『ライフ イズ ストレンジ』シリーズ最新作、Steamにて中国語での不評レビューが大量に投じられる。「チベットの旗」を問題視
スクウェア・エニックスは9月10日、『Life is Strange: True Colors』をPCおよび海外PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに発売した。本作は、アドベンチャーゲーム『ライフ イズ ストレンジ』シリーズの最新作だ。開発は、『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』を手がけたDeck Nineが担当している。
本作は、メディアレビューにて高評価を獲得し、Steamのユーザーレビューでも「非常に好評」を得ている。ただ現在Steamでは、中国のユーザーから大量の不評レビューが投じられているようだ。
『Life is Strange: True Colors』は、コロラド州の架空の町ヘイヴン・スプリングスを舞台にするアドベンチャーゲームだ。主人公は、他人の感情を読み取り、さらに操作できる超能力をもっている、アジア系アメリカ人のアレックス・チェン。彼女はこの町の人々と交流しながら、自身の能力を駆使し、兄が謎の死を遂げた真相に迫ろうとする。
先述したように、本作はメディア・ユーザー双方から高い評価を得ており、Steamのユーザーレビューでは、本稿執筆時点で85%のユーザーが好評に投じている。逆に不評としたユーザーからは、クオリティは素晴らしいものの、ボリュームが少ない割に価格が高い(フルプライス)という指摘が比較的多くみられる。ただ、不評レビューの言語を中国語、特に中国本土で使用される簡体字中国語に絞ってみると、不満の理由が一変する。
Steamでの簡体字中国語レビュアーたちの不満の理由は、ゲーム内で確認できるとある旗に集中しているようだ。本作の舞台であるヘイヴン・スプリングスは、小さい町ながらメインストリートにはさまざまな店が建ち並んでおり、そのなかにはチベットの民芸品を扱う店もある。そしてその店の前には、雪山獅子旗と呼ばれるチベットの旗が掲げられている。
チベットは、現在チベット自治区として中国の一部となっているが、独立あるいは高度な自治を巡る中国との複雑な歴史が続いている。また近年は、中国の人権問題に絡んで取りざたされることも多く、雪山獅子旗は中国に対する抗議デモなどで使用されることがある。中国国内においては、雪山獅子旗の掲揚はチベット独立を支持するものとして、取締りの対象になっているという。
先の中国語レビュアーたちは、開発元Deck Nineがそうした思想をもっていて、あえて雪山獅子旗をゲーム内に配置したのではないかとして反発しているわけだ。レビューのなかには、チベット問題は本作の世界観とは関係がなく、私情を持ち込んだ表現であるという指摘や、開発元に旗の削除だけでなく謝罪まで求めるコメントもみられる。
なお、本作のプロデューサーRebeccah Bassell氏によると、アメリカ・コロラド州の山間の小さな町にはチベット系住民が営む店が多いとのこと。本作にチベットのお店が存在するのは、そうした現実の光景を反映させたためであるそうだ。ちなみに、アイスクリーム屋もそうした特徴のひとつだそうで、やはりヘイヴン・スプリングスにも存在する(5280 Magazine)。となると、チベット独立運動に関して開発元の思想をゲーム内に持ち込んだという批判は、同スタジオからすると心外かもしれない。
本稿執筆時点では、こうした中国語による不評レビューのアクティビティについて、Steam側からは特に注意喚起はおこなわれておらず、レビュースコアからの削除も実施されていない模様である。ただ、本作が香港にて正規に販売されていることから、Steamの掲示板では国安法違反として通報するよう呼びかける中国人ユーザーもいる。もし今後騒ぎが拡大すれば、本格的なレビュー爆撃へと発展する可能性もあるだろう。
なお、こうした不評レビューについて、販売元のスクウェア・エニックスや開発元のDeck Nineは、今のところ特に公式には反応を示しておらず、雪山獅子旗の削除もおこなっていない模様だ。ただ、Steamでは9月12日に、雪山獅子旗が掲げられた店が写るスクリーンショット(上の画像)が削除されている。少なくとも、Steamレビュー上で繰り広げられている騒動については認識している様子。今後さらなる対応をおこなうのか、それとも問題なしと判断するのか注目される。
『Life is Strange: True Colors』は、PC(Steam)および海外PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに販売中だ。コンソール版の日本での発売については未定。スクウェア・エニックスは9月11日に、「今後のアナウンスをお待ちください」とコメントしている。