Epic Gamesは8月17日、『フォートナイト バトルロイヤル』向けに最新アップデートv17.40を配信し、新ゲームモード「インポスターズ」を実装した。インポスターズの内容は、『Among Us』を彷彿とさせるとゲーマーの間でささやかれていたが、当の『Among Us』の開発陣は、同ゲームモードについてはあまり快く思っていないようだ。
『フォートナイト バトルロイヤル』に導入された「インポスターズ」は、4〜10人で楽しめるマルチプレイモードだ。最大の10人でプレイした場合、8人は「エージェント」、残る2人は「偽者」としての役割がランダムで与えられる。エージェントは、マップ内に配置された任務をすべてこなすか、偽者を全員追放すれば勝利。一方の偽者は、エージェントたちを撃破することを目指す。
プレイヤーは、撃破されたエージェントの痕跡を見つけた際などに、全員に招集をかけて討論することができる。クイックチャットを利用して情報を提供したり、特定のプレイヤーに質問したりしながら、誰がエージェントのふりをした偽者なのかをあぶり出すのだ。そして、全員で投票をして、偽物だと思ったプレイヤーを追放できる。
今回比較に挙げられた『Among Us』はというと、2018年発売のオンラインマルチプレイゲーム。4〜15人でのプレイに対応し、プレイヤーは宇宙船の「クルー」となるが、この中には裏切り者の「インポスター」の役割を与えられたプレイヤーが紛れ込んでいる。クルーは指定の任務をすべてこなすことを目指し、インポスターはクルーの殺害を目指す。また、インポスターに倒されたクルーを発見した際などには、緊急会議を招集可能。全員で討論をおこなったのち、インポスターだと思ったプレイヤーを投票によって追放できる。
このように、「インポスターズ」と『Among Us』は非常によく似たゲーム内容であることが分かる。もちろん、細かく見ていくと独自のシステムが用意されるなど違いはさまざま存在するが、「インポスターズ」は『Among Us』を彷彿とさせる、というには十分な内容だろう。そして「インポスターズ」の実装後、『Among Us』の開発元InnerSlothのスタッフらが反応している。
InnerSlothのコミュニティディレクターVictoria Tran氏は、「(正式に)コラボできていれば、すごくクールだったのに」と笑い交じりに述べている。一方で、インディーとして悲しい気持ちであるともコメント。少なくともテーマや用語を変えるなどし、独自の魅力を引き出すことはできなかったのかとしている。
同スタジオの共同設立者Marcus Bromander氏も同じく、独自性を出すためにあと10%努力することはできなかったのか、と疑問を呈している。両氏は、『Among Us』のゲームメカニクスを独り占めする考えはなく、そのような行為は業界のためにもならないとしている。ただ「インポスターズ」が、自らの作品とあまりにそっくりであることに驚いた様子だ。
このほか、InnerSlothのリードプログラマーAdriel Wallick氏は、他人の成果物をかすめ取るネット上の悪習を描いたミーム画像とともに、「今日はすごく打ちのめされた気分」とコメント。そして、自分たちがいかにちっぽけな存在かを、今回のことが気づかせてくれたと述べている。
なおInnerSlothのスタッフらは、これらのコメントが『フォートナイト』の「インポスターズ」に対するものであるかどうか明確にはしていない。とはいえ、発言のタイミングや内容から意図は明らかだろう。また、Victoria Tran氏は海外メディアAxios Gamingに対し、「インポスターズ」に関してコラボできれば良かったが、皆と同じタイミングで同モードの存在を知ることになったと述べている。
ちなみに「インポスターズ」の配信前には、『フォートナイト』と『Among Us』がコラボするのではないかと噂になっていた。これに対してInnerSlothは、「コラボできれば超クールだが、事実ではない」とコメント。「インポスターズ」のゲーム内容があまりに似通っていたことによって、コラボであると誤解されたまま噂として広まったようだ。
人気ゲームを手本にして新たな作品を開発することは、ゲームの歴史のなかでは繰り返されてきたことだ。また『Among Us』も、パーティーゲーム「Mafia」を源流とする人狼ゲームをベースにした作品であり、完全なオリジナルというわけではない。それでも、独自の世界観とゲームメカニクスによって、洗練されたひとつの作品へとまとめ上げられた。
『Among Us』は、PC版の配信当初は同時接続プレイヤー数が一桁という時期も長かったが、その後大きな成功を掴んだ(関連記事)。各コンソール向けにも移植され、今では人気タイトルのひとつに数えられている。『フォートナイト』の「インポスターズ」は、こうした『Among Us』の人気に便乗したと、一部ゲーマーから受け止められているようだ。
『フォートナイト』を手がけるEpic Gamesが、『Among Us』を意識して「インポスターズ」を開発したのかどうかは不明だが、もし参考にしていたとしても、それ自体は責められることではないだろう。ただ、前出のTran氏がインディーとしての気持ちにも触れたのは、わずか数人のインディースタジオが手がけ、やっと成功を得ることができた作品を、大手メーカーが安易に真似する状況を残念に感じたのかもしれない。
*PS5/PS4版『Among Us』では、『ラチェット&クランク』とのコラボが実現。
ちなみに、『Among Us』のビジネス面を担当するCallum Uwunderwood氏によると、同作とのコラボの申し込みについては、いつでも歓迎しているという。ゲーム内に『Among Us』のキャラクターを登場させるなど同IPの活用が可能で、ストックビジネス型の契約も用意。すでに、いくつかのプロジェクトが進行中だそうだ。