『Apex Legends』シア弱体化について開発者が解説。長期的な能力改修が示唆され、スキャン系能力のバランスを取る難しさもこぼす

 

Respawn Entertainmentは8月23日、『Apex Legends』にて最新アップデートを配信。おもにシーズン「エマージェンス」で登場したレジェンド・シアの弱体化にまつわる調整がおこなわれた。今回のパッチについて、開発チームでアソシエイトライブバランスデザイナーを務めるJohn Larson氏が自身の見解を述べている。 

Larson氏はTwitterにて、「シアとウォールハックメタ」と題したスレッドを投稿した。まず今回の調整について、パッシブアビリティに関していえば、シアは最小限のコストで非常に多くの情報を得ることが可能だった。移動しつつ360度のクイックスキャンをおこない、何人のプレイヤーが付近にいるかを正確に知りながら敵の位置を容易に特定する、という例が頻繁に見られたという。 

そこで今回の修正では、敵が何人いるか正確に捉えにくくなるように調整したほか、心拍間の間隔を増加。パッシブで情報を得るためには、時間をかけなくてはならないようにした。視野角を狭め、戦術を構えたときの移動速度を落としたのも同じ理由である。とはいえ、パッシブアビリティについては、今後も改善が必要だとLarson氏は考えているようだ。現在は実質的に、ソロマッチにおけるラッティング(隠れながら上位ランクを目指すプレイ)が不可能だからだという。
  

 
シアの戦術アビリティについては、副次効果を数多くつけて設計したこと自体は、悪くはなかったと判断。問題は、戦術アビリティがUltやパッシブと容易にシナジーを得られることにあったと伝えた。また、ほかプレイヤーが回復・蘇生のために停止・スピードダウンしているときに戦術がよく用いられていることから、シアの戦術アビリティについては「ターゲットが回避できるようにする時間」を増やす改修が必要だと判断されたようだ。 

なおほかの修正点としてエフェクトが抑えられたことやダメージ効果が取り除かれた点も挙げられる。ただし攻撃方向を指し示す仕様は残っているため、戦術アビリティがヒットしたプレイヤーは自分がどの方向から見られているかを理解することができるだろうとしている。 

Larson氏は今回の調整について、回復阻害が据え置きとなったことや、8秒間のトラッキング時間が縮められなかったことに落胆したユーザーは多いだろうと語る。ただし同氏によれば、今回の調整はスタート地点に過ぎないという。データが何を示そうと、これらの仕様のうちいずれかは今後のフォローアップが必要になるだろうとしている。 
 

 
またシアの登場によって、地形を貫通して情報をリアルタイムで収集できる能力がシューターにおいて非常に強力であることが、改めて明確になったとLarson氏は述懐する。通常、多くのプレイヤーは『Apex Legends』のようなシューターをプレイするにあたって、長い時間を費やし、ゲーム感覚を磨き上げていく。敵の次の動きをマクロおよびミクロレベルで予測できるよう、あらゆる手がかりに集中するのだ。だがどれだけプレイヤーがセンスを磨き、敵行動の推測精度を上げても、スキャンによって得られる情報にはかなわない。純粋にセンスを磨いてきたプレイヤーは、そうした状況を良く思わないだろう。スキャン能力の存在は、初心者がセンスを磨く妨げにもなるだろうと、Larson氏は述べている。それほどまでに、シューターにおけるスキャン系の能力は強力なのだ。 

この問題は、付け焼刃で解決できるものではないとLarson氏は語る。たとえばバンガロールのスモークでスキャンを無効化できるようにする、といった対処法を取り入れると、かえってレジェンドのピック率に偏りを生むことになり、好ましくないと同氏は述べた。 

また、リアルタイムのシルエット開示は、足跡の追跡やヘルスバー開示とは異なる情報であることが、シアの登場によって明らかになった。今後探求すべき軸はいろいろとあるものの、シアが抱えた課題によって、情報開示系メタに対する選択肢やカウンタープレイを再検討するための議論が促進されたとLarson氏は締めくくっている。 
 

 
シアの強さは開発チームの想定を上回っていたものの、今後はライブサービス型のゲームである強みを生かして調整を続けていきたいというLarson氏。一回のホットフィックスだけでは情報開示系メタの問題点を解決することはできないものの、デザインチームで協働して、長期的な解決を目指していきたいとしている。 

Larson氏の解説から判断すると、シアの能力調整については今回で終わりではなく、今後長い目で見て段階的に続けられていくようだ。またブラッドハウンドなどを含めた、情報開示系レジェンド全般としてゲーム環境に及ぼす影響をどう調整していくか、今後も注目していきたいところである。