Activisionは10月14日、新たなチート対策システム「RICOCHET Anti-Cheat」構想を発表した。『Call of Duty: Vanguard』の発売とともにローンチされ、年内には『Call of Duty: Warzone』にもPacificアップデートとともに導入されるという。
RICOCHET Anti-Cheat構想は、チートに対抗するための複数のアプローチから構成されるとのこと。具体的には、チート行為特定のための分析を監視する新たなサーバー側ツール、チーター撲滅のための調査プロセス改良、アカウントのセキュリティ強化のためのアップデートなどのアプローチを採用しているという。
RICOCHET Anti-Cheatでとくに注目したいのが、サーバー側の機能強化に加え、新たにPCカーネルレベルドライバが同梱される点である。カーネルレベルドライバとは、通常のソフトウェアよりも強い権限をもつソフトウェアのことだ。通常のユーザーレベルのソフトウェア、たとえばWordやExcelなどはPCのハードウェアにアクセスする権限をもたないのに対し、カーネルレベルドライバはコンピュータハードウェアのすべてにアクセスすることが可能。たとえばグラフィックカードドライバのチェックなどをおこなうことができる。つまりRICOCHET Anti-Cheatのカーネルレベルドライバによって、より強い権限でPC上の不正ツールなどを検知することができるというわけだ。
RICOCHET Anti-Cheatにおけるカーネルレベルドライバは、『Call of Duty: Warzone』に干渉しようとするアプリケーションを監視し、報告することが可能。RICOCHET Anti-Cheatチームにより、マシンが不正なプロセスでゲームを操作していないか判断することができるという。カーネルレベルドライバについては、まずは『Call of Duty: Warzone』にてPacificアップデートとともに導入される。同アップデート後ゲームをプレイする際には、カーネルレベルドライバが必須となる。そして、追って『Call of Duty: Vanguard』にも実装されるそうだ。さらに、カーネルレベルドライバの拡張機能によって、クロスプレイでPCプレイヤーと対戦するコンソールプレイヤーも“その恩恵を受けることが可能”であるという。
気になるのは、外部ソフトウェアにカーネルレベルの強い権限を預けることへの安全性の懸念だ。通常のユーザーレベルではなくカーネルレベルドライバが必要になる理由としてActivisionは、「チートソフトウェアの進歩により、従来のセキュリティアプローチを回避できるようになっている」ためであると回答している。
また、RICOCHET Anti-Cheatのカーネルレベルドライバは『Call of Duty: Warzone』をPCでプレイしている間「のみ」動作するとのこと。 RICOCHET Anti-Cheatのドライバは常にオンの状態になっているわけではなく、『Call of Duty: Warzone』をシャットダウンする際にドライバはオフになると明言している。同時に、RICOCHET Anti-Cheatのドライバが監視するのは、あくまで『Call of Duty: Warzone』とインタラクションをおこなうソフトウェアやアプリケーションであると、線引きを明確にした。
マルチプレイFPSにおいてカーネルレベルでのチート対策がとられたのは、『Call of Duty』シリーズが初めてではない。Riot Gamesの『VALORANT』も同様の施策をとり、大きな議論を呼んだ。「Riot Vanguard」と呼ばれるソフトウェアは、VALORANTの起動に合わせて常駐するクライアントと、PCの起動と同時にオンになるカーネルドライバが併用されている。同ソフトウェアについても安全性の問題などが議論されていたが、現在に至るまでゲームに適用され続けている。Activisionもこうした過去の議論などを踏まえ、セキュリティ面の懸念事項について入念に説明を述べたうえでカーネルレベルドライバの導入に踏み切ったようだ。ユーザーからの理解が得られるか、そして実際にチート対策の効果を得られるのか。今後の運用についても大きな注目が集まる。
RICOCHET Anti-Cheatは11月5日発売の『Call of Duty: Vanguard』とともにローンチ予定。PCカーネルドライバは『Call of Duty: Warzone』におけるPacificアップデートとともに導入される予定だ。