『Apex Legends』では8月4日より新シーズン「エマージェンス」が開幕している。新モードであるランクアリーナや新たな武器ランページLMGといった追加要素に並び、注目を集めているのが18人目のレジェンド・シアの存在だ。リコン型のレジェンドで、ブラッドハウンドと同じく索敵能力に長けている。パッシブアビリティの「ハートシーカー」では、ADS時に敵の心拍音を捉えることが可能。戦術アビリティ「フォーカス・オブ・アテンション」では、マイクロドローンを呼び出し、敵への妨害とトラッキングをおこなう。そして、アルティメットの「ショーケース」では、球体状のエリア内で素早く動く、あるいは射撃中の敵を追跡可能だ。
なかでも議論を呼んでいるのは、戦術アビリティの多機能性である。フォーカス・オブ・アテンションには、トラッキング以外にもさまざまな効果が付随しているのだ。同アビリティが命中した場合、敵に10ダメージを与えるほか、相手のヘルスバーを開示。ヒットした敵は、わずかな時間アビリティが使用不可能になるほか、回復アイテムの使用や蘇生行為ができなくなる。シアの戦術アビリティは命中させるのがやや難しいものの、当たればそれだけ付加価値を得られる有用性の高いアビリティとなっているのだ。
実装前は同じ索敵能力型のブラッドハウンドと比較されがちだったシア。しかし新シーズンが始まってみると、その戦術アビリティの多機能性が話題に上がり、多くのほかのレジェンドとの“比較”が話題となっている。「シアがこれだけ多機能なのだから、〇〇のアビリティももっと便利にしてほしい」という文脈だ。
なかでも注目を集めている比較対象の一人が、同じリコン型レジェンドであるクリプトだ。比較対象となっている能力は、アルティメットアビリティのドローンEMP。敵の動きを妨害するという共通点があるものの、シールドダメージ50の付与、敵の設置物を破壊できるなど、EMPにしかできない芸当もあり、必ずしも単純に優劣をつけられる能力ではない。ただし人によっては、起動に時間がかかることや自分・味方にもスロー効果が付与されることなどの欠点が目立ち、不満を感じる一因となっているようだ。
こうした議論が活性化するなか、クリプトの能力に対してある提案が話題となっている。それは、クリプトのパッシブアビリティとして「シアやブラッドハウンドのスキャンを無効化する能力」を付与してはどうかというアイデアだ。というのもクリプトの現在のパッシブアビリティ「ニューロリンク」は索敵能力ながら、ドローンがいないと機能せず、実質戦術アビリティの一部といっていい。またスキャンの無効化は、クリプトのバックストーリーとしても、身を隠しながら暗躍してきた設定とマッチしており、新たなパッシブアビリティとしてぴったりではないか、とする提案だ。
このReddit投稿は2万4000件以上のUpvoteを獲得しており、ユーザーから高い評価と注目を集めている。しかし一方で、本件にコメントをつけた開発者からは懸念点も指摘された。開発者いわく、キャラクターの設定に合うとはいえ、カウンターするのが困難であり、存在しているだけで抑止力となってしまう。さらに、クリプト本人からのアクションを必要とせず、ほかのキャラクターによる対抗アビリティもないまま、クリプトのパッシブアビリティとしてほかのキャラクターの能力の信頼性を損なわせることは、独創性にかけ面白くないアイデアだと批判している。
ほかのユーザーからは、開発者の見解についてさまざまな疑問が寄せられている。まず、開発者が「本人からのアクションを必要としない」点を批判の対象としていることについては、ユーザーから「それがパッシブアビリティとして正しいあり方では?」との意見が寄せられた。これに対して開発者は、パッシブアビリティの設計思想を説明した。
パッシブアビリティとは多くの場合、キャラクターに対してほかのキャラクターができない能力を「与える」ものであり、ゲームにある要素を「加える」ことにより、豊かで面白いゲームプレイの機会を作り出すものだとしている。しかし、議題に挙がっているスキャン無効のパッシブアビリティは、別のキャラクターの能力を「取り除く」効果のものだ。ほかのキャラクターにとっての面白さを除いてしまうことにつながり、ゲームの楽しさを削いでしまうだろうと開発者は指摘している。まとめると、パッシブアビリティとは「足し算」の発想であるべきであり、投稿者の提案は「引き算」であるがゆえに望ましくない、ということなのだろう。
また、「スキャン能力に対抗できる範囲効果系のレジェンドがいてもいいのでは」とするユーザーの指摘に対しては、開発者もその考えは正しいと同意。スキャン対抗手段をもったレジェンドの是非や、戦闘における不確定要素(fog of war)を作ることがゲームプレイを曇らせるだけにならないかどうかは議論が必要だとしつつ、何らかのニッチな能力をもったキャラクターを作ることは、キャラクターの強いアイデンティティを生むことになり、よい方針であると伝えている。
シアは登場したばかりのレジェンドだけあって、まだ対策についても模索が続いている状態だ。初出時のインパクトが強かっただけに、対抗しうる能力を求めるユーザーの声も高まったのだろう。一方、パッシブアビリティの設計については、単純に有利な状況を作るだけではないさまざまな意図が込められていることも明らかになった。シアの研究が進むにつれ、戦略の議論も今後さらに深まっていきそうだ。