイニングテーブル、段ボール箱など、場所によってすべて異なるのだ。また同じ場所であっても、繰り返し置くと微妙に異なる音が聴こえることもうかがえる。

こうした音の違いが表現されているのは、もちろんこのスプレー缶だけではなく、あらゆるアイテムが対象。硬いスプレー缶と、柔らかいぬいぐるみでは、置いた際の音は当然異なるだろう。また、似たような素材のアイテムでも重量感が異なれば設置音に影響し、そうしたディテールがきちんと表現されているのだ。アイテム同士を重ね置きした場合も同様である。さらに、中に何か入っているアイテム、たとえばブタの貯金箱を置いたり運んだりして揺れた際には、ジャラジャラという小銭の音が聞こえてくる。


本作のアイテムには、実物などを用いて録音されたサウンド(フォーリーサウンド)が使用されているそうだ。録音を担当したAngela van Dyck氏によると、本作には実に1万4000種類の音声ファイルが収録されているという。公開された資料には、膨大な数のアイテムのチェックリストが確認でき、コメントからも大変な仕事だったことがうかがえる。シンプルかつ小規模なドット絵ゲームであるにもかかわらず、約1GBものサイズがあるのは、アイテムのサウンドがとにかく多いためかもしれない。

また、本作のサウンドデザインを担当したJeff van Dyck氏は、本作にはサウンドが活躍できる時間と空間がたくさんあったと振り返る。解像度的にドット絵では表現しきれないディテールを、サウンドデザインによって補完したそうだ。確かに本作では、アイテムそれぞれの音がリアルなため、実際にそのアイテムを手にしているかのような感覚を味わえる。同氏は、Angela氏と数多くのミーティングを重ねた末に本作のサウンドを実現したと語り、仕上がりには満足しているとコメントしている。

本作を手がけたWitch BeamのゲームデザイナーSanatana Mishra氏は、こうしたサウンドデザインは時間のかかる仕事であり、正しく表現できた作品では、“目に見えない存在”になると語る。しかし不自然な表現にしてしまうと、プレイヤーはたちまち違和感としてそのサウンドを認識するだろうとし、作品に溶け込むサウンドデザインがいかに重要かを述べている。


本作は、各アイテムをふさわしい場所に配置するというパズルゲームの側面をもつが、そうした仕様はオフにすることも可能。一般常識にはとらわれない自由な配置にて、ゲームを進めることもできるのだ。アイテムの配置は向きを含め細かく調整でき、また引き出しを開けて中に収納したり、本の並び順を変えたり、服をハンガーにかけたり畳んで重ねたりなど、かなり自由度が高い。自分好みの部屋を、黙々と作り上げることができる作品である。興味のある方は本作を手にし、アイテムごとの音にも耳をすませてみると良いだろう。

『Unpacking アンパッキング』は、PC(Steam/Humble Store/Microsoft Store)/Nintendo Switch/Xbox One向けに国内配信中。Xbox Game Pass向けにも提供されており、ゲーム内は日本語表示に対応している。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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