『Apex Legends』で「不具合改善・品質向上」専用シーズンを実施する案に、開発者が反応。オペレーション・ヘルスは是か非か
『Apex Legends』にて、今後のアップデート方針を考える議論が注目を集めているようだ。新コンテンツの追加を控え、バグ修正や不具合の改善にのみ注力する「オペレーション・ヘルス(Operation Health)」の実施の是非が問われ、開発者が反応を返している。
オペレーション・ヘルスとは、もともと『レインボーシックス シージ』にて実施された施策だ。本来は1シーズンごとに新たなコンテンツを追加していくところ、オペレーション・ヘルス中は一切のコンテンツ追加を休止。代わりに技術的な品質改善や集中的なバグ修正など、既存コンテンツのブラッシュアップ、環境安定に向けて注力していくという試みだ。『レインボーシックス シージ』においては2017年に実施。ロードマップを大きく変更しての実験的な施策として注目を集めた。
そして現在、オペレーション・ヘルスを『Apex Legends』にも取り入れてはどうかという意見が挙がっている。こうした声は、今シーズン「エマージェンス」が開幕して以降見られるようになった。とくに先週から今週にかけては、『Apex Legends』においてサーバートラブルが発生しており、「マッチに接続できない」「ゲームがクラッシュする」などの不具合が頻発。現在抱えている既存の不具合も多く、環境の改善を求める声が高まるとともに、品質向上に注力したシーズンの実施を求める声が高まっているのだ。
そして海外掲示板Redditでは、開発者に直接オペレーション・ヘルス実施の可否を問う動きが出てきた。とあるスレッドで、一人のユーザーが開発者RobotHavGunz氏に同問題を直撃している。RobotHavGunz氏は「あくまで個人の意見」であるとしつつ、質問に回答。オペレーション・ヘルスのアイデアを「気に入っている」としつつ、実際には「効果的ではない」だろうとしている。
RobotHavGunz氏は自身の業務内容がおもにバグ修正であることから、オペレーション・ヘルスの案そのものについては好意的だという。しかし実際に導入するとなると、オペレーション・ヘルスの実施中は業務の大部分をバグ修正が占めることになる。その場合、バグ修正担当でない多くの人員が手ぶらになってしまい、効果的ではないとしている。
ライブサービス型ゲームの開発は「ジャストインタイム生産方式」に似ている、とRobotHavGunz氏は語る。ジャストインタイム生産方式とは、自動車産業などで用いられる言葉だ。製造プロセスにおいて各工程に必要なものを、必要なときに、必要な量だけ供給する方式を示す。RobotHavGunz氏によれば、同生産方式においては、組み立てラインのある部門だけを休止したり、生産負荷の割り当てを変えたりすることが可能である。同氏は、同じことがライブサービス型のゲーム開発にもいえると説明。必要なときにリソース割り当てを入れ替えたり、特定のエリアでの作業をストップしたり、ほかの部門に注力したりと、臨機応変に開発体制が流動している。そのため、全部門を一斉にバグ修正に向かわせるのは現実的ではない、というのがRobotHavGunz氏の見解のようだ。
このほか、「ユーザーが『欲しい』と口にするものが、実際にユーザーが欲しがっているものだとは限らない」という見立ても、オペレーション・ヘルス実施の妥当さを曇らせているようだ。RobotHavGunz氏は今回のコメントがあくまで個人的な意見であるとしつつ、今後も“日常業務としてのオペレーション・ヘルス”を続けていくと言及。不具合の改善に向けて動いていく姿勢を示した。
オペレーション・ヘルスは『レインボーシックス シージ』における実施後も、有効性について意見が分かれてきた施策だ。またRobotHavGunz氏の意見を踏まえれば、チーム全体がバグ修正のみに注力するというのも現実的ではなさそうだ。コンテンツ追加を一時休止すればゲームの収益面にも影響が出る可能性が高く、実施において超えるべきハードルが多いのは確かだろう。
なおRespawn Entertainmentは9月21日に最新のパッチをリリースし、キャラクターがワープする現象やパケットロスおよびラグなどの問題に対応。ただし現在も通常より高い水準でのクラッシュが見られるとして、9月23日のパッチで再度改善を図るとしている。オペレーション・ヘルス実施の是非はともかく、まずは現状での安定化を一刻も早く望みたいところだ。