スクエニ傘下のEidos-Montréalが週4日勤務制へ移行。『Marvel’s Guardians of the Galaxy』開発元は金曜も休日
Eidos-Montréalは10月7日、週4日勤務制へ移行することを発表した。金曜日はスタジオを閉鎖して休日にするという。対象となるのは、カナダのモントリオールにあるEidos-Montréalと、同国シェルブルックにあるEidos-Sherbrookeの2つのスタジオ。従業員の労働環境や給与はそのまま、週40時間から週32時間へ勤務時間を減らすようだ。
Eidos-Montréalは、カナダのモントリオールを拠点とするスクウェア・エニックス傘下のゲーム開発会社。現在は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のアクションゲーム『Marvel’s Guardians of the Galaxy』を開発中。また『Marvel’s Avengers (アベンジャーズ)』や、『Deus Ex: Human Revolution』、『Deus Ex: Mankind Divided』、『Tomb Raider』シリーズなどAAAクラスのゲームを開発してきたデベロッパーだ。
Eidos-MontréalのヘッドであるDavid Anfossi氏が、公式サイトへコメントを寄せている。週4日制へ移行する理由のひとつは、従業員の充足度を心身ともに高めつつ、業務効率を向上させること。単に勤務時間を4日間へ圧縮するのではなく、投資した時間の質を高めたいという。効率化の具体例として60分の社内会議を30分に短縮することを挙げ、不要な時間を削減し効率性を高めたいと語っている。
週4日勤務制へ踏み切ったきっかけとして、リモートワークがあるようだ。現在新型コロナウイルス感染症によって、Eidos-Montréal含む多くのゲーム開発会社がリモートワークを余儀なくされている。同スタジオはすでに、リモートワーク向けの福利厚生の準備を進めており、休息期間の実施や個人的なファイナンシャルアドバイザーや遠隔医療サービスの利用、メンタルヘルスケアやトレーニングのサポートなどを用意してきたという。そうしたリモートワークによる社内環境の変化で、効率を維持したまま週4日勤務制へ移行できると判断したようだ。
リモート移行や福利厚生の変化に際して、Eidos-Montréalはビッグスタジオとして「週4日勤務」という挑戦を始めるわけだ。新型コロナウイルスの感染拡大以降業界内でリモートワーク勤務が増えており、そのほかの会社もまた、働き方を変えようとしている。
たとえば、『ライフ イズ ストレンジ』シリーズや『Tell Me Why』で知られるDONTNOD Entertainmentは、リモートで仕事をするかオフィスで仕事をするか従業員が選ぶことができる。リモートワークを選べば、自宅で会社の用意した仕事道具で作業ができるし、もちろん出勤した際もフレックス用のデスクで作業ができる。2020年10月時点のアンケートでは、スタジオの87%もの従業員がリモートワークを望んでいたという。
また『オクトダッド -タコと呼ばないで-』や『Bugsnax』を手がけたYoung Horsesも、週4日勤務制へ恒久的に移行したようだ。海外メディアAXIOSへスタジオの共同設立者Phil Tibitoski氏が語っている。同スタジオは今年の7月から試験的に週4日勤務を開始し、そのまま継続することにしたようだ。この試みはスタジオメンバー8人の全会一致で始まったという。ただしYoung Horsesは以前から勤務時間が週35時間であり、これが3時間だけ減って週32時間になるというのも週4日勤務制が可能な理由のようだ。
またデンマークのインディースタジオDie Gute Fabrikも、新型コロナウイルス感染拡大を機に週4日勤務制へ移行した。公式ブログでは週4日勤務で起きた変化や反省点が綴られている。結論としては生産性が向上したとのこと。ちなみに『オリとくらやみの森』のデベロッパーMoon Studiosは、2010年に設立された時点で20人以上がフルリモートで働いていた。10年以上リモートワークで開発をおこなってきたスタジオになるわけだ。現在は世界43か国から80名以上がスタジオに所属しているという。またEidos-Montréalの親会社であるスクウェア・エニックスは昨年12月より在宅勤務を恒久的に制度化。「ホームベース(平均週3日以上在宅で勤務)」「オフィスベース(平均週3日以上出勤)」の2方式で、柔軟な働き方の実現を試みている。
ゲーム開発のリモートワーク化が進む中、求人情報を掲載するサイトRemoteGameJobs.comが2020年から運営開始されたのも象徴的。その名前のとおり、リモートワークで働けるゲーム開発の仕事を専門に掲載する求人サイトだ。求人の一例として、『GRIME』で知られるAkupara Gamesは、シニアUnity開発者の求人を掲載。第二次大戦FPS『Beyond the Wire』のRedstone Interactiveはプログラマーの求人を掲載している。もちろん、いずれの求人も完全にリモートワークである。ゲーム開発のリモート化が進み、また求人の傾向にも変化が起きているのかもしれない。
ゲーム制作では、期日に間に合わせるために長時間の労働を行うクランチと呼ばれる習慣がとくに海外で問題視され、労働環境の健全化は大きな問題となっている。一方、新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワーク化が進み、自宅で働くことも可能になってきた。そして労働問題が顕在化する一方で、積極的に改善に動いている企業も存在する。週4日勤務制やリモートワークで、クランチを必ずしも回避できるとは限らない。しかし健康的なゲーム開発環境を整えるうえでは、週4日勤務制もリモートワークも重要な要素であることは間違いない。そして、こうした勤務体系にてゲームを開発するEidos-Montréalが、良き作品を生み出すことを切に願いたい。
Eidos-Montréalが手がける『Marvel’s Guardians of the Galaxy』は、10月26日発売予定(PC版は10月27日)。対応プラットフォームはPlayStation 5/PlayStation 4/Xbox Series X|S/Xbox One/PCとなっている。