任天堂による買収前、『メトロイドプライム』の開発元は9か月間デスマーチを強いられていた。元スタッフ明かす
Nintendo Switch向けに『メトロイドプライム4』を開発中のRetro Studios。アメリカ・テキサス州に拠点を置く同スタジオは、シリーズ1作目である『メトロイドプライム』を手がけたことがきっかけで任天堂の子会社となった。ただ、その開発は過酷であったことが一部では知られており、当時を知る元開発者が今あらためて振り返っている。海外メディアIGNなどが報じている。
Retro Studiosの元シニアゲームデザイナーMichael Wikan氏は9月7日、YouTubeチャンネルKIWI TALKZに出演し、同スタジオに所属していた当時のことなどを語った。同氏は、現在はゲーム業界から離れているが、『メトロイドプライム』シリーズ3作品や、Wii向けの『メトロイドプライム トリロジー』『ドンキーコング リターンズ』の開発の中心にいたひとりだ。
任天堂も関わるかたちで設立されたRetro Studiosでは、当初オリジナルのFPSを手がけており、任天堂がそれを気に入って『メトロイド』シリーズ作品とすることを提案。これがニンテンドーゲームキューブ向けの『メトロイドプライム』へと繋がることとなる。Wikan氏は、元々のアイデアから上手く転換しフィットさせられると考えた一方で、設立間もないスタジオが『メトロイド』シリーズの新作を手がけることへの、周囲からのプレッシャーも感じながらの開発だったと振り返っている。
Michael Wikan氏によると、『メトロイドプライム』の開発はかなり過酷だったそうだ。同氏自身、48時間ぶっとおしで働いて睡眠時間は1時間だけという日が2回あり、36時間働き続ける日も何度かあったという。そして開発終盤には、休みなしで毎日働く日々が9か月間も続いたそうだ。そして本作の完成後には、Retro Studiosのスタッフの士気は下がりきっており、スタジオを去ることを考えていた者もいたとのこと。Wikan氏もまた、複数のオファーを受けて転職を検討していたと語る。
任天堂は、そうした状況を目の当たりにしたあと、Retro Studiosを買収し子会社にしたという。そして米国任天堂からMichael Kelbaugh氏を送り込み、スタジオ再建に着手。スタッフに数週間の猶予を求め、結果的に経営陣への信頼を取り戻すことに成功したそうだ。ちなみに、Kelbaugh氏は現在もRetro Studiosの社長兼CEOを務めている。
Wikan氏は、スタジオの所有者と経営陣を刷新したことは正解だったとし、それ以降は健全な労働環境の構築に取り組むようになったと振り返る。『メトロイドプライム』以降も長時間勤務をおこなうことが稀にあり完全ではなかったが、9か月間ものデスマーチを繰り返すことはなかったとしている。
近年ゲーム業界では、長時間労働を長期間にわたって強いられるクランチが問題となることが多く、健全な労働環境を整えているスタジオが逆に注目を集めることもある(関連記事)。今回の話は2002年頃の出来事だが、任天堂の介入によってRetro Studiosの労働環境が改善に向かっていったということで、今も昔も経営陣の姿勢が重要であることがうかがえる。
なお『メトロイド』シリーズとしては、新作『メトロイド ドレッド』が10月8日に発売予定だ。一方、Retro Studiosが現在開発中の『メトロイドプライム4』については、2019年1月の発表以降特に続報はなく、発売時期も未定である。
【UPDATE 2021/9/9 18:30】
開発状況の記述について修正